COLUMN 2017年11月19日

なぜ東大生は銀行へ? 過去のデータと志望学生の声から探る

 

 2013年に放送され、大ブームになったドラマ『半沢直樹』(TBS系)。物語の中では銀行内部でのドロドロの派閥争いが描かれ、中でも主人公・半沢直樹の足を引っ張ろうとする東大法学部出身という設定の銀行員・大和田暁の姿が印象的だった。

 ドラマが放送された13年、図らずしも学部卒の東大生が就職した人数が最も多い企業上位三つは全て銀行だった。その年に限らず、毎年一定数の東大生が銀行に就職をしているが、では学生はどのような思いを抱いて銀行を志望しているのだろう。就職ランキングの裏側、学生の本音に迫った。

(取材・福岡龍一郎)

 

背景に「新卒大量採用」

 

 毎年7月上旬、東京大学新聞は東大生の就職状況をまとめた「就職特集号」を発行し、紙面にはその前年度に卒業した学生がどの企業に何人就職したか、上位一覧をまとめた表が掲載される。過去10年分の「就職特集号」を引っ張り出し、東大生の就職状況を概観してみると、この10年間一貫して多くの学生が銀行に就職していた。

 

 

 各年度の東大生の就職状況を伝える当時の紙面の見出しをいくつか見てみると「三菱東京UFJ銀行が1位」(08年)、「大手銀行が上位に」(12年)、「銀行・商社根強く」(13年)、「三大銀行上位占める」(14年)、「三大銀行が上位独占」(17年)と常に銀行は東大生にとって主流の就職先だったことが分かる。数えてみるとこの10年間で、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループの3大メガバンクに就職した学部卒の東大生は累計600人を超えていた。

 

 背景の一つとしては「新卒大量採用」という銀行独特の採用方針が挙げられるだろう。『就職四季報2017年版』(東洋経済新報社)によると、三大メガバンクは「新卒採用数が多い企業ランキング」で上位3位を独占しており、3社合計でおよそ5000人を新卒で採用している。例年、銀行に就職する東大生が他業種と比較しても、群を抜いて多くなっているのは「そもそも銀行が多くの新卒学生を採用している」という企業側の事情が存在しているようだ。

 

「自分と同種類の人が集まりそう」

 

 では学生側の事情はどうだろう。なぜ例年、少なくない数の東大生が銀行を志望し、就職するのか。Aさん(文・3年)は銀行での業務を通じて金融制度に熟知できるようになる点が魅力だと話す。経済の複雑な動向を「自分の目で理解できる知識と経験を得たい」とAさん。また、既に多くの東大卒業生が実際に就職していることで銀行を志望する「ハードル」が低まっていると感じている。「同じ価値観を持った人が集まりそうで東大生にとってはきっとなじみやすい組織なんじゃないかな」

 

 Bさん(経・3年)も周囲の友人や先輩が、銀行を視野に入れて就職活動をしていることで「自分と同種類の人が集まりそう」と就活や社会人になる不安が軽減されるように感じている。加えてBさんには少し特殊な事情が。Bさんの家系は曽祖父、祖父、父親と3代にわたって銀行員で「経済学部に進学し銀行を志望することは自分にとって自然なことでした」。

 

必ずしも積極的な志望ではない?

 

 Cさん(法・3年)は「経済活動の血液」といわれるほど社会に不可欠な銀行の役割や、いろいろな業務内容に横断的に携われる銀行での仕事の性質に心引かれているという。また、収入や社会的評価が高水準で安定していることも魅力的だ。

 

 だが実は、Cさんにとって今のところ銀行は「滑り止め」。第1志望の業種は他にあるが、そこは採用人数が極めて少ないため「第1志望がだめだったら銀行に行くかもしれないな」と話す。

 

 Dさん(法・3年)が銀行を志望する理由はさらに消極的だ。そもそも大学受験時に文系に進学したのは「大学では遊びたかったから。将来の見通しなど皆無で、いつの間にか3年生になっていました(笑)」。就活を控えた現在も特にやりたい仕事はないというが、銀行に内定したサークルの先輩の話を聞く中で「銀行は学歴を重視するらしいから、こんな自分でも大丈夫かな」と銀行を「何となく」視野に入れている。Dさんの先輩には銀行しか受からずそこに就職を決めた東大生が複数おり「就職した全員が積極的に銀行を志望していたわけではないと思います」。

 

 実際にメガバンクから内定を獲得したEさん(法・4年)は金融という専門性を持てる、仕事の内容が幅広いなど銀行の仕事の魅力に言及しつつも、自身も含めて「将来に打算的な東大生が多いのではないか」と語る。「東大卒という肩書が重視される、組織内に大きな東大派閥が存在する、勉強や資格取得が得意という東大生の長所が生かされる」とEさんは就活を通して東大生と銀行の親和性の高さを肌で感じたという。ただEさんは最終的に内定を辞退しており「銀行内の東大派閥に属して傲慢なプライドを持った卒業生がいたのも、また事実。独特な雰囲気が自分には少し合わないかなと感じました」と話す。

 東大生が銀行を志望する動機は、人によってさまざまだった。ただ、長年にわたって毎年一定数の東大生が銀行に就職してきたこれまでの歴史の蓄積は、今日の東大生の進路選択にある程度の影響を与えているようだ。銀行にはたくさんの卒業生が在籍して、周囲を見渡せば、志望度の差こそ違うが、銀行を志望する同世代の学生がいる。東大生にとって銀行へ就職することは、東大からの地続きの場所に進むような、精神的なハードルが低い行為なのかもしれない。

 


この記事は2017年7月4日号に掲載された記事を再編集したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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