COLUMN 2016年7月9日

20歳以下の東大生の「生の声」――18歳選挙権をどう見るか

 2016年7月10日に投開票される今回の参議院選挙は、日本において初めて18歳からの選挙権が認められる。選挙権年齢の引き下げで、若者の政治意識が高まると期待する声を聞く。ただ、いざ投票を目の前にすると、投票先に迷ってしまう人々も多くなると思われる。

 

 東京大学新聞社では、新入生に向けたアンケートを実施しており、その中で新入生の社会問題に対する認識も尋ねている。今回はNHKが全国の18・19歳の若者を対象に実施した世論調査の結果と比較していく。さらに、今回初めて選挙権を獲得した現役東大生の「生の声」を取り上げる。初めて選挙権を獲得した新鮮な気持ちの学生の意見が、政治、そして今回の選挙への指標となるのではないかと考えられるからだ。

 

 NHKの世論調査は、2015年11月4日から2015年12月10日に実施され、2016年6月19日時点で18・19歳の国民が対象となった。東京大学新聞社の新入生アンケートは、2016年の3月29日・30日に実施し、2016年度東京大学新入生3146人のうち95%に当たる2995人から回答を得た。調査の結果は、4月19日付の東京大学新聞第2756号に掲載された。

 

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 参議院選挙への意欲を尋ねた質問では、「必ず行く」と答えた人はNHK世論調査よりも東大生の方が11ポイント上回った。「行かない」と決めている人も1ポイント東大生が上回った。「行くかどうかわからない」と答えた人が、東大生の方が14ポイント下回っていることを踏まえると、投票に行くか行かないかはっきりと決めている人が多い印象を受ける。

 

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 支持政党の有無を尋ねる質問では、より明確な違いが出た。支持政党があると答えた東大生は、NHK世論調査よりも30ポイントも上回った。

 

 以上、アンケートの比較をおこなったが、数字に表れない学生の意識の動きにも注目したい。ここからは学生への取材に基づいた東大生の「生の声」を紹介する。


勝田真凛さん(文Ⅲ・1年、19歳)

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 東大には政治意識が高い学生が多い印象を受けます。社会に関心があって東大を目指した人が多く、それがアンケートの比較結果にも表れているのではないかと思います。

 私は今回の参議院選挙で、もちろん投票に行くつもりです。今はイギリスのEU離脱問題と経済との関係に興味があります。各党が掲げる経済政策を比較して、投票先を決めたいですね。

 もちろん、18歳選挙権に懐疑的な友人もいます。いずれ18歳選挙権が当たり前だと認識されるようになり、元通りの状態に戻ってしまうことを心配しているようです。ただ、私自身は18歳選挙権を評価します。今回のようにまずは形、つまり制度の面から改革していくことが、より良い政治を作っていくための第一歩として大切だと思うのです。

 政治に関心がないからと言って、そのような人々を排除することはあってはならないのです。政治の質を高めていくために、政治に参加できる窓口を開けておくことが必要だと思います。それこそが民主主義ではないでしょうか。

 

 

能智敬之さん(文Ⅰ・2年、20歳)

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 今回の参議院選挙では、どこの政党に投票するかはまだ決めかねています。しっかりと調べて、当日まで考え抜いた末に投票先を決めたい。それは、初めての投票が今後の選挙への姿勢に大きく影響すると信じているからです。

 よく言われる、選挙権年齢引き下げによって若者の声が政治に反映される、ということはあまりないと思います。政治家にとってのイメージアップ、もしくは若者の支持を得ているという口述作りのためのキャンペーンだった側面も否めないのではないでしょうか。政治に利用されているという感覚があります。

 選挙権を得たことで、今までは通り過ぎていた街頭演説にも耳を傾けるようになりました。選挙権を得たことで、このような小さな変化が多い気がします。

 僕は実のところ、民主主義は必ずしも万能ではないと考えています。全国民が政治について興味を持ち、政治を考えるようになって初めて民主主義は機能します。そうでなければ、極端な言い方をすれば衆愚政治、あるいは政治ごっこにも陥りかねません。その点から考えると、現状では、政治家や官僚の質を高めていくことがまずは必要だと思います。

 

 

大谷涼央さん(文Ⅰ・1年、18歳)

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 参議院選挙の投票には行きたいと考えています。ただ投票に行くだけではなく、どの政党がどのような公約を掲げているのかをちゃんと調べてから投票に行きたいですね。

 選挙権を得て、政治について知らなければならないという義務感が生まれました。否が応でも政治を身近なものとして考えるようになる、というのは選挙権を得ることの良い側面だと思います。

 選挙権年齢の引き下げによって、若者が政治を考えることができるようになることは、良いことです。しかし、単に選挙権年齢を下げるだけだったので、もっと政治を学べる環境を整えるなどの配慮が足りない政策だったと思います。

 現在の政治は、不祥事に対するバッシング合戦になってしまっているという疑問があります。政治は本来、前へ前へと進めていくべきもの。バッシングをするだけでなく、代替案を出していくといったクリエイティブな政治を期待しています。学生である私たちも、クリエイティブな政治を作っていくために、自ら政策を考える立場に立ってみることが必要なのです。

 

 

岸凛大郎さん(文Ⅱ・1年、19歳)

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 東大生とは言っても、普段から政治について話し合うということはあまりないですね。それでも、頭の中で考えていることはあると思います。

 今回の選挙で僕は選挙に行きます。子供の貧困が選挙における一つの争点だと考えているのですが、どの政党も似たような公約を掲げています。政策ごとの違いが見えてこないので、投票先を決めるのはとても難しいなと感じています。

 僕は選挙権年齢引き下げに積極的には賛成しかねています。社会に出ていない人が多い18歳の若者は、まだまだ周りに影響されやすいのではないかと思うのです。僕自身の経験もあるのですが、特定の偏った考えに向かって行ってしまうことも多いのではないでしょうか。

 選挙権を得て、今までは読み流していた政治についての記事を熟読するようになりました。このような些細なことも、一つの変化ではないかと思います。

 理想を目指しながら試行錯誤を繰り返していくことが政治のあるべき姿だと考えています。しかし、最近の政治にはあまり理想を追求していこうとする姿勢が見られない。僕なら、明確な理想を掲げ、その厳しさを認識しつつ、その理想に向かい本気で格闘していくような政治家を支持したいですね。


 以上、初めて選挙権を得た学生の声を紹介した。政治に対する考え方は人それぞれだが、政治を自分のこととして考えるという姿勢は一致しているようだ。4人に見られた特徴的な見解も興味深い。

 

 繰り返すが、2016年の参議院選挙の投開票は7月10日に行われる。18歳選挙権の効果が明確に現れる選挙になるのか、はたまた問題点が浮かび上がる選挙になるのか。記者自身も投票に行った上で、選挙の動向に注目していきたい。

 

(取材・石井達也)

 

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