LATEST NEWS 2018年11月29日

自らの視点で社会に変化を 第3回英字新聞甲子園開催

 11月3日、國學院大學久我山中学高等学校で、高校生が自作の英字新聞の出来を競う「第3回英字新聞甲子園」が、一般社団法人グローバル教育情報センター(GEIC)の主催で開かれた。六つの学校から計8チームが参加し、優勝はお茶の水女子大学附属高等学校の蘭組だった。今年から弊社も後援する本イベントの抄録をお届けする。

(取材・小田泰成 撮影・高橋祐貴)

 

 

 新聞ならではの客観的な文章を書くことに慣れ、メディアへの批判力を持つ契機とすることを狙いとする本イベント。各チームは事前に制作した新聞を基に、新聞製作で苦労した点・学んだ点を発表した。

 

 開会あいさつで、堀川真理子記者(The Japan News)は「なぜ英語で伝えたいのか、読者は誰なのか、どう伝えるのか。こういった問いを乗り越えるのが英字新聞甲子園です」と激励した。藤田真文教授(法政大学)はフェイクニュースをテーマに基調講演を実施。報道における誇張やねつ造の歴史や、自分の見たい情報しか見ない人間の性質などに触れ「皆さんは事実に基づいた取材をしてください」と強調した。

 

 続いて各チームの発表へ。二松學舎大学附属柏中学校・高等学校は「訪日外国人の、日本に対する反応が気になった」という意識の下、憲法9条や労働問題、アニメなどの文化に関する記事を書いた。実際に街中で訪日外国人にアンケートを依頼するのは、協力してもらえるかどうか不安だったが「意外とフレンドリーでした」。出身国・地域によって、意見が違うことを学んだという。他には苦労した点として、全26人のチーム内での意見のとりまとめや、weやourを使わない新聞ならではの客観的な表現などを挙げた。

 

それぞれの高校が自分たちの作った英字新聞についてスピーチする

 

 自らの高校の生徒や教職員だけでなく、カナダやニュージーランドなど研修先の生徒たちも読者として想定したのが、日本大学高等学校。昨年は学校のことを紹介する新聞を作成していたが、今年は「ホームステイ先の家族と親しくなるにはどんな話題が良いのか?」と考え、学校が位置する地域全体について知ってもらおうとしたという。全チームの発表が終わった後、板津木綿子准教授(総合文化研究科)は全体講評で「英語力は年々上がってきているし、問題意識も明確になってきています」と評価。「来年の参加者には高校生ならではの視点をより意識してほしい」と今後の展望も述べた。

 

講評を述べる板津准教授

 

 いよいよ受賞校の発表へ。地域振興賞と外国メディア賞は、國學院大學久我山中学・高等学校に贈られた。地域振興賞を選考した藤田教授が特に評価したのが、同校の生徒が最も多く乗り換える駅だという渋谷駅についての記事。「渋谷にこれから自分たちがどう関わっているのか、高校生の目線や、若い市民としての意識が反映されています」と、独自の視点を評価した。外国メディア賞を選考したデイヴィッド・マクニール記者(The Economist)は校則について生徒にアンケートを取った同校の記事の創造性を評価。「大人になると、社会のルールに挑戦しなければいけないときもあるから、今からこのような取り組みをするのは有意義」とした。

 

 一方で校則の記事について、堀川記者は「まず先生に、本当にそのルールが必要なのか聞いてみた上で、生徒や保護者にアンケートを取って妥当性を検討する。校則がない学校や、海外にも目を向ける。そこまでやれば結論が見えてくるはずです。『この辺に答えがありそう』というところまで示すのが新聞の役割です」と、社会を変える役割を果たすことの重要性を語った。

 

 そして優勝校の発表へ。英語力や取材量、根拠の蓋然性などを総合的に考慮し、審査委員長の吉田研作特別招聘教授(上智大学・GEIC代表理事)と板津准教授と堀川記者の3人が協議。結果、準優勝はお茶の水女子大学附属高等学校の梅組、優勝は同校の蘭組となった。ファミリーレストランから見る食糧問題など、両紙とも社会問題に多く焦点を当てた、読み応えのある記事が揃っていた。吉田特別招聘教授は、今までの学習指導要領は一方通行の知識技能伝達だったが、今後は知識技能を思考力・判断力・表現力に生かすことになると指摘。「英字新聞を作るという体験は、まさに昨今よくいわれている『アクティブラーニング』です。この経験を、積極的に自信を持って世界の人と渡り合う一助にしてください」と生徒たちの健闘をたたえた。

 

優勝したお茶の水女子大学附属高等学校蘭組

 

 生重幸恵理事(GEIC)は閉会の辞で「見通しを立てて計画を立てる」「協同して作業に臨む」「エッセーとは違う書き方を身に着ける」「マクロな視点からデータを集める」といった、英字新聞で要求された作業を「21世紀に必要なスキル」と表現。「来年度もお目にかかりましょう」と大会を晴れやかに締めくくった。

 

◇地域振興賞と外国メディア賞を受賞した國學院大學久我山中学・高等学校の生徒

 私はリーダーだったので、みんなを引っ張る上ではまず自分が落ち着かないと駄目なんだな、ということも学びました。

 

◇準優勝となった、お茶の水女子大学附属高等学校梅組の生徒

 記事作成の上では導入と最後に特に力を入れました。自分たちで取材して、裏付けを取って、報道するという一連の流れは、今後に生かせると思います。

 

◇優勝となった、お茶の水女子大学附属高等学校蘭組の生徒

 チーム内でいろいろなテーマが出たので、それをまとめ上げるために、紙面全体では「現代社会」というコンセプトを当てはめました。締め切りはみんなで決めて、早めに出してもらって批評し合うことで、より良い記事になるようにしました。見出しは帰国子女の子がすごくこだわってくれて。適材適所で仕事を割り振れたのが良かったです。チームに貢献してくれた皆の努力が報われたという意味でも、優勝できてうれしいです。

 

2018年11月30日【記事訂正】第3段落において、基調講演を藤田晃之教授(筑波大学)が行ったと記載していましたが、基調講演を行ったのは藤田真文教授(法政大学)でした。お詫びして訂正いたします。

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