INTERVIEW / FEATURE 2015年11月14日

母国の貧困なくすファッションビジネス マレーシア人留学生ヒダヤ・モハマドさん

「ムスリムのヒジャブをかぶって歩くと日本では注目されて、はじめの頃は嫌だった。でも、自分の個性を表現できるおしゃれなスカーフを選んだら、皆に『素敵だね』『似合ってるね』と言われるようになって、自分らしく生きていいんだと感じられた」   マレーシアからの留学生、ヒダヤ・モハマドさんは、東大大学院の総合文化研究科で、途上国でのソーシャルビジネスについて修士論文を書いている。研究のかたわら、マレーシアの伝統工芸を活かしたアパレルのオンラインショップ「Hidaya HuB(ヒダヤ ハブ)」を今秋立ち上げ、貧困をなくすためのビジネスを実践し始めた。ファッショナブルに活躍する彼女に、日本での挑戦について聞いた。  

色鮮やかなヒジャブを着けて通学するヒダヤさん。「最近は学部生の頃より落ち着いた服装が好きになってきました」
色鮮やかなヒジャブを着けたヒダヤさん。「最近は落ち着いた服装が好き」

 

マレーシアの伝統工芸を世界へ

  「貧しい人々を市場に巻き込むBOP(Base of the Pyramid)ビジネスに関心を持っていて、母国マレーシアをリサーチの対象にした。途上国支援は、最終的に現地の人が自立することが重要だと思う。研究するうちに、指導教官の勧めもあって、貧困層の経済的自立を助けるビジネスを始めたの」。   オンラインショップ「Hidaya HuB」で扱っているのは、布にロウで模様を描く“バティック”という伝統的な染め物で作られた服やスカーフ。マレーシアにいる友人が、バティックを使ったブランド「RUZZ GAHARA(ルッズ・ガハラ)」を立ち上げたことを応援し、ヒダヤさんは日本でのマーケティングを担うようになった。先進国の顧客を増やして、貧しい農村部で暮らすバティック職人たちの収入を向上させる社会的企業だ。  

バティックのスカーフは、服に合わせて自由な巻き方ができる。1枚で印象的なコーディネートに。(スタイリング・撮影:ヒダヤ・モハマド 撮影協力:HSPのみなさん)
自由な巻き方ができるバティックのスカーフ。1枚で印象的なコーディネートに。(スタイリング:ヒダヤ・モハマド 撮影協力:総合文化研究科「人間の安全保障」プログラムのみなさん)

 

「バティックの柄布は、女性のかぶるヒジャブやサロン(腹巻き)からベビーハンモックまで、マレーシアでは日常的に使うもの。染料の配合から一つ一つ手作りなので、私が仲介者としてお客さんの好みを現地の職人に伝えている。着物と相性もいいから日本の女性に喜んでもらえるはず」。 エスニックかつ斬新なデザインのスカーフは、ロンドンやパリ、ニューヨークなどでも人気を集め、職人には適正な賃金を払うことができているという。

 

マレーシア北部クランタン州にあるバティックの工場。職人が1枚ずつ手で模様を描き、グラデーションに染める。
マレーシア北部クランタン州にあるバティックの工場。職人が1枚ずつ手で模様を描いて染める。

 

おしゃれで自信が持てるように

  ヒダヤさん自身、バティックのビジネスに関わる前から、周りに欲しがられるような華やかなスカーフを身につけ、ファッションブログも書いていた。だが、高校生の頃は大きなヒジャブの制服を着ていて、自由に服を選ぶことはなかったという。   「私は5人兄妹の末っ子。高校でいじめを受けて悩んでいた時に、兄たちが『好きな服を着てみたら?』と服や化粧品を買ってくれた。それまで他人の視線や言葉を気にしてばかりだったけれど、似合う服を自分で選んで着替えると、内側から自信が湧くのを感じた」。 それ以来、ヒジャブなどのスタイルは守りつつ、ファッションでの自己表現を楽しむようになった。マレーシア政府の奨学金を受けて留学した日本では、自分のアイデンティティを意識することも増える。   「日本人が巻き込まれたテロ事件の時には、ヒジャブを着けていると危ないんじゃないかと父親に心配された。でも私にとってムスリムであることはとても自然だし、ヒジャブも自分の一部だから、他人に外せと言われても絶対外さない。どうせ人々に見られるならおしゃれにしようと思って、綺麗なスカーフを選んで、笑顔でいるようにした」。  

  ムスリムであることを個性として活かし、日本のハラル食品ビジネスのコンサルティングなど、様々な挑戦をしてきたヒダヤさん。母国を離れてもアクティブに社会と関わった経験が、今のソーシャルビジネスに活きている。「オンラインショップでは今後、RUZZ GAHARAのような社会的企業とお客さんの架け橋になり、バティック以外の伝統工芸品も販売したい。日本からさらに活躍の場を広げたいな」と、大きな瞳を輝かせた。

(文責:日高夏希 撮影:須田英太郎、ヒダヤ・モハマド)  


〈ヒダヤ・モハマド〉 マレーシア南部ジョホール州出身。高校卒業後に日本へ留学し、筑波大学国際文化学類を卒業。東京大学総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム(HSP)修士課程2年。オンラインショップとブログは「HidayaHub(http://www.hidayahub.com/)」。

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