INTERVIEW / FEATURE 2017年2月10日

学習のデジタルポートフォリオ化から考える、入試と就活の未来

 「ポートフォリオ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。直訳は「折りカバン」や「書類入れ」という意味があり、アーティストやクリエイターが買い手に自己紹介資料として見せる作品(=資料の束)を指す。転じて金融の分野でも、投資家が保有している資産内容の一覧を指す用語として定着している。

 

 そしてこの「ポートフォリオ」は、最近では教育の分野でも使われるようになっている。学習者が自らの学びを記録して保存する個人評価ツールのことを指す。ポイントは「結果(=点数)だけでなく、それに至る経緯(=プロセス)を共有する」ことである。

 

 この、教育におけるポートフォリオ化は、2020年教育改革後の日本の入試形態の未来を示している。すなわち、従来型の「知識のアウトプット」評価から「主体的な学びの履歴」評価への変革である。

 

 この点に着眼し、「Feelnote」という国際特許を取得した学習のデジタルポートフォリオサービスをリリースしたサマデイ社に話を聞いた。

 

(取材:沢津橋紀洋)

 

――Feelnoteについて簡単に教えてください

石川成樹取締役(以下、石川)

 推薦入試を受ける高校生をユーザーとして想定して作りました。高校生が、自分自身を作品として見立てる視点を持って日々の生活を送り、それが大学からも評価可能になるような材料を提供したかったのです。具体的には、国際交流や政府プロジェクトなどの課外活動や留学、コンクールなどでの活動を画像・動画付きで、リアルタイムで記録を取っていきます。

 

――どの点が革新的だと考えていますか?

石川

 従来の推薦入試だと、出願時に過去の自分の活動を振り返り、願書・エッセイで文章化したり、画像やテキストなどの資料を郵送したりします。しかしこのやり方だと、活動に参加した時に感じた新鮮な気持ちを思い出すのが大変だったり、大学ごとに異なる書式で資料を揃えなければいけなかったりなど、大変な面が多々あるということを、我々が昔経営していた学習塾(早稲田塾)で生徒を見ていて感じてきました。ひどい子だと、高校1年生の夏休みに行った海外留学のことを思い出せない子がいたんですよ(笑)。これは問題だと思って。これらの取り組みをFeelnoteで行うことで、例えば留学初日に感じた生々しい気持ちをリアルタイムで記録できたり、大学ごとに資料を揃える必要がなく一括して出願できるなどのメリットがあります。
 高校生がいざ「よし、推薦入試に出願しよう!」と決意しても、自己アピールする素材がないことが多い。Feelnoteがあることによって、自分の活動履歴を溜めておくことが出来ます。

 

活動名と感想や学びと、画像や動画などのデータを溜めていくことができる。大学に提出する際にはどの活動を提出するかなどをアレンジすることができる。米国大学ではポートフォリオ作りをする文化がすでにあるという。
活動名と感想や学びと、画像や動画などのデータを溜めていくことができる。大学に提出する際にはどの活動を提出するかなどをアレンジすることができる。米国大学ではポートフォリオ作りをする文化がすでにあるという。

 

――従来型の入試に対する問題意識があれば聞かせてください

相川秀希代表(以下、相川)
 現状の知識アウトプット型の入試形態ですと、学業に忙しく、自分に向いていることは何なのか、何をやって生計を立てていくのかを深めていく時間がありません。しかし、推薦入試で求めているのは、自分が何をやりたいのかがわかっている生徒です。それを求める入試にもっと変わっていくべきです。何より、就職活動では丸ごと自分が売り物になるのは当たり前ですしね。高校生のうちから、そのように考えていく方がいいのではないでしょうか。
 何より、現状の入試制度にはミスマッチがあると考えています。極端な例で言えば、学力が高いから医学部に行ける、じゃあ行こうかなと医学部に進学して、血を見て卒倒する。こういうケースがまだ日本ではあります。その能力を活かせる場が絶対に他にあるのに。このミスマッチを解決しないと、日本の国力は上がっていかないでしょう。Feelnoteではおのずと自らの個性が現れるので、大学側が求める像とのマッチングがもっとうまくいくようになると考えています。

 

――このサービスはどの程度広まっていますか

石川
 FeelnoteはUniversal College Applicationという、ハーバード大も加入している全米の大学入試選抜システムでも採択されています。このコンソーシアムに参加する大学では、Feelnoteによる出願を認めるということです。実は米国でもFeelnoteのような学習デジタルポートフォリオはまだ無いのです。このようにFeelnoteは全世界的にも注目される、最先端の取り組みだと言えるでしょう。日本での普及はまだこれからですが、すでに複数の大学から問い合わせがあり、入試への試験導入が順次決まっています。ポートフォリオ出願を受け付けている慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の出願にもそのまま使えます。

 

――他のSNSやサービスと違う点は何でしょうか
石川
 無目的な社交の場であるFacebookに対し、Feelnoteには「学習のポートフォリオを貯める」というはっきりとした目的があります。また、現状では、学校や私塾ごとに契約してユーザーに提供しています。つまり、学校の教師や塾の講師がアドバイスやメンタリングをしながらの使用となります。このような運営にしているのは身元保証のためで、何を書いてもOKなFacebookとは一線を画し、大学側からの透明性や信頼性を高めています。
 また、転職のためのサービスであるWantedlyも一定の成功を収めていますが、登録の時点で自分に関するレジュメを作るので、日常的にライフログを残すわけではありません。
 驚くべきことに、小学校からの問い合わせもあるのがFeelnoteです。その小学校は、大学までの一貫校でした。小学校から大学卒業まで、何を学んできたのかのポートフォリオを作っていくという流れが今後は出来ていくでしょう。現実の入試での様子で言えば、慶應義塾大学SFCの推薦入試にて、かつては評価対象は「高校生活での活動」に限定されていましたが、2年前にその限定が外されました。極端な話、生まれてからこれまでの学び全てが提出可能になりました。このように、受験がますますホーリスティック(全体的)になっていくので、学びの自己証明のプラットフォームの確保は重要です。これまでのような、有名私立小学校に行くことが自己証明になる時代は終わり、地方でもどこでも、本当に豊かな経験をしてきたかどうかが問われていくようになるでしょう。

 

――こういったポートフォリオの取り組みは、就活のあり方も変えるということでしょうか

相川
 間違いないでしょう。Feelnote は⽂科省が旗振りをして、高校生、⼤学⽣の留学を促進するプロジェクトであるトビタテ!留学JAPAN に採⽤されています。現状、トビタテ!留学JAPAN は民間企業の支援によって成り立っています。国の代表として選ばれ、かつ主体的に留学を経験する人材への企業の期待と信頼は⾼いのです。Feelnoteはこの学びをより可視化することを可能にします。
 就活こそ、大学生活で何をしてきて、何を学んだのか、という「学びのポートフォリオ」が問われています。Feelnoteが普及することによって、就活で問われるその問いに学生がもっと自覚的になると思います。さらに、現状では各社ごとに要求されるフォーマットに合わせて大量に書く必要のあるエントリーシートが、Feelnoteに一元化されることで、学生の就職活動にかけるコストを減らすことができます。それにより学生は、日々の活動を充実させること、すなわちセルフブランディングに集中することができるようになるでしょう。Feelnoteに何をアップするのか考え続けることで、自分がどういう学びや活動を選択的にして行くのかに主体的になることが期待されます。

 

――他にもFeelnoteの可能性があれば教えてください。

相川
 高校生に使ってもらってみると、こちらも驚くほど活発に使ってくれます。エネルギーのある部活が活動の履歴を載せていくのを見て、我々も学ばせてもらっています。このポートフォリオ作りは大学生にとっても必須になってくると思いますが、大学を変えようと上から組織改革をするよりも、若い世代が学び方を変えていくことで大学もおのずと変化していくのではないでしょうか。大学生なりの使い方を、皆さんでも開発していっていただけたらと思います。

 

【サマデイ社の皆様】

左から、小管将太さん、チェン・ジェーンさん、相川秀希CEO(日本アクティブラーニング協会理事長)、石川成樹取締役
左から、小管将太さん、チェン・ジェーンさん、相川秀希CEO(日本アクティブラーニング協会理事長)、石川成樹取締役

 サマデイ社の皆様、ありがとうございました!

 

「Feelnoteによるポートフォリオ作りに挑戦する学生募集 未来の学び応援プロジェクト」

 就活や留学に向けて役立つFeelnoteを使って、あなたの大学での活動の記録を取ってみませんか?この度サマデイ社より、東京大学学部1、2年生の有志限定でFeelnoteのサービス利用が提供されることになりました。この世界最先端の取り組みに加わってみませんか?興味・関心ある方は以下のフォームに記入の上、折り返されるメールをお待ちください。
https://goo.gl/forms/oCSjvYlwUB96bryy1

 

【Feelnote紹介動画】

 

2017年2月10日 15:00 【記事修正】 サマデイ社の要望に基づき一部文言を修正しました。

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