INTERVIEW / FEATURE 2014年6月25日

「ストーリー」を作らないで 【人事に聞きたい!】 NHK 採用担当 橋爪さん・宮本さん

連載企画「人事部インタビュー」。今回は日本放送協会、通称NHKの人事局のお二人にお話を伺いました。記者の採用担当の橋爪さん、ディレクター・デザイナーの採用担当の宮本さんが選考や仕事のやりがいなどについてお答え下さいました。

 

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――まず、NHKという公共放送で働くことの意味をどう捉えていらっしゃるのかお聞かせ下さい。
橋爪:やはり、公共に資することへの意識は大きいと思います。普段から、少しでも世の中が良くなるといいなと思って仕事をしています。もちろん記者は、社会を変えることを目的に原稿を書いてはいませんが、ベースには、ニュースを届けることで社会が良くなるといいな、という気持ちがあります。特にNHKは、緊急報道に対して重要な役割を持っています。災害時は、全員が本気で国民の生命・財産を守ろう、被害を減らそうという気持ちで、報道しています。

宮本:NHKの採用のキャッチフレーズは今「世のため人のため」ですが、ディレクターもそうした意識で仕事をしていることは記者と同じです。ドラマやバラエティを制作するディレクターもやはり、世の中や人を見つめ、その奥深さや面白さを伝えたいんですね。結果として、見ている人が「世の中って素晴らしい」と感じたり、「あまちゃん」を見て今日も頑張ろうと思ったり、そういった部分で役に立ちたいという意識を強く持っていると思います。

【採用について】
――16年卒の就職活動の時期が後ろにずれ込むことで、就職活動が長期化すると言われていますが、NHKとしてはどうお考えですか。
橋爪:後ろ倒しになったからといってやるべきことは変わらないと思います。インターンシップに行かなければいけないと焦る学生もいるのかも知れませんが、それが絶対条件というわけではありません。大事なのは学生時代に、自分で自信を持てるものを作り、自分の中身を深める方が後に活きるのではないでしょうか。インターンシップについて言えば、今年度からは夏だけでなく冬にも実施する企業が増えるのかもしれません。増えたチャンスを活用して仕事についての理解を深めるのはもちろん良いことだと思います。

――就職活動は早い時期から始めたほうが良いのでしょうか?
宮本:NHKに関しては、マスコミやNHKのことをよく知っているから採用する、というわけではなく、人間力を見ています。もちろん、NHKを「国営放送」などと言われると、公共放送と国営放送の違いくらいは知っていて欲しいと思いますが、一方で、NHKに関しての事情通だったり、大ファンだったりする必要は全くない、ということです。それよりも社会に関心があるのかどうか、という点がより重要です。
橋爪:インターンシップに関して言うと、仕事内容を知ることのできる良い機会ですから、是非活用してほしいですね。ただし、インターンに行ったから採用において有利になるということは全くありません。インターンと採用は切り離して考えるべきです。

――採用面でのNHKの特徴は何ですか?
宮本:業務別選考は一つの大きな特徴ですね。記者は記者、ディレクターはディレクターとして選考を実施し採用しています。入局後も、一つの業務を突き詰めて、スキルアップを図ることができます。
橋爪:ですから、どの業務に就きたいか明確である必要はあると思います。能力以前に、目指している業務に対して強い思いを持っているのか。その思いが単に憧れなのか、仕事の中身まで知っているのかという違いも大切なところですね。NHKの採用は、ディレクター・記者という職人になってもらう人を採用していると言えると思います。

――NHKはエントリーシートが長いことで有名ですが、エントリーシートに関して気を付けてほしいことなどはありますか?
宮本:個人的な話を書いてほしいですね。「NHKは公共放送で視聴率を気にしないので人のための番組が作れます」、みたいな事は誰でも言えますよね。それよりは、自分はこういう番組を見てどう感じた…、という、手触り感のあるエピソードが聞きたいのです。あとは、自分を伝える際に「ストーリー」を作り上げる必要はありません。マニュアル的なストーリーを作りたがる人は多いですが、もっと、ごつごつしたエピソードの断片の連続でかまいません。きれいなストーリーを作るよりは、自分の気持ちを一生懸命書いてくれると良いなと感じますね。
橋爪:エントリーシートに関しては、究極的にはそれを読んで会ってみたいと思うかが重要ですよね。そこにあまり作戦めいたことや嘘っぽいことが散りばめられていると分かってしまいます。How toではない、本当に正直に一生懸命書くことが大事だと思います。とはいえ、会ってみたいと思ってもらうにはよく考える必要もありますから、エントリーシートは推敲されることをオススメします。文章は書き直せば直すほど良くなります。人に読んでもらうのも良いと思います。

――外国人の方の採用も行っていますか?
もちろん行っています。NHKの採用は国籍不問です。今年の新卒入局の方でもいらっしゃいますよ。外国人だから入局できない、ということは全くありません。ただ、記者の場合はテレビに映ってリポートの形で話すことがあるので、きちんと人前で話せるレベルの日本語スキルは必要です。

【ディレクター職について】

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――ディレクターに求められる資質はどのようなものだと考えていらっしゃいますか?また、記者とディレクターで迷っている学生も多いと思いますが、違う資質が求められるのでしょうか?
一つに決めるのは難しいですね。まず記者との違いについてお答えすると、本質的にはほとんど変わらないのではないでしょうか。世の中への関心・人への関心は、ベースとして共通です。ドラマ・バラエティ制作においてもやはり、今の世の中・人々がどうなっているかに興味を持ってよく見察するのは物凄く大事なことです。もし、違いがあるとすれば、スピード感かもしれません。記者にとっての発表の場はニュースですから、「今」何が起きているかをすぐに調べて外に出すということにやりがいがある。それに対して、スピードが早いことも重視しつつ、もう一日か二日、あるいは一か月とか一年かけて、その物事を詳しく調べ、物事の違った側面や背景を示すという仕事に興味がある人は、ディレクターに向いているのではないかと思います。もちろん、だらだら遅くやるという意味ではありませんが、ある程度の時間を使って深めていくことに興味がある、ということは資質と言えると思います。

――近年、テレビを若者が見ない時代だと言われている中で、時代に合わせて番組作りにおいて心掛けている事はありますか?
オンデマンドの利用や海外発信など、出しどころの部分で時代の波に乗り遅れてはいけないと思いますが、それ以前に、中身のコンテンツがきちんと魅力的であることの重要性は今までと変わらないと考えています。テレビ業界に逆風が吹いているという指摘もありますが、それでもやはりきちんとしたコンテンツを作っていけば多くの方に見て頂けると信じて番組制作をしています。もちろん若い人がNHKを見なくなっている事は重々承知しているので、「いい番組を作ればいい」という理論がまかり通った昔と比べれば、若い人に親近感を持って見てもらおうという意識が強くなりました。これを受けて、よりターゲットを絞った「Rの法則」とかバラエティ的な新しい番組も作る取り組みをしています。

――NHKでは入局後数年間は地方勤務とお聞きしましたが、どのような仕事をするのでしょうか?
NHKのディレクターは、入局時からディレクターとして仕事をします。そうは言っても、初めから全国放送の番組を一人で手がけるのは難しいので、まずは東京よりは規模の小さい地方局でキャリアをスタートさせるのが一般的です。バラエティ・ドラマ・報道など班で細かく別れている東京と異なり、地方では様々な分野の番組を担当します。仕事のイメージとしては、自分自身の企画の提案をしながら、年の近い先輩のサブにもついて仕事を覚えていくという二本柱です。それらを通じて、ディレクターとしての基礎力をつけてもらいます。

――ディレクターを志望するに当たって、番組をどのような視点で見るべきでしょうか?
必ずこう見てほしい、ということはありません。あえていえば、「頭」でも見つつ、「心」でも見てほしいということでしょうか。「どんなことを感じるのか」気持ちの動きも大事にしてほしいと思います。また、社会的な番組ばかり見ている必要もなくて、ESには、「こんなドラマが良かった」とか、他の放送局の番組について書いてくれても良いぐらいです。他局で放送されていたドラマに感動して、そんなドラマをNHKで作りたいです、という内容でも、正直な気持ちが伝わってくれば歓迎です。

――理系学生・院生の割合はどうなっていますか?
理系文系関係なく採用していて、皆さんが想像するよりは多くの理系の人がディレクターで働いていると思います。理系の人は論理的に物事を捉える方が多いと思うのですが、その点が実は、ディレクターやジャーナリストに向いているのかも知れません。院生も多いと思います。22歳の方が24歳よりも良いという考え方はしていませんし、浪人や留年していても、既卒でも院生でも大きな変わりはないと考えています。歳よりも、何をしてきたか、どんなことを考えているか、というその人のことを知りたいですね。

【記者職について】

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――記者に必要な資質はどのようなものがありますか?
究極的には、記者という仕事は誰にでもできる仕事だと言うこともできます。専門知識は後々身につければ良いですし、特別な潜在的資質は必要ありません。ただし、最初に言ったように、世の中の役に立ちたい、という気持ちは大切だと思います。記者という仕事は、結構しんどい仕事です。上手くいかないことは山ほどありますし、取材相手から喜んで話を聞けることばかりでは決してありません。そんな時でも記者として踏ん張る際に、誰のために頑張っているのか、という軸があった方がいいのですね。それから、人と会うことが好きだというのは大事だと思いますね。人と会って情報を得る仕事ですからね。ディレクターとの違いについては、決定的なものは無いと言っても過言ではないかもしれません。ただ、仕事の関係上、スピード感は不可欠です。新たな情報を取り込んで発信するスピード感を持っていることは必要ですね。

――地方勤務についてお聞かせください。
記者の場合、入局直後は東京以外の全国各地の放送局に配属されます。地方勤務では、記者として何でもできるようになることが求められます。警察・県庁・地域産業・企業・スポーツ・選挙など、一通り経験して一人前になってもらい、そこから自分のやりたい道を見つけてもらうという流れです。やりたい分野を見つけたら、そこからさらに専門性を深めるという育成の仕方ですね。つまり地方勤務は一人前になる場であり、自分の将来を探す場だと言えるでしょう。

――記者を志望する者には、どんな視点で報道番組を見てほしいと思いますか?
記者を目指すのであれば、情報を受け取る受け身の姿勢でニュースを見るだけではなく、「このニュースはどうやって取材したのだろう」といったように、自分が報道の世界に入った気持ちで見て欲しいです。そうすることで見えてくるものが多々あると思います。例えば被害者の遺族が顔を出してインタビューを受けている場合、受け身で見ているだけでは「可哀想だな」、で済んでしまいますが、「どうやってこの取材の許可を取れたのだろうか」ということにまで思いを巡らすことで、記者の仕事が具体的にイメージできるようになると思います。

――記者職のインターンシップが去年ありましたが、今年も行われるのでしょうか?
はい、今年もやります。去年と同様8月と9月に2回やる予定で、既にHPで募集を行っています(詳細はこちら)。締め切りが近いので、是非早目に応募して頂きたいです。内容としては、5日間NHKの中で記者として働いてもらいます。NHKのなかなか見られない報道現場の様子を見てもらったり、実際に原稿を書いて記者の先輩が添削をしてくれたりします。また模擬記者会見を行い、警察の発表に質問をしてもらったり、記者専用のパソコンを使って原稿を書いたり、霞が関の記者クラブに行ってどんな仕事をしているかを見たり…と、様々な企画を用意しています。次々に初めての体験をするので疲れてしまうかもしれませんが、記者になりたい人には大変勉強になる5日間になるよう頑張ってメニューを組んでいますので、是非応募してください。実際にインターンシップに参加されたら、積極的に質問をして、出来るだけ多くのことを吸収して欲しいです。

【最後に】
――お二人から東大生や今後就職活動を行う学生に向けてメッセージをお願いします。
宮本:採用試験に関して一般的なことを言うと、やりたい事を無理に絞り込みすぎている人が多いと感じます。「NHKでこんな大河ドラマを作りたいんです!」のように、面接の場ですごく絞った話をされる方がとても多いのですが、無理に絞る必要はありません。色々やりたいことがあるなら、それを正直に伝えて欲しいです。報道番組に携わりたいけどドラマも作ってみたい、ということが矛盾すると決めつけて絞っちゃう人が多いのでしょうね。でも本来は、「絞れてない」ということが若さの表れだったりすると思いますよ。ディレクターについて言えば、実際のディレクターも色々な番組を手がけるので、むしろ興味が広がる人の方がいいなと思っています。ですから採用前の段階で自分の関心を狭めようとする必要はありません。正直な気持ちをぶつけて下さい。
橋爪:就職活動では、多くの記者の人に話を聞いてもらいたいと思います。記者の仕事は、分かりにくい部分が多いので、NHKに限らず現役の記者に会って、仕事の大変なことも楽しいことも聞いてもらいたいです。また、就職活動は大学受験などに比べて、自分を見つめるいいチャンスだと思います。自分が今までどんな風に生きてきたのか、自分が何に重きを置いてきたのか、ということを見つめ直してもらって、この先どこへ進むのかを考える節目にして下さい。まずは真剣に自分と向き合う作業をしてみてください。例えば母親に、「自分ってどういう人間だと思う?」と、普段はなかなか聞けないことを聞いてみるとか、父親に仕事について聞いてみる、ということでも良いと思います。そうやって自分を見つめ直した上で今後どうするか真剣に考えると、納得のいく就職活動ができるのではないでしょうか。

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ーーありがとうございました!

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