学術ニュース

2019年10月23日

量子もつれ「2次元クラスター状態」を初生成 量子コンピューター大規模化へ

 アサバナント・ワリットさん(工学系・博士2年)、古澤明教授(工学系研究科)らは、量子コンピューターによるあらゆる量子計算に使用可能な量子もつれ「2次元クラスター状態」を世界で初めて生成した。成果は18日付の米科学誌『サイエンス』(電子版)に掲載された。

 

 さまざまな分野での応用が期待される量子コンピューターは、世界各国で開発が進められている。しかし、従来の開発方式では量子コンピューターの情報の最小単位である量子ビットが増えるほど配線が複雑になる。このことが量子コンピューターの大規模化に向けた課題になっていた。

 

 今回の研究では、従来の方式とは異なる一方向量子計算方式に着目。多数の量子ビットから構成された量子もつれ状態を用意し、各量子ビットを測定することで量子計算を行う方式だ。十分な数の量子ビットと複数の数の入力が可能な量子もつれの構造(2次元クラスター状態)を用意できれば、大規模で汎用的な量子計算が可能になる。

 

 ワリットさんらは、量子もつれの新しい生成方法により2次元クラスター状態を世界で初めて生成。さらに、生成された量子もつれの状態を効率的に計算する手法を理論的に考案した。結果、作製した2次元クラスター状態を用いて5入力・5000計算ステップの任意の量子計算が実現可能であることを示した。

 

 今後は、クラスター状態を実際の量子計算に用いるための技術を開発して原理実証を行うとともに、クラスター状態の質や入力数・ステップ数の向上を目指す。量子コンピューターの実現が加速することが期待される。


この記事は2019年10月22日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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