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2020年4月17日

サケはどこへ向かうのか 窒素同位体比から回遊経路を解析

サケの成長に伴い、同位体比の情報を記録する部分(丸で囲んだ箇所)が背骨の中心から周縁に移る(研究グループの資料に、視認性向上のため東京大学新聞社が丸囲みを挿入)

 

 国立研究開発法人海洋研究開発機構の松林順研究員らは25日、東大大気海洋研究所の研究者らと共に、同位体比からサケの回遊経路を推定する手法を開発したと発表した。

 

 サケは、河川で孵化した後海に下り、4年ほど北太平洋を回遊して元の河川に戻る生態を持つ。しかし海での回遊の調査はコストがかかるため進んでおらず、多個体のデータに基づく従来の回遊経路推定では回遊する理由も未解明だった。

 

 松林研究員らは、個体レベルで長期間回遊を追跡するため、窒素の同位体比に着目した。窒素には、中性子数が異なる2種類の原子(同位体)がある。この同位体比が海域ごとに異なることを利用し、北太平洋の広範囲で採取した動物プランクトン試料を基に同位体比地図を作成。さらにサケの背骨に残っている、成長過程で生息した海域の同位体比の履歴を復元した。これら二つの情報を組み合わせ統計モデルを製作した。

 

 推定の結果、すでに明らかになっていた日本近海から北上するルートと共に、成長の最後の時期に、太平洋最北部に当たるベーリング海東部の大陸棚へと回遊する経路が発見された。サケの回遊のゴールが、餌資源が豊富なこの海域で餌を食べ性成熟することである可能性も示唆された。

 

 この推定手法は、北太平洋を回遊する他の生物にも適用可能で、今後はさまざまな魚種の回遊生態が解明されることが期待される。


この記事は2020年3月31日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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