COLUMN 2015年5月5日

「来年こそは」で終わらせない 〜東商戦勝利の先に見据える、日本一という目標〜

埼玉県の戸田ボートコース。緑が青空によく映える春真っ盛りのコースが、異様なほどの熱気に包まれ、歓声が飛び交い、ボート競技に自らの4年間を捧げる大学生たちが鬼気迫る表情でボートを漕ぐ様子は、67年前の第1回大会から変わらない。

東商戦対校エイト.JPG

東商戦。東京大学と一橋大学、2校の国立大学が己の威信をかけて闘う、昭和24年から続く伝統ある対校戦だ。

相手校の一橋は近年、目覚ましい戦績を残している。昨年度の全日本軽量級選手権では、花形種目である8人の漕ぎ手と1人の舵取り(コックス)から成る男子エイトにおいて優勝。全日本選手権の同種目では、強豪社会人チームも奮闘するなか第3位という結果を叩き出した。このような強敵を相手にする東商戦における勝利は、「日本一」を創部以来の目標に掲げて日々研鑽を積み重ねている東大漕艇部にとって、目標達成のための第一歩と言える。

一対一の対校戦において挑戦者であり続けることは即ち、敗者であり続けることを意味する。一橋が驚異的な成長を見せるのとは対照に、東大はこの「挑戦者」という不名誉なレッテルを、東商戦においてここ数年貼られ続けている。「今年こそは」と意気込んで臨んだレースが、終わった時には「来年こそは」と、いつの間にか翌年の踏み台と化している。そのような状況は屈辱とも言うべきものであった。

 

「今年こそは一橋を倒す」。お馴染みのスローガンとともに、昨年10月に東大漕艇部の新シーズンが幕を開けた。しかし、今年は例年とは違った。たしかに指導体制は一新されたが、「違う」と感じさせるきっかけは他にもあった。

新たな「違い」を見出せたのは、長く地道な冬場のトレーニングが終わりを迎え、東商戦に向けてクルーを組み始めた頃であった。艇の安定性が向上していた。艇が滑るように進んでいった。そして何より、選手たちがボートを楽しんでいた。「今年は勝てるぞ」という確信を胸に。艇に乗る選手だけでなく、外からサポートする者たちにも、冬の基礎トレーニングの成果が目に見えた瞬間だった。

横断幕.JPG

東大漕艇部の目標のひとつに「チームで勝つ」というものがある。これは、同乗する選手たちが一糸乱れぬ動きで艇を進める、といったことだけで実現できる代物ではない。艇に乗らない者たち、マネージャーの努力も勝利の要素として不可欠である。練習のサポートやご飯作りといった普段の活動はもちろん、東商戦という大きなイベントを半年も前から地道に準備をしてきた者たちがいる。彼らの目的はただひとつ。自分たちが仕上げた最高の舞台で仲間を勝利させること。この熱い思いを胸に秘め、部の代表として仕事に励んできた。

艇に乗らない者たちとは、なにも現役マネージャーのことだけではない。コーチ陣は、プライベートの時間を削りながら日々技術指導に奔走し、後輩たちの背中を後押ししている。レースの度に応援に駆けつけ、熱い言葉をかけ部員を鼓舞する卒業生も多い。「チームでの勝利」とは、プレイヤーとサポーターという横の繋がり、現役と先達という縦の繋がりの先にある一筋の光なのである。

壮行会集合写真.JPG

これが東大漕艇部というチームの全貌であり、これこそが東大漕艇部が誇るチームとしての強さである。この結束は役職・時代が違えど、「勝利」という唯一無二の目標を紐帯としている。一筋縄では崩れまい。

「現状維持とは緩やかな衰退である」という格言を胸に、東大は常に一橋を凌駕すべき相手として意識し続け、日々練習に明け暮れてきた。常に格上の相手を意識できるとは、何と幸せな練習環境であったことか。

しかしながら残念と言うべきか、そのような恵まれた環境を享受できるのは今年の東商戦までであろう。今まで培ってきた底力を存分にぶつけ、一橋を「格上」の存在から引き摺り下ろすからである。もう「挑戦者」とは呼ばせない。東大漕艇部の辞書から「敗北」の2文字を消し去ることができるとすれば、今年の東商戦ほどふさわしい舞台はない。そう確信させるチームができあがった。5月10日、会場を東大勝利の歓喜で湧かせてやろうではないか。

東京大学運動会漕艇部 高橋太一(法・3年)

第67回 東商戦
日時 5月10日(日) 9:00~15:20
対校戦 13:00~15:00
場所:戸田オリンピックボートコース場
JR埼京線「戸田公園駅西口」から徒歩10分

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