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2016年10月30日

若手研究者を支援する「卓越研究員」制度を開始 選出20人を公表

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 東大は本年度から、採用後3年以内の若手研究者に研究教育活動の支援・安定雇用促進を実施する「卓越研究員」制度を開始し、11日には卓越研究員に選出した20人を公表した(図1)。卓越研究員には1年当たり300万円の経費を2年間支給する。若手研究者を部局財源で安定的に雇用する部局の支援も始め、本年度は工学系研究科など8部局(図2)に3年で計900万円支給する。本制度は、五神真総長が任期中の方針として昨年10月に公表した「東京大学ビジョン2020」に挙げた政策の一環だ。

 

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 卓越研究員に選出されたのは、33~42歳の若手研究者。本年度の学内の研究科・研究所・センターなどから52人の候補者推薦があり、推薦理由や研究業績、文理のバランスを配慮し対象者が決まったという。ただし選ばれた文系の研究者は2人のみで、文理の格差は見られる。

 

 酒井崇匡准教授(工学系研究科)は東京大学新聞社の取材に対し、卓越研究員に選ばれたことは「若手研究者としては大きなアピールになり、今後のキャリア形成に優位に働く」と回答。松田陽准教授(人文社会系研究科)も「支援は研究時間の増加に役立ち、支援を受けることで研究の自由度が制約されることもない。考えられる限りで理想的な支援制度」とした。

 

 五神総長は同日発表した談話で「若手研究者が、安心してじっくり新たな課題に挑戦できる環境を構築するための第一歩」と本制度の意義を説明。「支援規模は、研究分野によっては必ずしも十分とは言えないかもしれない」と限界を認めつつ、若手研究者らが安心して学問に取り組める場を創りたいと展望を示した。

 

「若手にとって大きなアピール」「理想的な支援制度」 選ばれた研究者の声

 以下は、卓越研究員に選ばれた2人の研究者のコメントだ。「支援は装置の購入に充てたい」「研究時間を増やすことに役立ち、大変ありがたい」など、制度の実効性を評価する声が聞かれた。

 

◇酒井准教授コメント

――卓越研究員に選ばれた際の感想

 学内から20人程度採用とのことだったので、率直に自分が選ばれたことに対して驚きました。

 

――卓越研究員には年に300万円の財政的支援が2年間なされるが、支援をどのような分野の研究にどのように活用する予定か

 現在、高分子ゲルという材料の医用応用へ向けた基礎研究を行っています。今回の支援金は、高分子ゲルの基礎的な知見を得る上で重要な装置の購入に充てたいと思います。

 

――今回の制度は、若手の研究者支援としてどの程度有効だと考えるか

 今回、卓越研究員に選ばれたことは、若手研究者としてはかなり大きなアピールになると思いますので、今後のキャリアデベロップメントに優位に働くと思います。

 

◇松田准教授コメント

――卓越研究員に選ばれた際の感想

 大変名誉に思うと同時に、選んでいただいたことに対して感謝の気持ちでいっぱいです。

 

――卓越研究員には年に300万円の財政的支援が2年間なされるが、支援をどのような研究にどのように活用する予定か

 文化遺産に関するさまざまな社会的現象および制度が、世界また日本でどのようにして生まれ、どのように展開していったのか、そして今日それらの現象と制度はどのように変化しつつあるのかを、文字・視覚・形態資料を分析しながら解明していこうというのが私の研究の趣旨です。研究の成果は、学術出版を通して公表するのみならず、さまざまな社会的パートナー(大学、地域コミュニティ、地方政府、中央政府、また場合によっては国際機関)と連携・協働することによって、文化遺産の利活用のために実践的に役立てるつもりです。頂けるご支援は、国内外における学術調査(フィールドワーク含む)および文化遺産活用の実践活動に使用する予定です。

 

――今回の制度は、若手の研究者支援としてどの程度有効だと考えるか

 とても有効だと考えます。授賞の際に五神総長は、研究に専念する時間が近年著しく減っている若手研究者に対して時間をつくることを支援したい、と仰っていました。頂けるご支援は、まさにそうした研究の時間を増やすことに役立つものであり、大変ありがたいです。支援を受けることによって研究者が行わねばならない追加の事務作業もほとんどなく、また研究の自由度が制約されることも一切ありません。考えられるかぎりで理想的な支援制度だと思っています。

 


この記事は、2016年10月25日号に掲載した記事に追記したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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