COLUMN 2014年5月13日

人を殺すのはなぜ悪い? 映画『アクト・オブ・キリング』が全世界で注目されているわけ

4月12日から公開されている映画『アクト・オブ・キリング』が話題を呼んでいる。

1960年代、インドネシアで100万人以上が殺される大虐殺事件があった。その実行者たちは現在、国家的英雄として裕福な暮らしを送っている。この映画は、彼らが自分たちの過去の行為を、自ら映像化していく様子を映している。

act of killing.jpg

映画『アクト・オブ・キリング』ホームページ

作中で描かれるのは、嬉々として殺戮の様子を演じる実行者たち。直接的な暴力シーンが多いわけではないが、拷問や殺害の様子を説明する彼らには、吐き気をもよおす恐ろしさがある。

しかしその一方で観客は、100万人を殺した大量殺戮者にいつしか感情移入していることに気づくだろう。自らの行為を演じることでその行為を捉え直し、新しい意味を見出していく彼らの様子には、価値観を揺さぶられた人が誰しも感じる内面的葛藤が垣間見える

 

この映画が強く注目を集めているのは、多くの点で画期的な作品だからだ。

今まで語られることの少なかった大量殺戮の実行者の語りを記録したこと。権力を持ち、裁かれることのない側が、過去の事実を自ら表現したこと。これほど社会を揺さぶりうる映画はまれだ。

文化人類学、平和構築、人権・国際法、表象文化論など、あらゆる角度からこの映画を論じることができる。

レポートのネタに困っている学生は、この映画を授業の内容と絡めて論じればよいのではないだろうか。

    (文:須田英太郎 @Btaros

 

同じ記者の記事

関連記事

合わせて読みたい

INTERVIEW / FEATURE 2014年11月05日

映画『ショート・ターム』ロッテン・トマト満足度99%のワケ 監督インタビュー

INTERVIEW / FEATURE 2015年09月01日

社会運動における研究者の役割とは?『首相官邸の前で』社会学者 小熊英二さん

INTERVIEW / OBOG 2016年04月21日

〈平和〉を自分事に置き換える権利を、戦争の抑止力に…弁護士 笹本さん 後編

NEWS 2014年12月18日

東大生、ロサンゼルスでドキュメンタリー制作

INTERVIEW / OBOG 2014年06月13日

「『東大生思考』を捨てよ!」 ボルテージ津谷会長からのメッセージ

TOPに戻る