INTERVIEW / PROFESSOR 2014年5月12日

薬師寺克行教授 「奥行きは、自分で作るもの」

五月祭登壇者インタビューの最終回は、東洋大学社会学部の薬師寺克行教授です。メディアとアカデミック、両方の世界を経験された教授に、お話を伺いました。

薬師寺先生1.jpg

—-先生のご専門について教えてください。

専門は現代日本政治と日本外交です。
大学の授業では、1、2年生を対象に、アカデミックスキルを身につけてもらうことにも力を入れています。
また授業では常に、ディスカッションを重んじています。ディスカッションの力は、社会へ出てからも有用ですから。

—-前職は新聞記者でいらっしゃいました。アカデミックなフィールドに移られてからはどのくらい経ちましたか?
3年経ちました。それまではずっと、朝日新聞で記者をしていました。
主に政治分野が私の取材フィールドで、論説委員や政治部長などを務めました。
それ以外に「論座」というタイトルの月刊誌の編集長も経験したのですが、私が編集長の時に休刊になるという希有な経験もしました(笑)。
当時は「論壇不況」と言われて、多くの論壇誌が消えて行きました。

—-メディアからアカデミックなフィールドへ移ろうと思った理由は何ですか?
ジャーナリストというのは独立した存在であり、新聞記者はそのひとつの形態です。つまりジャーナリスト=新聞記者ではないのです。
そして、ジャーナリストの役割は、その時代を記録することであり出来事の意味を考えて伝えることです。
私は新聞記者として幸運にも日本の政治や外交が激変する時代を取材してきました。
多くの人に会い、たくさんの話を聞いてきました。
その蓄積を活かし、一度落ち着いて、その時代を整理して書いてみたいと思ったのです。それは私の責務だと感じています。

—-記者として一線で活躍してらっしゃるときに苦労したこと、心がけていたことは何でしたか?
「3時まで寝るな」ということです。

—-3時までとは
ええ。仕事が終わったら疲れていますから、帰宅後すぐ寝てしまいたいですよね。
でも私は、自分にも後輩にも睡眠時間を削ってでもインプットに努めろ、と言っていました。
なぜなら、記者には、多くの人が会ってくれます。自分よりも圧倒的に知識も経験も豊富な方たちが、時間を作ってくれるのです。
記者はその人達の言っていることをきちんと理解し、より深く切り込んで質問しなければなりません。場当たり的な取材は許されないのです。
ですから寝る時間を惜んででも準備のための勉強をしなければならないのです。
また、記者に求められる姿勢について言えば常に謙虚でなければなりません。
取材対象に対しても事実に対してもです。
固定観念にとらわれて物事を批判することも、逆に取材対象に取り込まれてしまうことも避けなくてはなりません。
物事から距離を置き、多角的に見ることができるようになるためには不断の努力が必要です。
いつまでもstray sheep(迷える子羊)でいる努力、と言うこともできるかもしれません。

—-いつ頃からジャーナリストになろうと思ったのですか?
文学部に進学したころかですかね。当時はそれが自然な選択でした。

—-学生時代は、どのような学生でしたか?
不真面目な学生でしたよ(笑)。とはいえ社会問題には興味があって、自分で色々な本や雑誌を読んだりしていました。


—-
今の東大生へ、メッセージをお願いします。
東大生は、勉強はできて当たり前ですから、奥行きのある人間を目指してほしいと思います。
そのためには、横軸と縦軸を拡げる努力が必要です。
横軸というのは現在、日本社会や世界で起きている問題について関心を持ち調べるということです。
縦軸と言うのは歴史を知ることです。
近年、中国や韓国との歴史問題が話題になっていますが、歴史問題が政治化し政治のおもちゃになってしまっている。
それにつきあうような歴史の学び方ではダメですね。
歴史に謙虚に向き合い、人々はどう生きてきたか、いま私たちは何に直面しているかということを学び考えることが重要です。
そうすれば人間としての奥行きが深まると思います。
奥行きは、自分で作るものです。

—-東大生がキャリアを考える上で考えるべきことは何でしょうか?
ある意味でみなさんはhierarchyの上位にいるということを自覚してほしい。東大生は恵まれた環境にいるのです。
そうであるからには自分たちのroll&missionにも自覚的であるべきですね。社会に出たら、パブリックな役割、公的存在としての働きが期待されています。
公務員だろうが企業だろうが職業の選択は自由ですが、
私的利益の追求だけで満足するのではなく、そこでの仕事の先に、組織全体、社会全体に対して自分は何ができるかということを常にビジョンとして持っていてほしいと思います。自己研鑽をしつつ、より大きな役割を担えるよう頑張ってほしいです。

—-ありがとうございました!

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薬師寺克行東洋大学社会学部教授:1955年生まれ。1979年東京大学文学部卒業。朝日新聞論説委員、月刊誌『論座』編集長、政治部長などを務め、現職。著書に『証言 民主党政権』(講談社)、『外務省』(岩波新書)。編著に、『村山富市回顧録』(岩波書店)、「90年代の証言」シリーズの『岡本行夫』『菅直人』『宮沢喜一』『小沢一郎』(以上、朝日新聞出版)など。

文:菅野千尋

公益財団法人東京大学新聞社は、2014年5月に開かれる五月祭で、
「東大生よ、政治家を目指せ!?!?!?」というイベントを開催します。

今回インタビューにお答え頂いた薬師寺さんの他にも豪華ゲストをお招きし、
日本の政治家について熱く語ります!
日時:5月18日 14時半頃〜17時過ぎまで
場所:本郷キャンパス 法文1号館21教室
皆さんのご来場をお待ちしております!

イベント詳細はこちら(「参加」ボタンを押してください!)

(詳細な日時は今後、若干変更される可能性もございます。随時ご確認ください。)

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