東大は、米ハーバード大学に限らず外的要因により学業の継続が困難となった学生を「国籍を問わず」受け入れる方向で調整していることが分かった。5月30日、東京大学新聞社の取材に東大の広報担当経由で林香里理事・副学長(国際、ダイバーシティ&インクルージョン担当)がコメントを寄せた。26日には米ハーバード大学の留学生を受け入れる方向で検討するとしていた。(記事末尾に林理事コメントの全文を掲載)
受け入れる学生の身分は、正規学生とはしないものの、一部授業の履修を認め、成績証明書も発給する。ウクライナ侵攻に合わせ、学生を受け入れた経験を活かして調整する形。東大の広報担当は、研究者の受け入れの有無や、受け入れ規模など詳細については検討中であるとした。情勢の変化に応じ、検討状況も日々変化しているという。
米トランプ政権は、5月22日にハーバード大学への留学生受け入れ認可を停止した。在校中の同大留学生に対しても転学か米国の在留資格の喪失を選ぶよう迫っていた。現在、米国の裁判所がこの措置を暫定的に差し止めている。米政権とハーバード大学は今回の措置以前からDEI(多様性・公平性・包摂性)推進や学生の取り締まりなどで対立していた。27日には、阿部俊子文部科学大臣が各大学にハーバード大学の留学生の受け入れを検討するよう依頼したと明かしていた。
藤井輝夫・東大総長は5月13日に「本学のDEI推進について」と題したメッセージを東大ウェブサイトで公開。「世界の大学におけるDEI推進の取り組みに支持を表明し、ともに歩んで」いくと述べている。
林理事・副学長のコメント全文
本学では、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻により避難を余儀なくされた学生約20名を受け入れ、一部の授業の履修を認めるなどの支援を行ってまいりました。
現在の不安定な国際情勢を踏まえ、ハーバード大学に限らず、外部的要因により学業の継続が困難となった優秀かつ才能ある学生に対し、ウクライナ危機対応の経験を活かして支援を行いたいと考えております。そのため、本学では、このハーバードの事件が起こる以前から、適切な受け入れの枠組みを検討しているところでした。
このスキームにおける受け入れは正規学生としてのものではありませんが、一時的に本学での学修機会を提供し、一部の授業の履修を認める方針です。将来的に復学や進学を果たした際には、当該授業の単位が認定されるように成績証明書なども発行する予定です。 なお、2025年度中をめどに制度整備を行うが、受入れ開始時期や規模・期間等は調整中です。
東京大学は、グローバルな高等教育機関として、若く才能ある学生たちの学びを止めることなく、その継続に貢献してまいります。この取り組みは、国籍を問わず実施するものです。