硬式野球部(東京六大学野球)は、9月14日、早大と2回戦を戦い、3-1で敗れた。選手層で勝る早大に最後まで食らいついたが、東大は終盤の好機であと一本が出ず、好投の投手陣を援護できなかった。
(取材・吉野祥生、撮影・平井蒼冴)
早大 020010000|3
東大 100000000|1
前日の1回戦はエース・渡辺向輝(農・4年)が先発し、リーグ戦3連覇中の早大にがっぷり四つの戦いを繰り広げた東大。この日の2回戦は、エースが投げない中で投手陣がどこまで粘れるかが試された。
先発として起用されたのは、江口直希(工・3年)。昨シーズンは、5試合に登板し防御率8.44と苦しんだが、長身から繰り広げる投球は力強く、相手打者を圧倒するポテンシャルを持っている。
1回表、早大の攻撃、先頭のリードオフマン・尾瀬雄大にいきなり内野安打を許し、俊足の尾瀬を出塁させてしまう。早大は早速機動力を生かして、続く2番・渋谷泰生の初球で、ヒットエンドランを試みる。しかし、渋谷の打球はセカンド正面の強い当たりとなり、4-6-3の併殺打に。流れを切る大きなプレーとなった。江口は、続く3番・小澤周平を右飛に抑え、この回を3人で切り抜けた。

1回裏、東大の攻撃、1番に入った中山太陽(経・4年)が右二塁打を放ち、チャンスを作る。続く2番・酒井捷(経・4年)は浅い右飛に倒れるも、3番でスタメン起用された工藤雄大(文・4年)の打球はボテボテのおもしろい当たりに。早大ショート・渋谷はランニングスローで一塁へ送球を試みるが、これが悪送球となり、二塁走者が生還。東大が1点を先制した。

前日の試合では東大が得点した直後に、早大に点を取り返される場面が目立ったことから、得点直後の2回表をゼロで凌ぎたい東大。しかし、早大は4番・寺尾挙聖と5番・前田健伸の連打に送りバントを加えて、一死二、三塁のチャンスを作る。この場面、7番・石郷岡大成がライト前へ運んで同点とすると、続く好調の8番・吉田瑞樹がきっちり犠飛を放ち、東大は2-1と逆転されてしまう。
3回途中からは、松本慎之介(理Ⅱ・2年)が登板。夏の練習試合では先発も任され、力を付けて成長してきたサウスポーだ。松本は5回表に失策が絡んで1点を失うものの、7回途中までを自責点0に抑える素晴らしい投球を見せた。

東大は、150km/hに迫る直球を操る早大の先発・髙橋煌稀を5回まで攻めあぐね、得点は1点にとどまる。点差を縮めて流れを引き寄せたい7回裏、2死から6番・秋元諒(文Ⅰ・2年)がこの日3安打目となる左前打を放つと、続く7番・青貝尚柾(育・4年)も内野安打で出塁し、二死ながら得点圏に走者を置く。しかし、前日に死球を受けた杉浦海大(法・4年)に代わってスタメンマスクを被った8番・明石健(農・3年)が遊ゴロに倒れ、得点には結びつかなかった。
守備では、7回と8回に佐伯豪栄(工・3年)、9回に前田理玖(文・3年)が好リリーフを見せた。打線もそれに応えたい9回裏、先頭の3番・門田涼平(文・3年)が低めの際どい球を見極め、値千金の四球で出塁する。さらに1死となってから、5番の樋口航介(理Ⅰ・2年)も粘りながら四球を選び、1死一、二塁に。ここで早大は投手を交代し、本格派右腕・田和廉が登板する。

田和が投球練習を終え、6番・秋元が打席に入る。この試合3安打と活躍している秋元へ、スタンドから大きな声援が飛ぶ。しかし、試合はすぐには再開されない。先に行われた法大対慶大の試合が延長11回までで3時間半を超える激戦となったことで、試合開始が15時16分と大幅に遅れていた。日没の迫る9回裏。辺りはすでに薄暗く、ボールが少し見えにくかった。ゲームはさらに中断となり、ナイター用の照明や外野の線審が準備された。
ようやく始まった秋元の打席。1死一、二塁の状況で、スタンドの興奮に応えるかのように秋元はフルカウントまで粘る。2点差ながら2人の走者がいるだけに、期待が高まりゆく。運命の7球目。秋元の打球はまさかの二塁手正面、ゲッツーコースへ。すかさず4-6-3の併殺を狙った早大だったが、二塁手の送球が三塁方向へわずかに逸れてしまう。遊撃手がバランスを崩しながら二塁ベースを離れて一塁走者にタッチを試みる──判定はアウトだった。

ここで東大・大久保監督が昨シーズンから導入されたビデオ検証を要求。判定が覆れば一死満塁の絶好機となる場面。応援も止み、静かに気まずい時間が流れる。しばらく審判は下がっていたが、判定は覆らず一塁走者はアウト。二死一、三塁で再開し、7番・青貝に運命は託された。間も空いて難しい雰囲気──初球を狙いすましたように振り抜いた打球は、惜しくもサード正面へ。そのまま二塁封殺でゲームセットとなった。
点灯試合となった早大2回戦。投手陣の安定感と最終回の追い上げは、今シーズンの東大の躍進を予感させるものだった。なにより、昨シーズンはエース・渡辺以外の投手陣が不安定で、2回戦は厳しい展開になることが多かった。勝ち点獲得に必要なピースというべき2番手以降の投手陣が、好投したことは大きな収穫と言えるだろう。昨秋の早大戦の成績が0-20、1-12という散々な結果であったことを考えれば、今シーズンの3-6、1-3という戦績は大いなる進化を感じさせる。中山の肩の状態や杉浦の負傷といった不安要素はあるものの、今後東大野球部がリーグ戦をどのように戦っていくのか楽しみだ。