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2018年8月9日

氷床変動を詳細に解明 大気海洋研究所横山教授ら 海面上昇予測に応用も

掘削調査が行われたグレートバリアリーフ(撮影:菅浩伸九州大学教授)

 

 横山祐典教授(大気海洋研究所)らはオーストラリアのグレートバリアリーフで採取したサンゴ化石試料の分析により、約3万年前の氷期から現在までの氷床の変動を解明した。これまでの想定の数倍の速度で氷床が変化することが明らかになり、地球温暖化に伴う海面上昇の予測などに応用が期待される。成果は7月25日の英科学誌『ネイチャー』に掲載された。

 

 現在、地球上の氷床は世界の平均海面を約80m上昇させ得る淡水を蓄えており、地球温暖化による氷床の融解に伴う海面上昇が懸念される。降雪速度や融解速度などに基づき氷床変化を予測するモデルの構築は進んでいるものの、人工衛星や潮位計などによる観測データは過去100年分の蓄積しかなく、モデルの精度向上のため古環境データの採取が求められていた。特に、直近の氷期の最寒冷期である約3万1千~1万年前の最終氷期最盛期(LGM)は現在より平均気温が3~5度低く、世界各地で氷床も発達していたため、LGM前後の氷床変化の解明が期待されていた。

 

 横山教授らは今回、現存するサンゴ礁を傷付けない特殊な試料採取法を用いて世界で初めてグレートバリアリーフを掘削し、サンゴ化石試料を採取。LGM前後のサンゴ化石試料を用いて化学分析を行い、過去3万年間の海水準と氷床の変動を復元した。

 

 復元の結果、LGMに氷床が成長することで海面が年間約15~20mm低下し、LGM後の気温上昇による氷床の流出で年間約12mm上昇したことが判明。氷床はゆっくり成長し、比較的急速に縮小するという既存の学説を覆し、氷床の急激な成長・流出を加味したモデル構築の必要性を示唆した。これらの環境変化によりグレートバリアリーフのサンゴ礁が5回にわたって局所的に消滅したものの、深度を変えつつ生息を続けたことも明らかにした。

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