硬式野球部(東京六大学野球)は、10月13日、立大と2回戦を戦い、6-5で敗れた。東大は2回裏に3点を先制したものの、立大の強力打線にじわじわと得点を許して7回表には逆転を許す。東大も粘りを見せて追い付き延長戦まで持ち込んだが、延長10回表に勝ち越されて敗戦した。(取材、撮影・吉野祥生)
立大|0010013001|6
東大|0300002000|5(延長10回)
前日の1回戦は、立大打線が爆発し2-17と散々な形で敗れた東大。しかし、「大量得点した次の日は打てない」という野球界でささやかれるジンクスが本当ならば、案外投手戦になるかもしれないという淡い期待を抱いたファンも少なくないだろう。この日は、山形球道、小林隼翔、鈴木唯斗という立大打線の超強力な1番から3番に長打を打たれずしのげるかが大きな鍵だった。
しかし、大きく入れ替わった東大のスタメンは神宮球場に詰めかけたファンを驚かせた。前日までリーグ戦で全試合に先発出場し攻守で活躍していた正二塁手の秋元諒(文Ⅰ・2年)、正遊撃手の樋口航介(理Ⅰ・2年)がベンチからも外れた。選手の状態が非常に心配される事態なうえに、この試合において戦力が低下する懸念は否めなかった。
東大の先発は佐伯豪栄(工・3年)。これまでリリーフでの登板を任されてきたが、この日はリーグ戦初先発。秋季リーグ戦では安定したリリーフを見せており、その実績を買われた初先発だ。一方で、リーグ戦で長いイニングを投げた実績はなく、オープナーとしての起用と推測された。
1回表、先頭の山形に四球を与え、2番・小林隼に左前安打を許し、無死一、二塁のピンチを迎える。しかし、3番・鈴木唯にも真っ向勝負し左飛に抑えると、後続も打ち取って初回を無失点で抑える。佐伯は2回表も3人で抑え、期待に応える投球を見せた。

2回裏、東大の攻撃。先頭の5番・荒井慶斗(文Ⅲ・2年)が一度もバットを振ることなく四球を選ぶと、続く6番・小村旺輔(経・3年)が左前安打でつなぎ、無死一、二塁のチャンスを作る。打席には7番・門田涼平(文・3年)。犠打の少ない東大だが、ここは送りバントを試みる。すると門田のバントした打球は、三塁線への絶妙な当たりとなり、内野安打に。無死満塁の絶好のチャンスを迎える。
ここで8番・佐伯に代打・小美野晴寛(文Ⅱ・1年)が送られるも、空振り三振。「無死満塁は点が入らない」ジンクスが頭をよぎる。しかしその心配は杞憂(きゆう)だった。9番・井之口晃治(文・4年)が初球を振り抜くと一、二塁間を破る適時打に。東大が1点を先制する。さらにここで終わらないのが今年の東大野球部。二死満塁から2番・明石健(農・3年)がレフト線に落ちる2点適時打を放ち、この回3点を先制する。

3回表からはエース・渡辺向輝(農・4年)が登板。しかし、いきなり先頭の立大9番・竹中勇登に本塁打を浴び、点差が2点に。投手に本塁打を打たれ、流れをつかみきれない。4回と5回は両チーム無得点に終わるも、6回表に立大がさらに1点を返し1点差に。6回裏も東大は三者凡退の攻撃で流れが立大に傾く。

そして7回表、渡辺は続投するも、2死二塁から立大・山形に適時三塁打を浴びて同点に。さらに続く小林隼に左翼席への2点本塁打を浴びてあっという間に逆転されてしまい、渡辺は降板。
試合の流れからも勝負あったかと思われたが、7回裏、1番・伊藤滉一郎(工・3年)と2番・明石の連続安打、そして代打・大原海輝(文・4年)の四球で二死満塁として、長打が期待できる5番・荒井慶に打席が回る。3球目を打ち上げてふらふらとしたフライに。これが後ろに守っていたセンターの前に落ちて2点適時打となり、東大が追い付く。しかし、続く小村は左飛に倒れて勝ち越しはならず、試合は終盤に差し掛かる。

8回表は江口直希(工・3年)が登板し無失点に抑えると、9回表は前日に先発した松本慎之介(理Ⅱ・2年)が登板。前日には立大の上位打線に3本の本塁打を浴び3イニングで降板した松本慎。1番から始まる立大の攻撃だったが、ここは無失点で切り抜けて、雄たけびを上げる。
東大は同点で迎えた9回裏で試合を決めたいところ。1番から始まる好打順だ。しかし、三者凡退に倒れ試合は延長戦に突入。辺りも暗くなり、試合はナイターの様相を見せ始める。
10回表、松本慎が続投。6番・落合智哉に死球を与え、送りバントで2死二塁とされると、代打・北田大翔のリーグ戦初安打で中前へ運ばれ、ついに勝ち越しを許してしまう。
同点に追い付かなければならない東大だったが、10回裏はあえなく三者凡退で試合終了。結果的には、代打で登場した相手のラストシーズンの4年生・北田大の一打で試合が決まる結末となった。控え選手の層が厚い立大の実力を見せつけられた試合だった。









