東大と台湾の半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)は6月12日、TSMC東大ラボの運用を開始した。4月に締結した産学協創協定に基づき、先端半導体の研究・教育・人材育成を推進する。TSMCにとって台湾外の大学と初のジョイントラボ(長期間の大規模共同研究の拠点)となる。
両者は同日記者会見を開いた。ラボは浅野キャンパスに設置され、池田誠教授(東大大学院工学系研究科)とTSMCのマーヴィン・ チャン氏がラボ長を務める。従来の共同研究を深化させ、TSMCのシャトル・ サービス(少量のチップを安価に試作できるサービス)を活用した研究・教育の充実化を図る。池田教授は日本の半導体教育がチップの試作などの面で、欧米の大学に比べて遅れていると指摘。「今回の機会を活用してキャッチアップしていきたい」と述べた。

東大の藤井輝夫総長は「半導体設計環境を活用した教育の充実と、博士課程の学生の支援などにも共に取り組みたい」と述べた。TSMCのワイジェイ・ ミー副社長・共同最高執行責任者は東大が世界有数の研究機関であると同時に、日本の次世代リーダー育成機関だと評価し、「(連携により)TSMCだけでなく、他産業のためにもより多くの卓越した才能を育成できることを期待している」とした。
東大とTSMCは2019年に共同研究を開始して以来、累計21件のプロジェクトを創出してきた。23年にはTSMCが提供する包括的な半導体設計教育パッケージ(ADFP)を工学部や工学系研究科の講義に、日本でいち早く導入。昨年より理学部や教養学部を加えた横断型教育プログラムを開始していた。