
試験直前だった2年前、自分の視界は教科書とノート、ペンを握る自分の手でいっぱいでした。不安に押しつぶされそうになりながら、迫り来る試験のその日までひたすらペンを走らせていたように思います。
大学は、その視界が大きく広がる驚きの毎日です。どんな環境か一言で表すとしたら「海」のようだと感じます。担任の教員がいるわけでもないし、何を学ぶのかも自分で好きに決めることができる。そのあまりの自由さに何をすべきか見失いそうになることもあります。多様な学問のあり方を前にし、その海にのみ込まれる感覚になるのです。正解のない問いに向かって悩む時間は海に沈むように孤独なこともあります。大きな波に流されるように、大学生活はあっという間に過ぎ去ります。入学当初、高揚感を感じつつ、自分自身がちっぽけな船の船長で、その船では乗り越えられないほどの大きな波があらゆる方向から押し寄せてくるような感覚になったことを今でもよく覚えています。
でも、あなたは1人ではありません。同じく大学に入学した心強い航海の仲間がいます。これまで出会ってこなかったさまざまな人と出会い、ときにはかなわないような人にも巡り会うかもしれません。友人や教員の存在はきっと大きな刺激になり、推進力となります。語り合い、学びを得ることで波の乗り越え方を知り、次第に船は確かで大きなものとなるはずです。大学で多様な学問や考え方、選択肢を得るからこそ、将来にも悩む日が来るかもしれません。その時船のかじ取りをしてくれるのは、あなたがこれまで積み上げてきた学びです。まさに今あなたが勉強しているその瞬間が将来の自分自身の大きな助けとなります。高校で学んだことが大学でより深まり、新しい視点をもたらしてくれることは多々あります。足踏みしてしまう日はあったとしても、後退する日はありません。毎日ほんの少しだけでも成長したあなた自身のことを、どうか誇らしく思ってください。
試験を受けるときのことを、もしかしたら二度と来ないかもしれない瞬間のことを、考えるだけで怖くなったり、緊張でどうしようもない気持ちになったりするかもれません。でも大丈夫。今のあなたの数えきれないほどの努力が糧となり、きっと受験という荒波を越え、自分の芯を貫くことのできるかじとなります。そして、皆さんが感じる不安や心配、疑問のそばにいつでも『東京大学新聞』はいます。さあこれから始まる果てしなく広い航海への第一歩、胸を張っていってらっしゃい!
『東京大学新聞』編集長 丹羽美貴(文Ⅲ・2年)










