INTERVIEW / OBOG 2019年6月19日

やりたいことに今挑め 弱者に寄り添う弁護士にインタビュー

 東大生に人気が高い職業の一つ、弁護士。在学中から資格予備校に通うなど、難関の司法試験、司法試験予備試験の対策をする人も多いだろう。そこで現在、現場で弱者に寄り添いながら弁護士として働いている望月宣武さんに、弁護士のやりがいや心構え、東大生へのアドバイスを聞いた。

(取材・中井健太 撮影・渡邊大祐)

 

望月 宣武(もちづき・ひろむ)さん(弁護士)03年法学部卒。06年北海道大学法科大学院修了。現在は日本羅針盤(ニッポンコンパス)法律事務所の代表を務める。

 

依頼主の笑顔求めて

 

──どのような大学時代を過ごしていましたか

 運動会ヨット部に所属しており、週末は部活に費やしていました。平日は授業に出ることもなく、自分が立ち上げた、障害者の人権擁護運動を行うNPOでの活動をしていました。大学で眠たい講義を聞いているよりは、現場でフィールドワークをしている方が性に合ったのです。

 

──NPOを立ち上げるきっかけはなんだったのでしょうか

 入学直後に入った、「ぼらんたす」という障害者を介助するサークルで、障害者の人権運動を行っていた人に出会い、障害者運動に興味を持ったのがきっかけです。当時は障害を持っていると取れない資格が多く、法改正によって規制の撤廃を目的とするNPOだったのですが、弁護士や政治家、ジャーナリストなどさまざまな立場の人が参加していました。特定の問題意識に基づき、理想に向かって、政治家・官僚を説得して法律を変える、というダイナミズムに関われることが面白かったです。

 

──なぜ弁護士を目指したのでしょうか

 NPOで活動する上で、学生は豊富な時間を膨大な文献調査などに充てられるため、時間を「専門性」と呼ぶことができますが、大学を卒業した後は何か一つ専門分野がないと活躍していくことができません。そんな中、法律を武器にしようと考え、弁護士の道を選びました。

 

──どのような勉強をして司法試験に臨みましたか

 学部時代は一切勉強をしなかったのですが、4年生の時に記念受験をしました。大学を卒業した直後は、社会人としてさまざまなNPOを手伝う、フリーターのような生活を送っていましたね。大学を出て1年がたった時、法科大学院制度ができたので北海道大学の法科大学院で勉強し、司法試験に受かりました。司法試験の勉強法という点では、法科大学院で言われた通りに受動的に勉強していたので、何か特別変わったことをしたわけではないです。

 

──弁護士として活動する中で特に印象に残ったこと、うれしかったことは何ですか

 家族を亡くした人、特に子どもを亡くした親からの依頼は、どのような結果になってもハッピーエンドにはなりません。そんな中でも遺族にとって最良の解決を模索しながら裁判をしていかなければならないのはとても苦しいです。

 

 逆にうれしいのは、暗い顔で相談に来てくれた人が少しでも笑顔になって帰っていった時ですね。基本的に私の事務所に来るのはトラブルに巻き込まれて、精神的に参ってしまっている人です。そんな人たちが、これからどういう行動を起こしていくか、という計画を練る中で少しでも前向きな気持ちになってくれることがあります。どん底の状態にある人を少しでもゼロ、プラスの状態に持っていけるのがやりがいです。

 

現場での経験を糧に

 

──AI技術によって代替されやすい職業として、弁護士が挙げられることが多いですが、どのようにお考えですか

 弁護士の仕事、特に契約書の確認や、交通事故などの比較的定型的な裁判は確かに自動化しやすいと思います。ただ、法律知識を使って裁判を行うのをAI技術が自動化したとしても、精神的にどん底の人と向き合い、サポートするのはAI技術には困難だと思います。自分は特にカウンセリング的要素に主軸を置いて仕事をしているので、AI技術を脅威だとは捉えていません。むしろ、AI技術で代替できるところは早く代替し、代替不可能なところに自分のリソースを集中的に使いたいと考えています。

 

──さまざまな人から批判を浴びることも多い職業ですが、誹謗(ひぼう)中傷をどのように捉えていますか

 弁護士は恨まれる仕事です。怖かったらこの仕事はやっていけません。自衛は心掛けていますが、殺意を持って攻撃されたら助かりません。そういうことが起こり得る仕事です。社会的なインパクトが大きい案件に関わればそれだけ反発する人も生まれます。膨大な誹謗中傷も浴びますが、気にしても仕方がありませんからね。

 

──東大生にメッセージをお願いします

 当時も今も、東大生はとても賢いです。自分は大天才だったわけでも、すさまじい努力をしたわけでもなく、そこそこの器用さとそこそこの努力の掛け合わせで東大に入りました。なので、周りの優秀な東大生に気後れし、東大内での競争を勝ち抜いていく気が起きませんでした。そんな中、東大生と競争する必要のない場所が、NPO活動をしていた現場でした。

 

 弁護士になるのも、最速の同級生に比べれば5年遅かったですが、現場でのドラマに満ちた遠回りは決して無駄ではありませんでした。東大生は、最短で結果を出すことが評価される場面での競争には強いですが、社会に出れば多様な価値観があります。自分がやりたいことをやって楽しんでいたら勝ち。人と競争することは人生の幸せと直接つながりません。

 

 東大生はなんだかんだ地頭がいいので、適当にやっていても結果を出せるものです。とりあえず興味のあることに飛び込み、現場を見てください。真面目な東大生は始めた以上はやめられない、と安易に物事を始めることに抵抗感を持つかも知れませんが、とりあえず始めましょう。学生のうちは、嫌になったらすぐにやめればいいんです。学生の特権は「無責任」ですから。

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