EVENT 2017年11月3日

東大ガールズハッカソン2017 東大女子26人が2日間プログラミングに向き合う

 プログラミングをゼロから学べるアプリ開発コンテスト「東大ガールズハッカソン」の本番が、10月7、8日に日本ビジネスシステムズ(以下JBS)本社で開催された。ハッカソン(hackathon)とは、一定の短期間でプログラムの開発を行い、チームごとにアイデアや成果を競うもの。プログラムの作成を意味するハック(hack)と、マラソン(marathon)に語源を有する。参加者たちが駆け抜けた2日間の様子を、写真と共に振り返ろう。

(取材・小田泰成)

 

参加者による発表後の集合写真(写真はJBS提供)

 

ハッカソン本番までの流れ

 

 本イベントには、東大の学部生20人と院生6人の計26人(うち文系10人、理系16人)が参加した。学生は原則3人1組のチームで行動を共にし、まずは6月下旬に開かれたプログラミング講習をDMM.comラボのオフィスで受講。チーム内の顔合わせを行い、プログラミングの基礎知識や各チームの連絡手段となる「Slack」というコミュニケーションツールの使い方を学んだ。

 

 ほとんどの学生はプログラミング初心者だったが、夏休みにProgate提供のサービスで自習するなどして、アプリ制作に必要となる基礎的な能力を習得した。各チームに欠かせなかったのが、協賛企業の社員や東大の学部生・院生から成り、アイデアや技術について助言する役割を担う、メンターと呼ばれる人々。メンターと学生の関係は終始良好で、協賛企業の社員の中には、自社のオフィスに学生を誘って一緒にアプリ開発の準備を行ったメンターもいたほどだった。

 

 9月28日にサイボウズのオフィスで開かれたアイデアソンでは、メンターも各チームに2人ずつ合流。学生とメンターはカードゲームなどで親睦を深め、活発にアイデアを出し合った。

 

本番の開発の様子

 

 こうした準備を経て、いよいよ迎えたハッカソン本番。JBSのオフィス16階の作業用スペースでは、アプリの開発や動作確認に用いるデバイスだけでなく、意見を共有するためのホワイトボードなども貸し出され、開発に適した環境が整う。一つ上の17階には、東京タワーを一望できる広々としたカフェがあり、参加者にはコーヒーやお菓子が無料で提供された。

 

 タイムテーブル上で開発に与えられた時間は2日目午前中までの計15時間ほど。2日目の午後からは、夕方の発表会に備え、発表の準備へと頭を切り替えなくてはいけない。各チームは限られた時間の中で一心に開発に取り組む。

 

 時間は刻一刻と過ぎていく。

 

 高度な技術に挑むチーム。
 活発に意見を交わすチーム。
 黙々と各自の作業に取り組むチーム。
 気分転換のため、カフェで作業するチーム。
 着想を得るために散歩に出歩くチーム。
 締め切り直前までアプリを改善しようと粘るチーム。
 動画を撮影するなど、発表の工夫にも余念がないチーム。

 

 十人十色ならぬ十組十色の個性が、アプリそのものだけでなく、開発の過程や時間の使い方にも表れていた。

 

参加者たちはときにメンターからの助言を受けつつ、開発に取り組んだ(撮影・安保茂)

 

各アプリの発表、そして……

 

 開発を終えて、2日目の夕方に迎えた発表会。各チームはアプリの使用方法や効果を伝えるために、動画や寸劇などを交えて印象的な発表を繰り広げた。発表後に設けられた質疑応答の時間では、協賛企業の社員である審査員からだけでなく、他チームの学生やメンターからも活発に質問が飛び出す。それに対する各チームの回答も的を射ており、発表会は充実したものとなった。

 

参加者たちの発表は熱を帯びたものとなった(撮影・安保茂)

 

 全チームの発表が終わると、審査を経て、まずは10社の協賛企業による企業賞が授与される。授賞理由は「人々が日々感じている課題への解決策をきちんと示している」「アプリを継続的に運用するための資金調達についてもよく考えられている」などさまざまだ。

 

 企業賞を二つ受賞するなど高い評価を得たアプリの一つが、「文理融合」が開発した「れしぴん」。1人暮らしの学生の悩みの一つは自炊だとし、レシピの送受信を通じて実家にいる家族と家庭の味を共有することを目指した。質疑応答では「より多くの人々と、より多くのレシピを共有するアプリは、すでに存在する」との指摘に対し、「レシピが多過ぎると逆に迷ってしまうこともある。このアプリは家族間のコミュニケーションの促進も目指しているので、あえて限られた範囲内での利用を想定している」と的確に回答。ある審査員は「人間関係が希薄な現代社会において、家庭の味を通じてコミュニケーションを強化する、という視点が優れている」と評した。

 

 同じく高評価を得たのが「P×P(ダブルピー)」による「My Closet」だ。買った服を忘れてしまわないよう、服の写真を撮ってアプリ内に保存し、色や着る季節で分類できる。SNSの機能も備えているため、買った服について投稿することで服の思い出を残すこともでき、「服を買ったときのワクワクを思い出せそう」と審査員の感動を呼んだ。

 

各企業賞の授賞式では、人気のスイーツのギフト券など、趣向を凝らした賞品が贈られた(撮影・安保茂)

 

 今回の開発テーマは「人間を拡張させるアプリ」。「拡張」とは幅広く自由な概念で、ここでは人間の機能の一部を改善・補完することを指す。先の例で言えば、「My Closet」は服に関する記憶や、服を用いた自己表現を拡張。タンスの中でたたまれている服の全体をアプリ内で可視化するという点で、視覚も拡張している。このような人間の可能性の「拡張」と、社会の中での生きづらさを解消してきた歴史を持つ「女性」は、どこか相通ずるものがある。これこそが、今回東大ガールズハッカソンで拡張を取り上げた背景だった。

 

 イベント終了後の懇親会では、参加者たちの多くが満足したような表情を浮かべていた。協賛企業の役員が「東大ガールズハッカソン全体のレベルが上がってきている」と評したことからも、本イベントは成功に終わったといえるだろう。盛況を受け、早くも「東大ガールズハッカソン2018」の開催が決まった。来年もアプリ性能のさらなる向上に、そして参加者たちの笑顔に期待したい。

 

協賛企業の社員やメンターを交えての一枚(写真はJBS提供)

 

最優秀賞受賞チーム「黒蜜ピンス」のコメント

 

 黒蜜ピンスは、金明玉さん、鍋谷碧衣さんを含む学生3人と、メンター2人から成るチーム。彼女たちが開発したアプリ「Key inside your heart」は、自分が怒りをため込んでいることを自覚してもらい、人間関係の悪化を防ぐものだ。SNSのような機能を備えており、発言を投稿する際にそのときの感情に応じたボタンを押すことで、感情の推移を折れ線グラフで記録。記録に基づいて怒りが爆発しそうな時期を予測し、相手に対して好感を抱いていたときの投稿を表示するなどして怒りを抑えてもらうことも目指している。受賞した金さんと鍋谷さんの2人に感想を聞いた。

 

最優秀賞を授賞した金さん(左から2番目)、鍋谷さん(同3番目)、及びメンターの方々(両端) (撮影・安保茂)

 

金明玉さん(養・3年)

 以前体験活動プログラム(東大の教育活動の一環)でフランスに行った際に参加したハッカソンが楽しかったので、今回も参加することにしました。今回は基礎的な講習もあったのでよかったです。本番ではメンターの方が優しく、いつも助言してくれました。事前の勉強だけでは思うようにいかないところもありましたが、結果には満足しています。

 

鍋谷碧衣さん(農・3年)

 経験が浅い私でもアプリが作れるということが分かって良かったです。メンバーにも恵まれました。私はけっこう自分の思ったことを熱弁してしまうタイプなのですが、それに対して金さんが質問をしたりしてくれたおかげで、冷静になることができました。まだまだアプリで改善したい点もあるので、今後もプログラミングの勉強を続けたいです。

 

(参考)今回のアプリ一覧

 

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