報道特集

2020年12月4日

【社説】大学債発行 東大は将来世代へ説明を

 償還期限40年の大学債が発行された。日本の大学の新たな自主財源確保策を創出し、ソーシャルボンドとして社会からも受け入れられたことは評価できる。

 

 しかし忘れてはならないのが、大学債が東大にもたらす利益を考えることだ。米国で一般的な特定の施設建設のための大学債発行では、建設費用の負担を長期にわたって償還することで、施設を使用する全ての世代でコストを分担できる利点がある。今回、東大が大学債で得た資金を投じる「キャンパスの徹底したスマート化」も、長期にわたって使える施設に関する施策ではあるが、その計画はまだほとんど具体化していない。コロナ禍後も40年にわたり使える施設になるのか、東大の説明からは見えない。

 

 現状、大学債発行で得た資金の使途は定まっておらず、各部局から提案を募っている状況だ。坂田副学長は、大学債発行は五神総長が掲げる未来社会協創の理念を実現するための施策であり「お金の獲得が第一義ではない」と強調する。しかし使途を後決めする現状を見ると、「大学債発行」自体が先行し、その具体的な目的が後回しになっている印象は拭えない。ソーシャルボンドであるがゆえに東大内部にとっての目的が抽象化していると言える。

 

 大学債発行は、世代間の不公平を生む危険性をはらむ。償還に充てられる余裕金は、積み立てれば未来の東大構成員が使えたはずの資金だからだ。今回の先行投資は本当に将来世代にとっても価値があるのか、債券を発行した世代が説明責任を負うことになる。投資が想定されるハイパーカミオカンデやアタカマ天文台計画はもともと大学債抜きに始まった。現執行部は、大学債で投資する必然性を明示するなど、資金の前借りを将来世代が納得できるよう説明する必要がある。

 

 米国に目を向ければ、スタジアムのリノベーションのため約4億ドル(約400億円)の債券を発行したカリフォルニア大学バークレー校が、スタジアムの収益予測を誤り、年間1800万ドル(約18億円)の赤字を抱えるようになった例もある。償還計画が現実的か、きちんと監視しなければ、不利益を被るのは将来の大学構成員全員だ。

 

 今回の償還計画では、財務諸表上でも「償還準備金(仮称)」の名目で積み立て財源を明記する方針だという。財務諸表は誰もがウェブ上で閲覧可能だ。大学が40年にわたって大学債に対し責任を取るのか、東大の構成員一人一人が見届ける必要があるだろう。

 

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