最新ニュース

2025年8月10日

東大、産学連携研究・教育制度の改革策発表 ガバナンス強化・教職員の倫理意識徹底など 医学系接待強要疑惑を踏まえ

 東大の社会連携講座等検証・改革委員会は8月8日、企業等から資金提供を受けて行う研究・教育全般に関する制度の改革策を発表した。「改革方針」として①教職員の倫理意識徹底、②大学本部によるガバナンス強化、③契約・設置時の確認体制整備、④活動開始後の部局の管理強化-の4本の柱を掲げている(表1)

 

方針 具体策
教職員の倫理意識の徹底
  • 全教職員に毎年受講が義務づけられているコンプライアンス研修の充実。研修後のテストの実施(今年7月から実施済み)
  • 企業等から資金提供を受けて行う研究・教育に関わる教職員については場合よりもリスクくことに留意し、特別研修を実施。
  • 企業等から資金提供を受けて行う研究・教育の開始にあたり、関連する教職員に倫理規定を遵守する旨の誓約書の提出を求める。
  • 企業等から資金れて研究・教育に、員側民間企業等双方がどのような姿勢を取るのがふさわしいかを行動規範倫理関係規程など、研究者サポート情報提供充実させる。
  • 内部通報周知徹底、機能拡充る。
大学本部によるガバナンス強化
  • 資金提供者共同研究相手し、遵守すべきルール理解促進し、周知強化
  • 設置及契約時部局審査において、契約など内容懸念がある場合は、本部相談できる仕組みを構築する。懸念がある事案は大学本部が開始の可否を客観的に判断する。
  • 大学本部に能動的に、資金の出入金などの運営状況チェックする権限を与える。チェックの結果、不適切と判断した場合、大学本部は講座の廃止を勧告できるようにする。
  • 部局は、契約・設置時に大学本部相談した事案について、営状況(経費出納、研究進捗など)本部報告
  • 本部は、必要じ、相手方団体へのアンケート実施するなど適正講座運営されているかを確認する
  • 部局毎年度行う、講座の評価結果本部報告すること義務化する。報告事項には設置・契約時懸念事項とされた進捗報告める。寄付講座は、終了時に行う成果の取りまとめ結果を本部に報告することを義務化。
契約・設置時の確認体制整備
  • 講座設立にあたり、部局における審査体制審査の流れする一定基準ガイドライとして本部策定する。(必要に応じて審査に外部者の参画を求めることも可能。大学本部の定めた基準を満たした上で、部局の実情を踏まえた審査体制とすることも可能。)
  • 部局審査時リスクベース・アプローチ(事前評価した事案のリスクに応じて、複数の対策に優先順位をつけ、効率的に実施する手法)づいたチェックリスト策定部局チェックリストづいて審査う。
  • 外部資金で雇用する教職員について、採用時における審査に第三者が参画するなど、公正性を担保する仕組みを導入。

活動開始後の部局の管理強化
  • 活動開始後の運営状況について、部局レベルでも規律が保たれる体制を確立。

  • 部局は、案件単位で入金・出金をモニタリングし、未収の場合は督促を行うことを徹底。(納入期限から一定期間を経過して未入金の場合は、事情を確認の上、本部へ報告。本部は、未入金の事情を確認の上、必要に応じて相手方へのヒアリング等を実施。)

(表1)改革策の具体的な内容(東大の資料を基に東京大学新聞社が作成)

 

 東大大学院医学系研究科の臨床カンナビノイド学社会連携講座に関する事案の調査で、教職員の倫理欠如のほか、講座運営管理や契約時の相手方確認の不備など、東大のガバナンス上の課題が判明したという。同事案について、問題があったと東大が認めたのは初めて。東大のガバナンス上の課題は、社会連携講座、寄付講座、共同研究、受託研究等の企業から資金提供を受けて行う研究・教育全般に共通する問題だとして、改革策を実行したとしている。

 

 臨床カンナビノイド学社会連携講座については、東大と連携していた日本化粧品協会などが共同研究中の高額な接待の強要や研究契約の一方的な解除があったとして、これに伴う損害の賠償を求め東大などを提訴している。東大は今まで同講座での事案への対応について、事実関係の確認中だとしていたが、東大は初めて一部教員の倫理意識の欠如とガバナンス上の課題の存在を認めた。

 

 東大は6月30日に社会連携講座等検証・改革委員会を新設。企業から資金提供を受ける講座などで、教員の倫理意識やガバナンス状況を検証し、具体的な改革の策定・実行を担う。調査対象者は「最優先で調査等に全面的に協力」するよう義務付けられていた。委員会は9月末をめどに改革策を策定する計画だった。11人の委員で構成され、座長は相原博昭理事・副学長が務めていた(表2)

 

(表2)検証・改革委員会の顔ぶれ。◎は座長、◯は副座長、◇は外部委員をそれぞれ示す(東大の資料を基に東京大学新聞社が作成)

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit


           
                             
TOPに戻る