インタビュー

2023年1月26日

【前編】「あったらいいな」が「起業しよう」になるまで 東大卒起業家2人にインタビュー WOTA・前田瑶介さん「目的を見つける大学生活を」

 

 

 「こんな製品やサービスが、あったらいいな」「起業して、社長になれたらいいな」といった、漠然とした希望を抱いている人は少なくないかもしれない。しかし、それがどのようにして「こんな製品やサービスをつくろう」「起業しよう」といった、具体的な決意に変わるのだろう。東大生時代に起業に挑戦し、現在も活躍する2人に、漠然とした希望が具体的な起業の決意に至る過程や、東大生へのメッセージを聞いた。(構成・小原優輝)

 

WOTA 水問題の構造的解決に挑む

 

 2014年設立。「水問題を構造からとらえ、解決に挑む」を標語に、生活排水の再生循環利用を可能にする「小規模分散型水循環システム」およびそれを実現する「水処理自律制御システム」の開発によって、水問題の根本的解決を目指す。

 

水道のない場所での水の再生利用を可能にする「WOTABOX」を含む、災害時用の屋外シャワーキット(画像はWOTA提供)

 

水処理に興味をもったきっかけ

 

 徳島県の「自然」と「インターネット」しかない環境で育ったので、幼い頃から生物学や、哲学に関心を持ちました。ビジネスにはあまり関心がありませんでしたが、自然とは何か、人間とは何かを考え続ける中で、アル・ゴア元米国副大統領の環境問題に関する講演を聞き、「環境問題の解決を通じて世界中の人と言葉を越えてつながりたい」という目的意識を得ました。

 

 中学生の時に、当時東大に在籍していた化学の下井守先生や経済学の丸山真人先生らが主催した、瀬戸内海の公害があった島の水問題に関するワークショップに参加し、何十年も終わらない土壌・水質浄化に奮闘する方々の姿を拝見し、自分でも水質浄化の研究を始めました。

 

高校生までの活動

 

 研究を始めて気付いたのが、水質浄化のプラントは複雑かつ巨大で、自分で今すぐ始めようと思っても難しいということでした。環境問題は皆の問題なので、皆で取り組めるようになる必要がある。しかし、それが過剰に複雑で間接的な努力しかできなければ、皆が主体性を持つのは難しい。一方、ごみを減らしたり、節水したりするだけでは、問題解決に時間がかかってしまう。そこで、もっと簡便で直接的なアプローチが必要だと考え、水質浄化事業を構造から変える必要があると思ったのです。そんなわけで、家庭で手に入るような素材から水処理に使う物質を取り出す研究に取り組んでいました。

 

東大での活動

 

 入学した頃の私の関心は、水から、インフラ全般に広がっていました。人には関心を広げる時期と深める時期があると思うのですが、私の学部生時代は、広げる時期だったと思います。その中で①世界中のインフラを目にするため、さまざまな都市と社会階層を訪ねる②最終的には何かを「つくる」と思っていたので、多様なモノづくりの現場に足を運び、働いてみることで、さまざまな「つくる」を学ぶ③物理的なインフラだけでなく、医療や福祉、教育などのソフトなインフラについても学ぶため、教育学や社会学、農学、経済学などを学びました。

 

起業へ

 

 入学当初はビジネスをしようとは考えていませんでしたが、いろいろな「つくる」に関わる中で、自然と仕事を依頼されるようになり、「会社」があった方が便利だったので、結果的にいくつか起業をしました。学部卒業後は、関心を深める時期に入り、さまざまなインフラを横断的に見て・つくって・考えるというサイクルを繰り返すうちに、「こういう順番でやりたい」「世の中はこうなるべきである」「こういう風に世の中を変えてみたい」「その結果、世界中の人とつながりたい」と考えるようになりました。その中で、まず人生をかけて水問題に取り組もうという考えに至ったのですが、大企業でいきなり新規事業を任せてもらえる環境やご縁が無く、結果自然とスタートアップという選択に至りました。

 

東大発スタートアップについて

 

 まず、東大や日本という国において、起業に対する支援は豊富にあると、個人的には感じています。「失われた30年」と言われる背景には、停滞し続ける日本に漂う閉塞感を「誰かが何かの形でブレークスルーを起こしてほしい」という期待が高まっており、それが昨今のベンチャーやスタートアップ的なものに対する興味関心につながっているのではないかと思います。起業に関する支援や施策は一種の投資で、それがいつ結実するかは、タイミングの問題です。ですので、その中でわれわれにできることは、ただ一人ひとりが全力を尽くすだけだと考えています。

 

学生へのメッセージ

 

 まず、東大に何か目的があって入った方は、全力でその目的の最大化に向かってください。一方、特に明確な目的なく東大に入った方は、焦る必要はないので、目的を見つけること自体に時間を優先して使うことをおすすめしたいと思います。そのときに、手段に制約を設けないこと。例えば、「起業など現実的でない」などと思わないこと。そして、実際に自分の目で見て、耳で聞いて考えること。つまり、身体を使って考えること。この二つが、大切だと思っています。

 

前田瑶介(まえだ・ようすけ)さん(WOTA代表取締役兼CEO) 徳島県出身。理I、東大工学部を経て、18年同大学院工学系研究科修士課程修了。修士(工学)。高校時代から水処理の研究に取り組み、大学時代に世界中の水問題を見て回り、水問題の構造的解決に挑む

 

 

【後編】

【後編】「あったらいいな」が「起業しよう」になるまで 東大卒起業家2人にインタビュー アイデミー・石川聡彦さん「留学する感覚で起業に挑戦を」

 

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