就活

2023年3月11日

【新しい働き方・海外編】日本を飛び出しアメリカで働く 東大からNASAへ

 

 近年、働き方や仕事観は大きく変わってきている。感染症対策でデジタル化が一気に進み、リモートワークは珍しくなくなった。企業に勤めながら副業をする、個人がスキルを身に付けてフリーランスになる、大幅な人口減少が見込まれる日本を飛び出して海外で働く、などの話も耳にする。就活生の中には仕事内容だけでなく、どのような働き方ができるかを重視している人も多いだろう。「今どきの働き方」四つを取り上げ、その実態やメリット・デメリットを聞いた。今回は「海外」編として、アメリカで働く小野雅裕さんに取材した。(取材・原亘太朗)

 

小野雅裕(おの・まさひろ)さん NASAジェット推進研究所(Jet Pro-pulsion Laboratory)Research Technologist

 

夢を追って海を渡るという選択肢

 

 2020年7月、青天の霹靂(へきれき)のごとく襲いかかったパンデミックに世界が慄く(おののく)中、火星ローバー「Perseverance」(忍耐)を載せた宇宙船がフロリダの空にロケット燃料の白い弧を描き、火星への軌道に乗った。アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査ミッション「Mars2020」だ。小野さんは、NASAジェット推進研究所(JPL)の研究員としてPerseveranceの自動運転プログラムの開発を行った。

 

 1977年に打ち上げられ、12年にわたる孤独な宇宙航海を経て45億キロの彼方(かなた)に浮かぶ海王星に到達した宇宙探査機・Voyager2を見て、幼心に宇宙工学へと引かれた小野さん。05年に東大工学部航空宇宙工学科を卒業し米マサチューセッツ工科大学(MIT)に入学した。12年に同航空宇宙工学科博士課程および技術政策プログラム修士課程を修了し、JPLの仕事に応募するも不採用となり一旦は慶應義塾大学の助教になった。その後、今度はJPLからオファーが届き再び渡米。13年から米国カリフォルニア州にあるNASAのJPLに勤め、数々のプロジェクトに関与してきた。

 

1日の過ごし方

 

 職場環境で大きく異なるのは組織構成だという。JPLには日本と同じく部や課はあるものの、それらの役割は異なる。部や課の単位で仕事はしない。あくまで人を管理する単位に過ぎず、部や課とは別に存在するプロジェクトという組織単位がそれぞれの部や課から必要な人を引き抜いてチームを作り、仕事を遂行する。最近は仕事量に対して人が足りず、プロジェクト同士で優秀な人を奪い合っているだけでなく、宇宙開発の民間企業や大手IT企業との人材争いが激しいと話す。

 

 組織内の評価基準は日本の企業と大きくは変わらず、専門的なスキルセットとリーダーシップやチームワークの能力が評価される。研究職であれば、論文の質に加えて自身の研究が役立つことを納得してもらえるように研究を面白く伝えられるのも重要な能力だという。就活で米国が日本と大きく異なるのは給料の交渉があることだ。特に人材競争の激しい産業では交渉力が就活生にあるので、複数の企業からオファーをもらった上で給与などの交渉を持ちかける。そのため、米国では同時に入社をしても能力によって給料が違うことがあると話す。

 

 JPLで働くメリットとして「外国人で日本人なまりの英語を話す僕も変な目で見られることなく普通に働ける」ことを挙げる。JPLでは、携われるプロジェクトに制限が掛かるもののグリーン・カードがなくても働くことができる。小野さんの今のチームもメンバーの半数以上が米国の外から来ているという。一方、デメリットは官僚的で煩雑な手続きが多いことだ。「大きい組織ほどルールが必要なのはしょうがないものだけど」と笑う。

 

 「MITに進学した時に協力的な先輩に出会えたのもあったし、中須賀真一先生(東大大学院工学系研究科)の研究室に行けたのも運が良かったです」。努力だけでなく運の要素も大きい人生は、逆算して方程式を解くようには生きられない。米国に行く前の自分に何かを伝えられたら何を伝えるか聞くと「人生は波に揺られるクラゲのようなもの。波には逆らえないけれど、弱い力でも20年、30年同じ方向を目指して進み続ければ、いつか何かにはなれる。それまで粘り強く諦めないことが何より大事」と話した。

 

 小野さんは現在、抱える仕事の一つとして、土星の衛星エンケラドスにうなぎ型のロボットを送り込み、地下に眠る内部海の調査を行う「EELS」システムの開発プロジェクトを率いる。星間空間を突き進むVoyager2のように、幼少期の夢への「ボヤージュ」は続いている。

 

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