5月8日、駒場Ⅰキャンパスの21KOMCEE WESTレクチャーホールで「学術会議の法人化法案への懸念」と題して前日本学術会議会長の梶田隆章卓越教授・特別栄誉教授(東大宇宙線研究所)が講演を行い、国会で現在審議されている日本学術会議法改正案について懸念を示した。

講演会は國分功一郎教授(東大大学院総合文化研究科)の研究室が主催し、東大立て看同好会が共催。参加者の多くは学生で、定員200人のレクチャーホールは約7割が埋まり活気のある雰囲気となった。講演の冒頭では、立て看同好会の学生が国会の情勢について触れ「明日(5月9日)の衆議院内閣委員会で改正案が強行採決されるか否かという、緊迫した状況にある」と述べた。

梶田卓越教授は初めに、今回の改正案が日本学術会議のみならず日本の学術界に大きな影響を与えるのではないかと危機感を表明。その上で参加者に、日本学術会議の問題について知ってほしいと話した。梶田卓越教授はその後、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議の役割を解説。政府への助言機能や海外のアカデミーとの国際交流を挙げた。その上で現状は政府の組織であるため、国会への助言機能がないことを指摘。法人化して独立するにもかかわらず、法案にはこの機能が定められていないと話した。
続いて法案の問題点について指摘。①法人化が日本の学術発展に寄与するか不透明であること、②日本学術会議の基本原則が変質しかねないこと、③法人化の理由が不明確であること、④国による多重の監督が制度化されること、⑤本来内部で決めるべき会員選考に外部が関連すること、⑥財源の弱体化、⑦学術会議が原則公開なのに、秘密漏洩について罰則規定があること──などの問題点を指摘した。その上で今回の法案は日本のみならず世界から注目を受けていているとした。各国のナショナルアカデミーの集合体、国際学術会議から5月6日に「日本政府の、日本学術会議の運営と会員選出手続きに干渉しようとする度重なる試みに対し深い懸念を表明する」と書かれたメールを受け取ったという。
開始から1時間ほどで質疑応答に。会場から次々に質問が出て、1時間ほど続いた。
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弊紙6月号の報道特集では、日本学術会議の法人化問題について取り上げる予定です。その際に今回の講演会についても詳報する予定です。また、この問題に関する学内の多様な意見を集めるため、小社では東大の教員の方にメールをお送りしアンケートを集めております。ご協力いただけますと幸いです。なお、小社で連絡先が分からない方など、一部の教員の方にはメールを送信しておりません。東大の教員の方で回答をご希望される方は小社メールアドレスnp@utnp.orgまでご連絡ください。