学術ニュース

2024年4月7日

陰謀論やスピリチュアリティが反ワクチン的態度のきっかけとなった可能性 コロナ禍におけるツイートの分析により解明

 

 鳥海不二夫教授(東大大学院工学系研究科)らによる研究グループは、コロナ禍におけるワクチンに関するTwitter上のツイート(当時、現・X上のポスト)を分析し、新たにワクチン反対派になる人の特徴を明らかにした。成果は2月5日付でドイツの計算社会科学に特化した査読付き学術誌『Journal of Computational Social Science』に掲載された。

 

 パンデミック下で、反ワクチン的態度は、集団免疫の獲得を妨げ公衆衛生に対する脅威になる。反ワクチン的態度を持つ人々の特徴は明らかになりつつあるが、人がワクチン反対派になるきっかけに関する知見は不足していた。さらに、ワクチン反対派が政治的影響力を持ちつつあることから、日本での反ワクチン的態度の拡散が持つ政治的含意を明らかにする必要があった。

 

 今回の研究では、まず21年1月から12月までに収集された「ワクチン」を含む約1億件のツイートを機械学習を用いて分類。「ワクチン反対ツイート」を多くつぶやいたりリツイートしたりしているアカウントを「ワクチン反対ツイート拡散アカウント」として定義し、これを多くフォローしているユーザーを「ワクチン反対派」として定義した。

 

 分析は主に3つの視点から行われた。第1の分析は、ワクチン賛成派と反対派の比較による、反対派の特徴の解明。ワクチン反対派は賛成派と比べて政治的関心が強いこと、その多数はリベラルな傾向を見せるユーザーが占めることが明らかになった。

 

 第2の分析は、ワクチン反対派になる「きっかけ」の解明。コロナ禍以前から反対派であったユーザーとコロナ禍以降に新たに反対派になったユーザーの比較を行った。これにより、既存の反対派より新規の反対派には政治的な関心が弱いことが明らかになった。新規の反対派は陰謀論やスピリチュアリティに関する単語がTwitter(当時、現・X)のプロフィール文に頻繁に表れることもわかり、陰謀論やスピリチュアリティが反ワクチン的態度を持つきっかけとなった可能性が示唆された。

 

 第3の分析は、新たにワクチン反対派になったユーザーの政治的特徴の解明。22年3月から9月までの政党やその党首のアカウントのフォロー率の分析を行った。これにより、新規の反対派は立憲民主党やれいわ新選組、日本共産党をフォローする傾向が弱い一方、参政党(ワクチンに依存しない治療体制を追求する政党。20年に結成された)のアカウントをフォローする率が急上昇していることが分かった。陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとして反ワクチン的態度を持った人々が、ワクチンの運用に慎重な姿勢を見せる参政党への支持を高めた可能性が示唆された。

 

 分析の結果から、コロナ禍における新たなワクチン反対派は、政治的な傾向をベースにしたものではなく陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとしたものであることが示された。こうして反ワクチン的態度を持つようになった人々がワクチン運用に慎重な姿勢を見せる参政党への支持を強め、22年参院選での参政党の議席獲得に貢献した可能性がある。

 

 今後は、反ワクチン的態度と陰謀論やスピリチュアリティとの連関を断つことで公衆衛生に対するリスクを軽減する方法論が求められる。また、本研究はツイートの観察的研究であるため、投票行動との因果効果の厳密な検証のためには実験や社会調査を組み合わせた分析が必要となる。

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