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2015年9月9日

東大推薦入試の概要と対策 深い探求心持つ人材発掘へ

東大は2016年度入試から学部教育改革の一環として、後期試験を廃止して推薦入試を導入する。推薦入試は15年度時点で国公立大学の95%が導入しているが、東大では初めての試みだ。東大はどのような学生の獲得を目指し、それに対して受験生はどういった準備をすればいいのか。推薦入試の概要を見ていこう。

 

推薦入試図表1_推薦入試の道のり Sheet1

 

面接や討論も実施

東大は2016年度入試から後期試験を廃止し、新たに推薦入試を導入する。推薦入試の基本方針として、学部学生の多様性の促進および学部教育の活性化を挙げ、「本学で教育・研究が行われている特定の分野や活動に関する卓越した能力、もしくは極めて強い関心や学ぶ意欲を持つ志願者」を求めるとしている。入試の得点にとらわれずに自分の興味、関心を追究する人材の発掘を目指す。

 

後期試験も推薦入試も、前期試験とは異なるタイプの生徒でも入学を可能とする入試だ。しかし推薦入試とこれまでの後期試験の手法は異なる。後期試験では個別試験の得点で合否を判定したが、推薦入試では、提出資料・書類により第1次選考を行い、その後、面接や集団討論、また小論文といった試験とセンター試験を課す。また後期試験は理Ⅲを除く全科類で一括に選抜し、合格者が進学先を選んだが、推薦入試は後期課程の学部ごとに選抜する。

 

各学部の募集人員は法学部・経済学部・文学部・理学部・農学部が10人程度、教育学部・教養学部・薬学部が5人程度、工学部が30人程度、医学部医学科が3人程度、医学部健康総合科学科が2人程度だ。合格者が募集人員に満たない場合、残余の募集人員は各学部に対応する科類の前期試験の募集人員に繰り込まれる。追加の募集人員の具体的な人数は発表しないとしている。

 

学生の多様性を促進する観点から、少なくとも志願時点での地方出身者や女子生徒の割合を高めるべく、各高校の推薦人数は男女各1人ずつとされた。東大の前期試験、私立大学や海外の大学との併願は可能だが、他の国公立大学の推薦入試やAO入試との併願は認められていない。

 

推薦入試は11月2~6日に学校長が書類を提出する。これらの出願書類は東大のウェブサイトに掲載のものを印刷して使用する。提出資料・書類による第1次選考の結果は12月1日に発表される。

 

第2次選考は、提出資料・書類、面接などとセンター試験の結果を基に行う。面接などは12月19・20日、センター試験は1月16・17日に実施される。センター試験では入学後の学修を担保する基礎学力を確認するために、医学部医学科で900点満点中概ね780点、その他の学部学科で概ね720点を得点の基準とした。

 

最終合格者は2月10日に発表される。10日は前期試験の第1次選抜合格者発表でもあり、両方に合格する可能性もある。しかし、推薦入試の入学手続を行うと、前期試験は受験してもその合格者とはならない。合格発表時に第1次選考、第2次選考の結果が個人別に通知されるが、その具体的方法は検討中という。

 

第2次選考としては個別面接などを課し、法学部はグループ・ディスカッションも実施するとした。文学部・医学部はプレゼンテーションを課し、文学部は小論文試験も行う。各学部とも、特定分野での卓越した実績や能力に加えて思考力、コミュニケーション力を求める。面接などは原則1日間で行うが、文学部・教育学部は2日にわたって実施する。

 

推薦入試の合格者は希望進学学部に対応した、前期課程の各科類に所属する。なお、工学部では出願時に機械・流体・設計・航空宇宙を学ぶ領域や物性・電子・ナノマイクロ・分子を学ぶ領域、数理・情報・知能・ロボットを学ぶ領域といった五つの学修領域のうち、希望進学学科と関連する領域を一つ選択する。

 

各分野に特化した人材育成のために、各学部が前期課程で専門科目の講義や演習の受講を認め、理系学部では各学部の研究施設での実習も行う。法学部や農学部、薬学部では後期課程で大学院の授業科目の受講が予定される。初年次から専門科目の履修について個別に相談、支援する教員も置かれる。

 

推薦入試図表2_求める学生像 Sheet1

 

興味を追求して

東大は推薦入試募集要項で学部ごとの求める学生像を示した。例えば法学部は「実社会の諸問題に強い関心を持って解決すべき課題を設定し、その解決に主体的に貢献する学生」、工学部は「自ら問題を設定し、問題に関連する広い分野の学習を自律的に行い、異なる文化圏の人々とコミュニケーションをとる能力を持ち、社会のさまざまな課題の解決に貢献する学生」と提示した。東大全体として、諸問題への関心、課題を設定して主体的に解決する能力、コミュニケーション能力、グローバルに活躍できるだけの語学力、社会への貢献を受験生に求めた。

 

第1次選考の提出資料・書類の例には研究活動や社会貢献活動をまとめた論文や科学オリンピックの成績、語学試験の証明書が挙げられた。志望者は英語などの語学試験の受験や、「特定の分野や活動に対する卓越した能力、極めて強い関心や学ぶ意欲」を客観的に証明する研究活動を行い、それをまとめることが求められる。

 

本部入試課は東京大学新聞社の取材に対し、推薦入試の受験者には、高校時代に培った関心や意欲を基盤に自分の能力を発揮してほしいと回答している。推薦入試の受験を考える学生は、高1~2のときから諸問題や専門分野への強い関心を持ち、深く探求することが必要となる。多くの学部が語学力を要求しており、語学学習も欠かせない。入試本番では高校での探究活動や志を自分だけのものとせずに提出書類や面接試験で積極的にアピールしなければならない。推薦入試の導入1年目の今回は、受験生も戸惑うことが多いかもしれないが、受験生には独自の才能を発揮して合格をつかみ取ってほしい。

 

(文・関根隆朗)

 

この記事は、2015年9月8日号(受験生特集号)からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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