東大ではどんな人に出会い、何に挑戦できるのか。今回は、東京大学フィルムジカ交響楽団の団長を務める竹内彩音さん(文Ⅱ・2年)に話を聞いた。高校時代の部活動や受験勉強で培った経験を振り返りつつ、大学生活は仲間との信頼関係を大切にしながら、自分のペースで学びや挑戦を重ねられる貴重な時間だと語る。(取材・ゼリビ・カミル)

──東大を志望した理由を教えてください
1歳下に妹がいて、私立大学だと経済的な負担が大きいので、できれば妹が自由に大学を選べるように、私は少なくとも第1志望は国立にしようと思っていました。自分のリミットを試したいというか、一番上を見ておきたくて、母にも「ちゃんと上を見て挫折しなさい」と言われました。自分が心地良い環境にいるだけじゃなくて、ちゃんと挑戦するのも大事だなと思いました。東大を受験したのは、うちの高校は進学校で、国立の中でも東大を目指す人がすごく多かったからです。私は塾に行っていなかったので、その分、高校の勉強や高校で提供されるサポートを受ける必要がありました。高校では東大を目指す人中心に補習や講習、授業などをたくさんやってくれていたので、そういうサポートを受けられるなら、東大が一番フィットすると思って東大を受験しました。
──どのように時間の管理をしていましたか
重要だったのは、私が朝に勉強していたことです。そのため、朝学校に行って、「これやらなきゃ、あれやらなきゃ」ということがどんどん積み重なり、下校するまでには終わらなくてやるべきことを持ち帰ることになります。それでも、持ち帰ったタスクも寝るまでをその日の延長としてカウントし、ちゃんと終わるようにしていました。その日1日を無理やり延長させる、というのが私の時間管理の特徴だったと思います。私はすごく早寝早起きで、9時半に寝て、早い時は3時や3時半に起きて、朝2、3時間くらい勉強できるように時間を取っていました。
──高校時代と今のスケジュールの違いはありますか
高校の時のスケジュールは非常にルーティーン化されたものだったのですが、大学だとそうもいきません。今夜はこの宿題をやる、今夜はこの練習をやる、みたいな生活なので、朝も起きられなくなっちゃうし、勉強する時間が空きコマや休日とかに固まっちゃっているんです。ちょっとそれが残念ですね。
──受験期の頑張りや経験に通していると感じる部分はありますか
具体的にこの技術や能力があるとは言いづらいのですが、何かを頑張った経験は必ず将来に生きると思っています。高校時代に部長を頑張って、行事にも積極的に参加して、すべて手を抜かずに全力で取り組みました。その中で仲間を作れたからこそ、受験期にはその仲間と一緒に頑張ることができました。また、受験を頑張ったからこそ、当時受験期に頑張っていた自分が誇れるような、目指したいと思える生活をしないとというモチベーションが生まれて、大学でもちゃんと生活して、何かを頑張りたいという気持ちになれたんじゃないかなと思います。身についたのは特定の技術やスキルというよりも、メンタル面の強さだと思います。何かを頑張った自分は「これができる」と自信がつくので、「これもできるはず」と自分を信頼して、新しいことに挑戦しようと思える気持ちが芽生えたんじゃないかなと思います。
──竹内さんにとって、東大とはどんなコミュニティーですか
東大を一言で表すことはもちろんできませんが、色んな人がいます。私が身を置いているコミュニティでは、高校に似ている良い意味での居心地の良さがあります。高校では入学に内申点が必要だったので、優等生、真面目に勉強する人が集まりがちですが、大学では色んな人がいます。テスト一発で点を取れば入れます。でも私がいるコミュニティでは、真面目な人が多くて、大学生だからといって羽目を外しすぎない人が集まっている気がします。
特に私が入っているオーケストラでは、組織としてみんな役職を持っていますが、その仕事を真面目にこなし、みんなで支え合いながら、役職に関係ない場面でも仲良くできています。非常に健全で純粋な人間関係が作れていて、世間でよく聞く大学生とは違うなと思います。小さい頃に思い描いていた大学生活よりも、地に足のついた健全な生活を送っていると感じます。
──団長として率いているオーケストラのやりがいは
私が今団長を務めている東京大学フィルムジカ交響楽団は、団員が180人ぐらいで、学部生1年生から4年生、大学院生も少しいて、規模が大きいのでリーダーを務めるのはすごく大変です。いろんな意見があって、全員が今の方針に納得できるわけじゃない。団長の仕事は、何かトラブルがあったら責任を持って対処することもそうですが、その団員が今どうなっているか、どういう仕事をしているか、今何で困っているかをちゃんと気にかけて心配して、いざとなったらサポートに回るのも仕事だと思っています。仕事面だけでなく、メンタル面でもサポートしたいと思っています。出来ているかどうかは分からないけど、仕事で大変なことがあった人が話していたら話を聞いてあげたり、愚痴を聞くだけですけど、相談役として頼りになるように努めています。団長として努めていきたいというのはあったし、団長としての仕事を通じて、みんなとの信頼関係を築くのはすごくやりがいがあると思います。
──厳しいスケジュールでプレッシャーや不安を感じる時どのように心を整えていましたか
高校時代は部長を務め、今も団長としてオーケストラを務めています。リーダーとして、団員や部員など内部の人をまとめることはもちろん、団の外の人との調整や交渉も必要になります。そうしたことは心の負担になることもありますが、私は人が大好きで、オーケストラの中で友達や仲間を作るのが好きです。不安や悩みを相談できる相手を作ることも大事にしており、高校時代も人に相談して乗り越えてきたと思います。 自分の不安やプレッシャーは漠然としていることが多いですが、それを整理して、何に対して不安なのか、何に対してプレッシャーなのかを考えて、言語化することで、不安は半分ぐらい減る気がします。何が問題なのかを突き止められると、8割方その問題は片付いていると思います。
──受験生へメッセージをお願いします
受験勉強をするときに、何のために勉強しているのかと考える時があると思います。私の場合は、知識や価値観を身に付けるためのプロセスをとても大事にしていました。数学の公式が大事だからというよりも、それを身に付ける過程で、自分がどうスケジュールを組み、どう勉強に取り組むかという過程を重視しました。自分にとってポジティブな経験になるような勉強をしてほしいです。人生の中で、これほど勉強に向き合い、自分のためだけに時間を使うのは大学受験だけです。100パーセント自分のために時間を使えるという楽しさを感じると、勉強のつらさも和らぎます。その時間を大切にして、だからこそ楽しんでほしいと思います。










