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2021年8月2日

【寄稿】東大オケ 2年ぶりのコンサートツアーを8月に開催

 現在、夏の公演を控える東京大学音楽部管弦楽団。公演の内容や意気込みについて、団員から寄稿してもらった。(寄稿=宮本千央、東京大学音楽部管弦楽団)

 

※8月7日団内新型コロナウイルス感染者発生のため、神奈川・関西公演は開催中止となりました。

 

 

 私たち、東京大学音楽部管弦楽団(通称「東大オケ」)は今年の夏、サマーコンサート2021と題した演奏会を行います。

 

 東大生のみで構成される唯一のオーケストラである東大オケは、トップクラスの指導者陣の下で、大学の式典での演奏や日本各地のホールでの演奏を行ってきました。昨年創立100周年を迎えた、まさに伝統と実力のオーケストラです。

 

 そのオーケストラの公演が、夏に各地で開催されます。8月4日の長野公演から始まり、8月6日に東京オペラシティ、8月9日に神奈川県民ホールと東京近郊での開催を経て、8月11日の関西公演、ザ・シンフォニーホールにて今回の演奏会を締めくくります。昨年度に予定していた定期演奏会、コンサートツアーはいずれも中止を余儀なくされ、今回が2年ぶりのツアーコンサートです。

 

 

 今回の長野公演について担当外務の北山遼(文・3年)は、

 

 「今回のサマーコンサートは2年ぶりの開催、しかも昨年度の活動の大半が中止になってしまった状況からの再出発となります。その開幕を故郷長野で迎えるのは非常に感慨深いです。今回のメイン曲は《悲愴》。実際に演奏することを通じて、この作品には理不尽なものへの怒りが込められているように感じています。コロナ禍においてさまざまな憤りややるせなさを感じる人も多いでしょう。演奏者と聴衆という立場を超えてこの作品を分かち合えたらと思います」と話していました。4公演の開催に向けて、団員一同意気込み十分に、日々の練習に励んでいます。

 

 今回披露する曲は、

 

・ドヴォルザーク 序曲『謝肉祭』作品92

・レスピーギ 交響詩『ローマの噴水』

・チャイコフスキー 交響曲第6番ロ短調作品74『悲愴』

 

の3曲。曲ごとに違いつつも夏にぴったりの雰囲気が楽しめるプログラムとなっています。演奏会の最後を飾るのは、19世紀のロシア音楽を代表する作曲家の一人として知られているチャイコフスキーの最晩年の傑作。哀愁を感じさせる美しい旋律や濃密な響き、確固とした力強いリズムといった、ロシア音楽の持つ特徴を存分に味わうことができる一曲です。

 

 この曲はチャイコフスキー自身の作曲家人生の集大成として書かれ、宿命に翻弄され続けた彼が抱いた感情の激しさ、切なさ、静けさに魂を揺さぶられる名曲です。現在さまざまな思いを抱える状況の中でこの曲をお届けすることで、この曲の味わいがより深く増していくのではないでしょうか。思いを巡らせながら、会場にてお聴きいただけると幸いです。

 

コンサートマスターからのコメント

 

 今回の演奏会は、コロナ禍による活動休止を経た東大オケの2年ぶりのコンサートツアーです。今回はドヴォルザーク、レスピーギ、チャイコフスキーの3人の偉大な作曲家の曲を演奏します。ドヴォルザークの謝肉祭序曲では煌(きら)びやかな雰囲気の裏にあるノスタルジーを、レスピーギのローマの噴水では4つの噴水の場面を通じて日出から日没までの美しい色合いと温度感を、チャイコフスキーの悲愴では絶望の淵に立たされた人間の憧れと慟哭(どうこく)を表現できたらと考えています。クラシック音楽に精通した方から普段クラシック音楽を聴かない方まで共感していただける素晴らしい3曲ですので、ぜひホールで生の感動を味わっていただけたらと思います。

 

 クラシック音楽というのは世俗と離れた別世界で完結しているものだと考えているので、実生活と音楽を結びつける行為は本来好ましくないのかもしれません。しかし、大切なものを奪われる経験を自分も含めて多くの方々が味わっている今日において、チャイコフスキーの悲愴が与える感動がいつも以上に大きくなっていることを感じています。チャイコフスキー自身が味わったであろう絶望や孤独と、それらをなんとか跳ね返そうとしてもがき苦しむ様が音楽の形で昇華されており、現代に生きる我々はその音楽に共感しているのです。コロナ禍によって、時空を超えたクラシック音楽の偉大さを改めて見せられているような気がします。

 

 曲の素晴らしさや音楽のかけがえのなさをホールでお客様と共有できることを団員一同楽しみにしております。特別な思い入れとこだわりの詰まった演奏ができるよう、精一杯努力しますので、ぜひご来場ください。

 

※当公演は、神奈川公演と関西公演で収容率50%、東京は7月11日までの販売分収容の形で全4公演開催予定です。

 

【記事修正】2021年8月2日午後3時39分 寄稿者名を修正しました。また、末尾に収容率に関する補足を加えました。

【記事修正】2021年8月8日午前10時27分 神奈川・関西公演の中止の旨を追記しました。

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