2024年、金沢駅が終点だった北陸新幹線が敦賀駅まで延伸され、一躍話題となった福井県。県民は観光客数増加などの開業効果に沸いたが、まだ福井の魅力についてよく知らない人も多いはず。福井出身の記者が選んだ四つの料理・食品について、その魅力や歴史、PR活動などについて紹介する。記事を読み現地で料理を食べたくなったら、ぜひ福井を訪れてもらいたい。(執筆・小原優輝)
たくあんの煮たの

ただ単にたくあんを煮たものではなく、古くなった薄切りのたくあんを複数回煮て「塩抜き」をし、その後だし汁やしょうゆなどで味を付けて煮て作ったもの。古くなったたくあんでも無駄にせずおいしく食べられるように、という家庭の知恵から誕生したと考えられる。
既製品を手間暇かけて加工するので「贅沢(ぜいたく)煮」「大名煮」とも呼ばれるが、味はきわめて素朴。食感はたくあんを柔らかくしたようだが、風味は大根の煮物に近い。だしが良くしみこんでおり、実にほっとする「ザ・日本の家庭料理」である。
当然ごはんにも合うわけで、古くなったたくあんがなくともスーパーでこれを買ってきて、おかずにすればもう無敵である。
ところで、有名な米の品種といえばコシヒカリであるが、県民のあいだでは「コシヒカリは福井の米」という認識。実は福井県の農業試験場で誕生した品種なのである。しかし、有名になったのは新潟県産コシヒカリが全国に評価されたことがきっかけであり、そのイメージが定着したため、福井県は「いちほまれ」という「コシヒカリの上を目指して創った」新たなブランド米を開発して勝負に出ている。「オカズがいらないくらい美味しい」そうだが、米だけでは寂しいなら、贅沢煮のような質素なおかずが適役かもしれない。
へしこ

「へしこ」。初めて聞いてどんな食品か想像できる人はほぼいないだろう。塩漬けしたサバをさらに半年ほどぬか漬けにしたものであり、その名の由来は諸説あり確定していない。
主に県南部の若狭地域の料理で、福井市や鯖江市を含む嶺北(れいほく)地域では比較的なじみが薄いものの、給食に「へしこチャーハン」として出てきていた。当時は「謎のくどい(福井弁:塩辛い)魚」という認識だったが、今思えば、心地よい塩辛さとぬか独特のクセ、それにサバのうま味が合わさったその身を箸でつかみ、チャーハンでなく白い米と合わせてもう1回味わってみたいものである。お酒を飲む人ならおつまみにしてもいいだろう。どちらかと言うと大人が好みそうな味だ。
若狭の特産品としてブランド化が進められ、「へしこの町」美浜町では「美浜へしこ組合」が発足、「へしこちゃん」というゆるキャラが誕生した。たるに漬け込まれた直立二足歩行の青いサバのキャラで、2009年にはゆるキャラアワードでグランプリを受賞。ゆるい見た目の彼女だが、味は至って真剣勝負。大人向けだが町の看板となるほどの魅力を備えた「へしこ」を、焼いてごはんと一緒に、あるいはお茶漬けにのせて、チャーハンに入れて、パスタにしてどうぞ。
越前そば・おろしそば

そばといえば長野県が有名かもしれないが、福井のそばも負けてはいない。越前そばの食べ方として県内でもっともポピュラーなのが「おろしそば」。ゆでたそばに冷たいつゆをかけて、そこに「越前辛味大根」の大根おろしやネギ、かつお節などを乗っける。そして食べる。シンプルな料理だが、のどごしの良いそばに、出汁のきいたつゆと、さっぱりしていながらキリリと辛い大根おろしが合わさり、これはもう参りました、ずるずる、ずるずると麺をすするごとに、口の中をおいしさの大名行列が駆け抜けてゆくのである。冷たいが、福井では季節を問わず、年越しそばとしても食べられている。
現在ではさまざまな種類のそばが栽培されているが「越前そば」と総称され、「小粒ながら味が濃く、香りに優れている」ことが特徴とされる。県内の製粉企業はすべて、風味や甘味が損なわれないよう、石臼でひいてそば粉を作っており、どの店に行ってもおいしいそばを食べることができる。昭和天皇がおろしそばを食べた際「越前のそばは大変おいしかった」と話したことから、全国的に有名になったこともある。
1473年に守護大名・朝倉孝景によって一乗谷でそばの栽培が始まり、はじめて麺状のそばが作られたのは1601年。400年以上の歴史を誇る越前そばに対する県民の愛の深さからか、2020年には県が福井新聞社などの協力のもと、そば店を探す機能を備えたポータルサイト「ふくいそばOnline」を立ち上げた。名物ソースカツ丼との2点セットでいただける店もあるので、同サイトで名店を探し当て、こってりとさっぱりの波状攻撃を楽しんでもらいたい。
水ようかん

ここで特定の企業の宣伝はできないのだが、それでもあのCMの歌詞をここに書きたくなってしまうくらい、県民にはなじみ深いお菓子「水ようかん」。味は普通のようかんと似たようなものだが、ぷるぷるしていて、食感はゼリーとようかんのハーフのようである。何といってもこの食感が良い。甘くて濃厚なのだが練りようかんほど重くなく、つるんと何切れでもいけてしまう。そのまま木のヘラで切り分けて食べることが多い。
冷たいお菓子だから夏のものと思われるかもしれないが、県内では「冬の食べ物」という扱いだ。寒い冬に食べるのは、元々大正~昭和時代に奉公人が年末の帰省時に持って来た練りようかんをかさ増しして作っていたもので、水分が多く保存がきかないため冬のうちに食べきっていたからだという。
全国的には夏に食べる場合が多いが、福井では「こたつに入りながら食べる」冬の風物詩だ。年末年始に実家に帰省したら、1枚の大きな水ようかんを家族みんなで切り分けて食べる。一人暮らしの人にとっても、おいしいのに冬にしか売っていない特別なお菓子だ。そんな経験も含めて「大好きなふるさとの食べ物」なのかもしれない。











