インタビュー

2021年4月1日

「要領良く」を疑ったゼミ生活 瀧本ゼミ企業パート卒業生インタビュー①

 入学・新学期を迎えた学生にとって最大の関心事の一つが所属するサークル・団体選びでしょう。スポーツや音楽、学術、娯楽など多様な活動を行うサークル・団体が存在する中、ゼミに所属するという選択肢を考えてみてはいかがでしょうか? 本企画では東大の名物ゼミ「瀧本ゼミ」企業分析パートの卒業生インタビューを3回にわたってお届けします。

(寄稿=瀧本ゼミ企業分析パート)

 

  

 「コモディティになってはいけない」「自分の頭で考え続けなくてはいけない」ーー若者に奮起を迫る言葉で、投資家の経験で培った哲学を伝え続けた瀧本哲史先生。

 

 先生は、2019年わずか47歳で逝去されましたが、現在も瀧本ゼミは活動を継続しております。少しでも多くの新入生の方に、瀧本ゼミの活動を知っていただきたいと思い、卒業生の瀧本ゼミへの思いをインタビュー形式でお伝えしています。第1回の今回は、東大経済学部を卒業後、現在は株式会社オトバンクで取締役を務める飯泉早希様に話を伺いました。

 

 

 瀧本ゼミ 企業分析パートとは……4000近い上場企業の中から伸びる企業を選び出し、投資判断を下すことが主な活動。様々な投資判断・ゼミ生間の議論を通して卓越した意思決定能力が育まれる。世の中に大きなインパクトを与える人材を継続的に輩出することを目指す。

 

 新歓情報はこちらから。

 

「これでいいのかな」から飛び込んだ瀧本ゼミ

 

ーー飯泉様が瀧本ゼミに入ったきっかけについてお教えください

 

 その当時、活動していた団体での自分の無力感が入るきっかけです。瀧本ゼミに入る前は、東大生のキャリア支援をする学生団体に入ってイベント企画や運営をしていました。自分のキャリア観も定まっていないのに、他の東大生のキャリア選択を手助けするという青い自己矛盾を抱えた学生でした(笑) 。

 

 しかし、運営に長く関わるにつれて「これでいいのかな」という思いが芽生えてきました。定性的・抽象的なキャリアや価値観の議論をするものの、同じところをぐるぐると回っている感覚でした。前に進んだり自分が進化して貢献できている気がしなくなっていました。

 

 このような課題感を持っていた時、瀧本ゼミに入る前の団体にも顔を出してくださっていた瀧本さんが始めたゼミの存在を知りました。当時の瀧本ゼミの、「定量的で忌憚(きたん)なき議論ができて成長ができる環境」という煽り文句もあってゼミに興味を持ちました。

 

ーーそこから瀧本ゼミの活動を見学したと思うのですが、どのようなところが入ゼミの決め手になりましたか

 

 見学した際のゼミの発表がとても面白かったことです。名古屋の葬儀会社の発表だったのですが、ファクトの詰めの甘さに瀧本さんからも他の学生からも容赦無く指摘が入り、途中からは発表者そっちのけで議論が進んでいく状況を目の当たりにしました。他のゼミではこんなことはなかったので、「なんだこれ…」とあっけにとられました。しかし今までとは違う面白さに惹かれる気持ちも強く、最終的には「まあいっか」と思い入ることを決めました。

 

ーー瀧本ゼミでの活動で印象に残っていることはありますか

 

 ヤオコーという埼玉県を中心として店舗を展開するスーパーマーケット企業のリサーチです。企業が開示している業績や財務情報やアナリストレポート等公開されている情報の全てを読み込んで競合との比較はしたのですが、その状態では新規性や他の投資家は気づいていないインサイトがありませんでした。そこで、その発掘のために埼玉の現地にまで行き、「なぜ現地の消費者に他のスーパーではなくヤオコーが選ばれるか」を自分の足で調査しました。例えば、お惣菜を作るバックヤードに工夫があることが分かったり、近くの別のスーパーとヤオコーとで惣菜の代表格であるコロッケを比較すると、価格や質に違いがあったりと様々なことが分かりました。

 

 私自身は瀧本ゼミの中で優秀な方ではないと感じていたものの、この経験を通じて考え続ける思考体力さえあれば自分なりの価値の出し方はあるんだと思えました。瀧本ゼミは頭のいい人しか入れないと思われがちですが、全然そんなことはないから身構えなくていいんだよということを新入生に伝えたいです。

 

ーーゼミ卒業後DeNAやメルペイといったIT企業に勤務されたのはどうしてですか

 

 若いうちから自分で意思決定して実行し、世の中を変えていきたいと思ったからです。もともと私は自分で物事を動かしていくことの手触り感が好きです。私が就職活動をしていた当時の経済学部ではコンサルティングファームが人気でしたが、大きな戦略の提案までというよりは、小さくても良いから若手のうちから裁量をもち自分で物事を動かしたいと思っていました。IT業界は市場環境の変化も製品の開発スピードも速いため、年齢に関係なくどんどん意思決定をして実行することが期待されます。意思決定と物事の推進を重視している自分の性に合っていると思いました。

 

ーーその後、前2社のようないわゆるITメガベンチャーではないオトバンクに移られていますね

 

 2社で経験を積む中でなんとなく見えてきた自分なりの課題や興味をきっかけに、新しいチャレンジをしてみたいとオトバンクへ転職しました。メルペイは一緒に働く同僚の方々は能力も高く人柄も素敵で、申し分なく素晴らしい環境でした。プロダクトマネージャーとして楽しんで仕事をしていましたが、「事業責任を背負って初めて見える風景がある」とDeNA時代の上司に昔言われたことが心のどこかにずっと引っかかっていました。実際メルペイで毎週ある全社定例で代表の青柳さんの話を聴いていると、その意思決定の深さと見通しの良さは自分とは何段もレベルが違い、このままではダメだなと痛感しました。

 

 また、こうした事業のPL責任を背負いたいという思いとは別に、次はコンテンツやエンターテイメントの領域に携わりたいという思いも芽生えてきました。DeNA、メルペイと様々な事業領域を経験してきた中で、私自身は人の感情が動く瞬間に喜びを感じると気付いたのです。インフラや医療といった生きる基盤や生活必需品ではないけれど、あったら生活が豊かになるものを作りたいと感じていました。そんな中で、オトバンク代表の久保田から声をかけてもらったのと、私も音声コンテンツをよく聴いていたこともあり、事業責任を背負う取締役として入社しました。

 

早めのチャレンジと失敗がカギ

 

ーー瀧本ゼミに入っていなかったら、今とは何が違っていたと思いますか

 

 要領良く生きることを、疑いなく続けていたかもしれません。東大生はなんでも要領良くこなせる人が多いと思います。勉強もそれ以外も、コスパ良く楽に及第点を取れて他人から評価される。逆に言うとコスパが悪いことを避けがちで、私もその一人でした。

 

 瀧本ゼミはチャレンジをして失敗し、それを糧に成長していかないといけないというストイックな場です。他の団体であれば、その団体のど真ん中の活動で成果が出なくても、運営で貢献するとか人間関係を作るとか他のコスパの良い存在価値の出し方があると思います。でも瀧本ゼミに入るときに、そういう逃げ方はしないと決めました。企業分析を通して定量的な分析手法や意思決定のストーリーの組み上げ方を身につけることを目的として入ったのだから、それはちゃんとやろうと。

 

 その結果、経験がない不確実なことにも取り組んだり、失敗をしながらでも成果が出るように試行錯誤していくことに慣れ、それ自体に価値があるとわかりました。瀧本ゼミで学び得たのは、企業分析のスキルそのもの以上に、まさにこの失敗しながらもストイックに試行錯誤していくことの価値や自分はそれができるといった少しの自信です。

 

 社会人になると給与が出て組織のゴールのために働く以上、短期で評価されるし、要領良く結果を出すことを求めがちです。この瀧本ゼミでの経験がなければ、自分が既に持っているスキルセットでできることをできる範囲で要領良くこなしバリューを提供してそこそこ評価される、といった生き方をしていたと思います。

 

ーー新入生に向けて一言お願いします。

 

 多くの東大生は「大学生活、何をやればいいのか」という問いを持っていると思うのですが、乱暴に言うとその答えは「何でもいい」です。大学時代は役に立つかどうかといった短期での合理的な判断を求められない貴重な時期です。失敗してもノーリスクだから、少しでも興味があったら思い切って飛び込んでやってみてください。実践の中でこそ、次に何をやれば良いかや自分なりの課題が見えてきます。

 

 とはいっても、選べない人もいると思います。そんな人は一つの指針として「多くチャレンジして多く失敗できる場」を選んでみると良いでしょう。瀧本さんはかつて「ゼミは格好の失敗の場。ここで失敗しておいて、本番で成功すれば良い」とおっしゃっていました。ラッキーで成功し続けると自分の弱点も活かし方もわかりません。早めにチャレンジし失敗してフィードバックがもらえる場で、多いに学ぶのをおすすめします。

 

 私は今オトバンクで働いていますが、代表の久保田とは前述の所属していた学生団体のイベントで知り合いました。当時はまさか10年後一緒に同じ会社で働くとは想像もしていませんでした。人生には、点と点が線になってつながる瞬間がきます。だから今から有意義かどうかや役に立つかどうかを考えすぎず、チャレンジ自体を楽しんでほしいと思います。

 

【経歴】

飯泉早希(いいずみ・さき)様

 理Ⅱに入学し、経済学部卒業。東大在学中は東大ドリームネット、瀧本ゼミに所属。卒業後は14年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、主に協業案件のプロダクトマネジメント、ゲーム事業の編成部長を担当。18年に株式会社メルカリに入社し、メルペイのプロダクトマネジメントを行う。20年2月株式会社オトバンク取締役就任。

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