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2021年3月19日

【飛び出せ!東大発ベンチャー】Yanekara 「屋根から」自然エネルギー100%へ

 

 「自然エネルギー100%の日本をつくりたい」。Yanekaraはそんな大きな目標から始まった。

 

 メンバーは松藤圭亮さん(工・4年)、佐藤浩太郎さん(工・4年)、吉岡大地さん(独フライブルク大学・4年)。3人が開発するのは電気自動車(EV)の充放電システムだ。屋根に設置した太陽光パネルでつくった電気をEVに蓄える。その電気を運転に利用するだけでなく建物に供給することで、電力の自給を図ることができる。この技術を通じ、現状の中央集中的な電力システムを建物ごとに発電・自給する究極的な分散型にすることを目指している。

 

 EVを蓄電池として利用するアイデアは以前から存在したが、広く普及はしていなかった。EVと建物を繋ぐ充放電システムのコストは高く、また家庭での利用を想定する場合、日中にEVが通勤車両として外出すると家庭で蓄電池として利用できないためだ。

 

 そこでYanekaraが開発したシステムは、複数台のEVを所有する事業者を利用者として想定。さらに複数のEVに蓄えられた電気を遠隔で制御することで、コストも低く最適化された電力の利用を可能にする。この「Yanekaraシステム」はまだ製品化には至っていないが、2020年秋には福岡県八女市で実証実験を実施。地元企業の協力を得てシステムを実際に運用した。

 

 3人のチームができたのは2019年。東大産学協創推進本部主催のアントレプレナーシップ・チャレンジで、Yanekaraチームが太陽光パネルにEVを組み合わせたシステムを考案し準優勝。この構想を実際に開発に移すために、学生プロジェクトを支援する本郷テックガレージを活用し、半年で試作品を作り上げた。松藤さんは「『自然エネルギー100%』という志に向けて本気で頑張れる仲間が集まった。『行くべき時だ』と直感した」と会社設立時を振り返る。

 

 企業になったことで、意識すべき点が増えた。経営面では、ビジネスアイデアを考案する際に「Why now?」を大切にしてきたという。吉岡さんは「なぜ今このサービスを市場に出すのか。テクノロジーと市場がうまく組み合わさって僕らの技術が社会に実装できる。Yanekaraは今後のEVの普及、太陽光パネルの低価格化といった世情を考慮に入れて、『Why now?』に答えてきた」と語る。佐藤さんは「学生の研究とは違い、製品として完成度の保証された物を作らなければならない」と開発面の難しさを口にする。

 

 3人ともまだ現役の大学4年生。学業と事業の両立について、佐藤さんは「4年生は必修が少なめなので、時間的に苦しいことがあまりなかった。Yanekaraの活動をメインに、授業での発表の際には学業に専念するなどうまくやりくりできた」という。学生ならではの利点もあり、松藤さんは学部で次世代の電力システムを研究することで、事業との相乗効果を得られているという。

 

 2021年は、さらに実験を重ね「プロトタイプ(試作品)からプロダクト(製品)へ」システムを改良させる年にする。開発の加速に伴い、新たに一緒に活動するメンバーも探しているという。

 

 視線の先には、脱炭素化の未来も見据えている。吉岡さんはいう。「たとえEVが普及しても再生可能エネルギーで走らなければ意味がない。Yanekaraの技術を通じて太陽光パネルとEVを両方普及させ、脱炭素化された日本という理想を実現したい」

(取材・西岡高志)

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