INTERVIEW / FEATURE 2015年12月16日

グローバルとテクノロジーで「服」から新しい価値を生み出す クロスカンパニー社長 石川康晴さん(前編)

「アパレルは斜陽産業。だからこそグローバルとテクノロジーに力を入れ、今までになかったライフスタイル&テクノロジーカンパニーとしてパイオニアになる」

 宮崎あおいさんをモデルに起用したアパレルブランド「earth music&ecology」を知らない人はほとんどいないだろう。アースや「E hyphen world gallery」「Green Parks」など女性ファッションのスタンダードとなるブランドを多く手がけるのが株式会社クロスカンパニーだ。2014年度のグループ売上高は1100億円を超え、その事業領域はアパレルだけでなく、人々の衣・食・住において新しい価値を生み出している。「服」という仕事からどのように世界を変えようとしているのか、社長の石川康晴さんに伺った。

 

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各世代のスタンダードであり続ける理由とは?

――代表的なブランド「earth music&ecology」を中心としてクロスカンパニーのブランドは若い女性から圧倒的な支持を得ています。クロスカンパニーのブランドが各世代のスタンダードであり続けられる理由は何だとお考えですか?

 まず、エントリーカスタマーをすごく意識しています。どういうことかというと、今は中心的なお客様ではないが、5年後にコアユーザーになるであろう16-18歳くらいの子たちにリサーチをかけたプロダクトを一部供給しているんです。ブランドビジネスは顧客とともに年をとり、気がつけば若いユーザーがいなくなる傾向があるのですが、私たちは意識して若いユーザーを新規としてとり入れていく工夫をしています。

 例えばアースの場合、タグラインに高校生の子たちのトレンドを意図的に織り込んでいるホワイトレーベルとレッドレーベルがあります。渋谷パルコやラフォーレなどの中高生が集まる立地ではこのレーベルを全面的にディスプレイに押し出して若いユーザーを迎え入れるようにし、5年後のコアユーザーへの導線を敷いているのです。

 またこれに対して、ルミネなどの駅ビルにはOL向けのプレミアムレーベルを、ららぽーとやイオンモールなどでは30代から40代向けのナチュラルレーベルを全面に押し出してお客様を獲得しにいく、というように6つあるレーベルを立地とメインのお客様によって組み合わせて店づくりを行っているのも特徴です。

 そのほかにも、ファッションビルや駅ビル、モールに加えてロードサイドでの大型アースの店舗もスタートさせました。プリウスに乗ってスローフードに興味があり、子ども達には良いものを食べさせたい…といったエコライフ思考の新しいマインドを持った家族向けです。このようなお客様は郊外に多く、ナチュラルでガーリーなブランドであるアースはよく受け入れられますね。最近では40代50代のお母さんと中高生のお子さんの2世代でいらしてまとめて購入されるという方も増えており、それだけ年齢幅が広いブランドでもあるんです。本来マーケティングといえば、ターゲットを絞るということが理論的によく言われていることですが、アースの場合は逆にターゲットを広げ、場所によってうまく商品を編集することに重点を置いています。

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グローバルとテクノロジーに主眼を置く「ライフスタイル&テクノロジーカンパニー」へ

――会社の規模が拡大していく中で、どういう部分に主眼を置いて勝負していこうとお考えですか?

 大雑把にいうとグローバルとテクノロジーですね。グローバルには2つのパターンがあって。1つは欧米を中心とした本格的なグローバル。ただ、欧米はファッション業界がかなり成熟しているので高度なブランディングが必要です。そこでニューヨークやオックスフォードストリート、シャンゼリゼ通りなどでも十分に勝負していくためのブランド「KOE」を開発しました。まず、コンペティターとなるZARAとH&Mを2年間徹底的に研究し、自分たちが勝負できるスペースを探る。そこで見えてきた他者との差別化がフェアサプライチェーンという概念だったんです。

 ファストファッションの低価格は、コストの低いアジアにおいて人権を侵すような過酷な労働環境や労働時間など生産者の犠牲のうえに成り立っている場合が多い。しかし21世紀は人々のリテラシーが上がってきて、消費者はオーガニックなものを好んだり、生産背景にフェアを求めたりするようになるのではないか。長時間労働をしてない、子どもたちを労働力として使っていない、公害を出していない。先進国を中心にそういうものを買い始める時代が来るのではないかと仮説を立てたんです。フェアトレードに近いですね。フェアトレードだから買うという風潮はまだまだ薄いですが、私たちはその他の企業がやらないポジションを10年かけて獲得しようと思っています。「ファスト」じゃなくて「フェア」という概念で1兆円を目指します。

 一方もう一つのグローバルの展開は、アースのアジア20億人戦略。人口の多い中国、インドネシアを中心として東アジア、東南アジアの20億人の市場において、主力ブランドであるアースの売り上げ1000億を目指しています。アースの色やサイズがあまり適合しない欧米には進出せず、アジアの高所得層向けとして販路を広げる戦略です。

 実際、アパレル産業は国内だけでみると斜陽産業なんです。原因は少子化であったり、人々の購買そのものへの意欲低下であったり。しかしそれは国境を越えて購買力のある若い人たちがいる市場へいけば済むこと。国内のヤングに絞らなくても、国境を越える勇気があれば、まだまだ可能性は大きいですね。

――テクノロジー分野での勝負とは?

 国内での成長戦略として重要なのが、従業員一人の生産性をどうやってあげていくのかということだと思います。そこで私たちはテクノロジーの力を活用して、服というコンテンツのみを扱うのではなく、服関連の生活サービスを含めたコンテンツのプラットフォームづくりを行い、ライフスタイル&テクノロジーカンパニーへ発展しようとしています。

 具体的には、オンラインでオーダーできるクリーニングサービスや、月額制で当社の服が借り放題となるファッションレンタルサービスなど。服関連の生活サービスを枝葉に広げることによって、一人当たりの一年間使っていただける額を高めていく。アパレルコンテンツに加えたアフターサービスとレンタルのプラットフォーム作りのハイブリットで国内の生産性もあげようとしています。

 

イノベーションは異なる価値観に接することで生まれる

――そうした戦略アイディアの源泉は何なのでしょうか?

 異業種の人や年齢の違う人、国籍が違う人と交流することですね。僕はここ2年くらいITの方とばかり会っています。そこから出来たのが先ほど言ったレンタルサイトやクリーニングサービス。似たような価値観の人とばかり会っていても発想は出てきません。全く違う価値観の人と接触しに行くというのがアイディアの基本だと思います。

 僕はイノベーションはゼロから生まれるものではないと思うんですよね。他の業種でやっていることを自分の業種に持ち込むのもイノベーションだし、ちょっと意味を変えるだけでもイノベーション。そのために、自分とは異なる人から学ぶことはとても重要です。ものすごい振り幅で様々な人と会っているうちに、それがどんどん気づきを増してくれるんです。 

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(取材 新多可奈子、須田英太郎  文、新多可奈子)


石川康晴氏
株式会社クロスカンパニー社長。1970年岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒業。アパレル企業にて経営についてのノウハウを積んだ後、23歳で起業。95年にクロスカンパニーを設立。現在、内閣府男女共同参画推進連携会議議員を務める。

 

この記事はソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成(GCL)プログラムとの共同企画です。

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