COLUMN 2018年3月20日

個人に合う適切な支援を 「卒論支援会社」に聞く卒論執筆の裏事情

 多くの学生にとって、卒業論文の提出は大学生活で最大の目標・課題だ。学生はテーマを設定して資料・先行研究などを当たっていくが、全てがうまく進むとは限らない。「ららみーあ株式会社」を立ち上げ、代表取締役を務める山川洋明さん(農学部卒)は、卒論で困難に直面した学生の依頼を受け、読むべき文献の紹介など支援を行っている。山川さんに、卒論支援の詳細や卒論を上手く進めるこつを聞いた。

(取材・矢野祐佳)

 

教員頼れぬ学生に

 

 山川さんは卒論支援について「卒論を書くための個人指導塾のようなもの」と話す。初めに依頼者の学生から研究テーマ、読んだ文献、すでに書き進めている文章など状況を聞き、手助けできるかを判断する。手助け可能と判断した場合、読むべき先行研究や資料・史料の紹介・文章の手直しなどをするという。「『頑張ってもどうしてもうまくいかない』という学生さんが自力で卒論を進める支援をしています。逆に『お金は払うから一から十までなんとかして』という依頼はお断りしています」

 

 主な相談内容は「途中で行き詰まった」「教員の指導が自分に合わない」「提出期限まで時間がない」などだ。「有名で世間への発言力をすでに持つ人が社会人大学院に通っていたときに、教員が嫉妬して論文指導を十分にしない、というケースもありました」。学生の保護者から「本人が卒論にやる気を出さない」と相談されることもある。

 

 依頼者の相談に応じる「執筆者」は、研究者や社会人など幅広い。依頼内容や依頼者の属性が多様化しているため、さまざまな執筆者を抱えている。「依頼者の研究テーマは多岐にわたるので、その都度詳しい人を外部から見つけてくることもあります」。執筆者は皆、学生の手助けをしたくて相談に乗っている。そのため、学生がどこまで自分の手で頑張ってきたのかも重視しているという。

 

 卒論支援を依頼する学生は大学で十分な指導を受けられていないのだろうか。山川さんは「大学の先生も、一昔前に比べればずいぶん熱心に指導をしている」と話す。それでも行き詰まるのは、教員の指導がその学生に合っていないためだと分析する。「例えば学習塾ではある教科の先生の指導が合わなければ他の先生に教わることができますが、細かくテーマを設定する卒論ではその先生以外の指導を仰ぐことが難しくなるので、合わなかった場合に学生は他に頼るところがなくなるのです」。卒論支援は、学生が大学外で頼れるものといえる。

 

 東大の後期日程試験(当時)に合格するなどもともと論文が得意だった山川さんは、大手食品企業で働いていたときに知り合いの大学教員に「留学生の論文作成を支援してほしい」と依頼され、卒論支援を始めた。その後も学生や留学生の研究支援を行い、事業化するに至った。

 

 数々の卒論支援をしてきた山川さんは、これから卒論を書く人に対し、早めに取り掛かることに加えて「つまずくことを恐れず、自分が突き詰めたいことをテーマにするのが大事」と話す。卒論はテーマ設定が最も重要で楽しい部分で、誰かに与えられたテーマではやる気が十分に出ず、結局行き詰まることもあるという。「テーマを設定できれば、卒論は半分くらいできたようなもの。たとえつまずいたとしても、いろいろな切り口を考えることが重要な経験になります」

 


この記事は、2018年3月20日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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