INTERVIEW / FEATURE 2015年7月24日

来たる動画メディアの時代~動画ディレクター家子史穂さんに聞く、Web動画がもたらす新しい報道の形

テキストからグラフィックへ――。これは止められない時代の流れともいえる。テキストのみの画面表示だった旧来のパソコンをグラフィカル・インターフェイスへと切り替えたMacが爆発的に売れたように。FacebookやInstagramなど写真が中心のSNSが、近ごろ流行しているように。

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1984年に発売されたMS-DOS 3.1. グラフィカルユーザインターフェースの概念を大きく普及させた。

 

これと同じく、今はテキストで配信されているニュースも、「動画」で配信される時代がくる――このような未来予測のもとで行動する、動画ディレクター・家子史穂さんに話を伺った。

今回のテーマ

・日本におけるWeb動画市場の現状

・テレビとweb動画との違い~編集の有無

・YouTubeにアップすることの価値

・Web動画時代の報道の在り方

(聞き手 沢津橋紀洋)

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日本におけるWeb動画市場の現状

―家子さん、よろしくお願いします。家子さんは我々が手掛けている文化祭ニコ生に注目してくださって、この度出版された『仕事で使える動画術』で取材していただいて以来の付き合いなのですが、そもそも、動画に関心を寄せるきっかけは何だったのですか?

勤めていたリクルート・コミュニケーションズで、企業の紹介動画を作っていたんです。動画の力で何かの魅力を伝えることがとても面白くて、仕事もたくさんあったので、2013年に独立しました。その後は東洋経済ONLINEで、当時の佐々木編集長と一緒に動画のコンテンツを作っていました。佐々木さんはその後NewsPicksに移ってしまいましたが(笑)

Web動画といえば、昨今はYouTuberなどが盛んにクローズ・アップされていますけど、私としては「大人が見ても面白い動画」を増やしたいんですよね。アメリカでは、動画でニュースを見ることが広まりつつあるので、いずれ日本でもそうなるだろうと思います。

―日本でのweb動画は、まだまだ厳しいですか?

厳しいです。国内のニュースサイトやメディアでも動画コンテンツを配信していますが、まだまだPV数はテキストの記事と比較すると伸びていないようです。そんな中、最近増えてきているのは、「資料としての動画」ですね。就職活動シーズンが始まり、学生さんも目にする機会が増えてきていると思いますが、会社説明会のセミナーを動画で配信していますよね。更に企業内部においても、社内における情報共有のための動画や、研修用の動画、また就活生の皆さんも直接関係する、リクルーターの教育のための動画もあるんですよ。

―なるほど。家子さんはそういうのを手掛けられているのですね。

手掛けていますが、将来的に趨勢は変わってくると思います。社内に向けての動画だと、別に高品質でなくていいので、自社制作をするようになると思います。今は対外的なPR動画と抱き合わせで外注していますが、いずれ切り分けられ、自社で動画制作をするリソースが蓄積されていくでしょう。私も自由大学で動画制作に関する講座を開いているのですが、今後は動画制作について学ぶ、という需要が増えてくると思います。

テレビとweb動画との違い~編集の有無

―この東洋経済ONLINEの提供している動画コンテンツも、すごく面白いですよね。画質もよくて、テレビ番組のようなきれいな作りですが、Web動画とテレビだと、動画の性質としてどのような違いがあるのですか。

今回本を出すために色々取材してわかったのは、Web動画は、そこまで編集にこだわらなくていいということです。例えばプロトリーフという園芸専門店さんがアップしている、植物の育て方動画というシリーズがあるのですが、映像は固定カメラで撮って、そのままYouTubeにアップしています。撮影編集を担当している社員の方に話を聞いてみると、最初は編集をがんばっていたそうですが、ある日編集せずにアップしたら、再生回数がほとんど変わらなかった。なんだ、編集しなくていいじゃん、と気づき(笑)、その後、コンテンツの更新ペースも早くなったそうです。

―他にもテレビとWeb動画の違い、ありますか?

ネタの出し方ですね。テレビだと「続きはCMの後」と、引っ張れますけど、Webでそんなことしたらすぐ切り替えられて、誰も見てくれない(笑)。「おいしいものを先に出す」のが、Web動画の基本です。その意味で、ネットにおけるライティングの作法はそのまま生きます。検索されやすく、クリックしたくなるようなタイトルの付け方など(笑)。

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YouTubeにアップすることの価値

東京大学新聞さんは、YouTubeに情報をアップしていますか。

―いや、していません。

したほうがいいですよ。YouTubeは、実はGoogleに次ぐ、世界第2位(日本ではYohooに次ぐ第3位)の検索エンジンなんです(買収されちゃったので、ある意味一体ですが)。

だからどんなにマイナーな情報でも、YouTubeに置いておくことに意味があります。Google検索で欲しい情報がない場合、人はYouTubeで検索するんです。また、コンテンツの量も大切です。先ほどの花屋さんも、人気の有る無しに関わらず、とにかくあまねく広い種類の植物の動画をアップすることが重要だとお話しされていました。再生回数が少ないものであってもその情報を必要としている人にとっては価値なのです。Web動画であれば枠を気にすることなく必要とする人に情報を届けることができるのです。

―そうなんですね……。我々には機材も人的資本も足りてないですが、それでも大丈夫でしょうか。

実は、人はそこまでのクオリティーをWeb動画に求めていません。求められているのはリアルさ、隠し立てされていない現場を写すことです。だから、手ぶれしていても、スマートフォンのカメラでも、いいんです。端的に言えば、こうして今取材されている時間、スマートフォンを回しておけばいいんですよ。ゴリラポッドという、イケてるカメラ用タコ足三脚を使ってください(笑)。

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これが噂のゴリラパッド。これをスマートフォン用集音マイクを使えば、動画として形になるという。

大手メディアだと、専用の映像班を抱えているため、ある程度のクオリティーがなければブランド毀損になる……というジレンマがありますが、映像班がいない学生新聞さんだと、その状況を逆手に取って、記者が身軽に動画発信をできるチャンスかもしれませんよ。例えばアメリカのニュースメディアでは、記者が単身で取材に行き、インタビューの様子をスマートフォンで録画して、その場で本社に送信ということも珍しくありません。日本側が記者、カメラマン、音声、照明など複数人の取材班で行動するなか、これでは機動力が違います。

Web動画時代の報道の在り方

―なるほど……。それだと報道の在り方も変わりそうですね。記者といえばペンで戦うのだ!というイメージがあるなか、動画も手掛けるのが、新しい記者の形だと。

その通りです。今はテクノロジーも進化して、記事を作る感覚で、動画ニュースを制作できますから。更にこれからは、自分のコンテンツを持つ記者が独立して配信する時代になります。専門性がベースなんですね。取材はスマートフォンで良いわけですから、その記者本人が持つ情報であったり、人脈であったりが問われるようになると思います。

例えば東京大学新聞さんだと、学食に異様に詳しい記者さんとかいないのですか?学食について語る動画をアップすれば、ウケると思いますよ。

―学食……。思ってもみなかったものに情報価値があるんですね。

なんでもコンテンツになります。例えば、新奇性のある取り組みとしては、サイバーエージェントが採用面接を公開しています。すごいですよね。採用面接自体に情報価値があると、藤田社長は理解しているのです。動画を見て、質問の内容も分かるので、「あ、自分じゃ答えられないな」と思う学生にとっては、ある意味、ふるいにもなっていますが。

編集がさほどいらないとなると、もしかしたら文章で記事を出すより、動画の方が簡単ですよね。これからは全員が発信者になれる時代です。学生の皆さんもぜひ、動画での発信の仕方を学んで、有効活用してほしいですね。

家子さん、ありがとうございました!

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(企画・文 沢津橋紀洋)

プロフィール

家子史穂(いえこしほ)

動画ディレクター。1981年生まれ。一橋大学卒業後、医療機器メーカー商品企画を経て、株式会社リクルートコミュニケーションズに転職。広告制作を7年勤め、2013年に独立。ニュースサイト「東洋経済オンライン」の動画コンテンツ立つ揚げに参画したほか、企業の動画プロジェクトを多数展開。自由大学「伝わる動画学」教授。http://housechild.net/

東京大学新聞オンラインでは、現在準備中の動画コンテンツ制作に携わってくれる方を募集しております。問い合わせはculture@utnp.orgまで。経験は問いません。一緒に企画を立ち上げませんか?

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