INTERVIEW / FEATURE 2018年9月21日

受験の生かし方考えて カリスマ講師・犬塚壮志さんから受験生へエール

 業界最難関といわれる駿台予備校の講師採用試験に、当時最年少の25歳の若さで一発合格。講習会受講者数が予備校業界日本一という華々しい記録を持つ元・化学講師、犬塚壮志さん。受験の世界に深く携わってきたカリスマ講師に、受験勉強のコツや、受験を超えた「勉強」の意義について、東大受験生へのメッセージも交え話を聞いた。

(取材・岡田康佑 撮影・曽木悠美)

 

 

受験はエキサイティング

 

──なぜ塾講師になったのですか

 大学1年の時、私は高校教師を目指していました。そのために指導経験を積もうと塾講師のアルバイトを始めたのですが、そこで「受験はエキサイティングな体験」だと気付いたんです。そして受験とより深く関わる塾講師の道にのめり込んでいきました。

 

──「受験はエキサイティング」とはどういうことでしょうか

 短期間での受験生の成長の「変化率」が、とても面白いんです。勉強が不得意だった子が勉強を重ねていく中で、ほんの数カ月後に合格を勝ち取る。この急成長を支え、見守ることが何よりのやりがいです。中には高3の春に偏差値40だった子が、東大に現役合格したこともありました。

 

──業界最難関といわれる駿台講師の採用試験に一発合格されたそうですね

 試験は大学での専門知識も問われる筆記の一次試験と、模擬授業と面接の二次試験に分かれています。東大卒業生でも落ちることがある、ハードルの高い試験です。だからこそ戦略を大いに練って挑みました。現役駿台講師の人脈をたどって過去問の傾向を調べたり、駿台で実際に使われるテキストをどうにか手に入れて、駿台の教育スタンスを研究したりしましたね。筆記は何とか通ったのですが、事件は持ち時間10分の模擬授業で起きました。開始後7分ごろ、「いよいよ自分の授業の最大の見せ場!」というところで、試験官がストップウォッチを止めて「もう終了にします」って授業を途中で切ったんです。絶対落とされたと思いますよね?でも結果は合格でした。後に他の駿台講師に聞いたところ「一流講師は、授業の冒頭を見るだけで、その人がどんな授業をするのか、最後まで分かるんだって。君は最初の7分で合格と判断されたんだよ」ということでした。

 

──化学講師を選ばれた理由は何でしょうか

 実は私はもともと生物が大好きで、化学は受験で必要だから嫌々勉強していたんです。だからかつては化学の偏差値は30くらいで、元素記号の始めの20個すら危うかったんです。しかし、いざ人に教えるとなると化学が一番向いていました。というのも、生物は好きすぎて自然に知識が入り、できない人の気持ちが分からない状態に陥っていたのです。一方化学は苦手だった分、何が分からないかがはっきり分かっていて、そこを解消すべくステップを一つずつ踏む勉強をしました。その結果、化学の偏差値は着実に伸び、自分の受験期には生物の偏差値を上回っていました。なので、講師として教えやすい科目は化学の方だったのです。

 

 

「弱点ノート」作って反復

 

──受験生を成長させる秘訣(ひけつ)は何でしょうか

 最も大事なのは「何ができないかを教える」ことです。そのコツは「できないことの塊を部分に分けて、行動しやすいレベルに落とし込む」ことです。私はこの作業を「因数分解」と呼びます。逆に受験生のみんなには、積極的に先生に絡んで、分からないところを伝えてほしいですね。また、私の受験生時代の勉強法に「弱点ノート」の作成がありました。模試で間違えた問題の解答解説を、自分オリジナルで考案し、ノートに書き込むのです。これは私の教え子にも作らせていました。

 

──「弱点ノート」は、問題集ではなく模試を題材にするのですか

 その通りです。駿台に勤めていたので分かりますが、模試は、各予備校が莫大(ばくだい)な知恵、お金、時間をかけて作る、各分野の要点が凝縮された逸品です。問題集より模試の復習の方がかなり効率はいいと思います。

 

 復習方法は問題を繰り返し解くアウトプットの練習です。受験勉強はインプットに陥りがちですが、入試本番はアウトプット勝負。「弱点ノート」を反復すれば本番勝つために必要な力が身に付くと思います。

 

──犬塚さんの教育理念は何でしょうか

 「成果第一主義」です。予備校に来る子たちの「成績向上」というニーズを満たせなければ塾講師失格だと思っています。成果を出す上では、今の受験界の「いかに効率よく知識を詰め込み、テクニックを身に付けるか」を重視する風潮があってもいいと思います。

 

 ただし、それは「そのテクニックは将来どう役立つのか」学ぶ意義までセットで教えるという条件付きで許される風潮です。受験勉強で身に付けるスキルは将来何かと役立ちます。教員は必ずその意義やメリットを伝えるべきだと思います。私自身、受験で身に付けたサイエンスの基本「知識の体系化の仕方」「帰納と演繹(えんえき)の考え方」「仮説検証」の三つは、人に説明することが多い現在の仕事にとても役立っています。一方で受験生のみんなにも「この考え方、実社会ではどう使えるんだろう?」と考えながら勉強してほしいです。手に入れた知識や技術を受験で使い捨ててしまうか、その後の社会でも有意義に使っていくかは勉強する皆さん自身に委ねられているのですから。「微積分なんて将来使わないじゃん」なんて決めつけず、「どう生かせるのか」を常に考えてみてください。

 

──東大を目指す受験生にメッセージをお願いします

 私の出身は立教大学ですが、実は昨年「学習環境」について研究するために東大の大学院に入学しました。そこで実感したのは、周りに本当に優秀な人たちがたくさんいるということです。彼らと学び合うと、自分の成長の喜びが最大限に実感できます。東大に来て、本当に良かったと思っています。東大で学べることは、受験勉強で1、2年費やしたとしてもお釣りがくるほどの収穫です。東大を目指すみんなには、ぜひ勉強を頑張ってこの最高の財産を手にしに来てほしいです。

 

犬塚壮志(いぬつか まさし)さん(元駿台予備校化学講師)

07年立教大学大学院理学研究科修了。同年より、駿台予備校に
化学講師として10年間勤務。現在は、大学受験専門塾「ワークシ
ョップ」を主宰。18年に学際情報学府に入学。主な著書に『東大
院生が開発!頭のいい説明は型で決まる』(PHP研究所)がある。

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