INTERVIEW / OBOG 2018年2月25日

東大卒起業家から就活生へ 後編 「新卒はゴールデンチケット」の嘘

 「人を軸にした産業創出エコシステムをつくる」というビジョンの下、日本のスタートアップを牽引してきたスローガン社。創業から12年間、ベンチャー企業と学生をつなぎ続けてきた。IBMに就職後、スローガン社を創業した文学部卒業の伊藤豊CEOに、「日本の就職活動」について聞いた。(インタビュー前編はこちら

(取材・沢津橋紀洋)

 

 

――学生として、どういう考え方で進路を捉え、どう生きたらいいか、アドバイスはありますか

 「新卒は一回限りのゴールデンチケットだ」という考え方がありますよね。「最初にベンチャーに入ると、もう大企業には行けないんだ、だから一回大企業に入っとけ」、という。こういう大人が多すぎて、僕はこれが諸悪の根源だと思っています。別に大企業からベンチャーに移りやすいわけじゃない、むしろ事態は逆です。例えばある大企業は、会議で若者は発言できません。下手に発言すると、後からおじさんに呼ばれて、「ああいう場で発言しないもんだ」と言われる。

 

 一方ベンチャーでは、発言しないと、「もう来なくていいよ」となる。真逆です。どちらの会社が生命力あると思いますか? 「若者は会議で発言すべきでない」という会社は、時代遅れの恐竜のような会社です。「若者だろうが何だろうが発言しよう」って方が勢いがあって、生命力高い組織でしょ。こっちの世界で評価された方が、将来有望で安定につながりますよ。

 

 考え方が古い人たちの集団に入ってしまうと、抜け出せなくなります。大企業で「ベンチャーに移る」と言おうもんなら、変人扱いですよ。新卒をゴールデンチケットと捉えてしまうと、「間違えられない」と言う恐怖から、ちょっとでも怪しそうなカタカナの会社じゃなくて、みんなが良いって言う、できるだけ安パイな会社に行きます。しかし安パイに見えるってことはそれだけ歴史があってそれだけ古いため、若者が行っても面白い仕事は簡単にはないです。もう肥大化しちゃっているから。

 

 とは言え、いきなり新卒でベンチャー就職にリスクを感じる学生の気持ちもよく分かります。だから僕は、大学生のうちに、「小さい企業で長期インターン」する経験を誰もがするべきだと考えます。誰しも、イメージが湧かないことはできませんから。そうすることで、もし大企業に行ったとしても、おかしいところが分かる。「これは制度疲労している、おじさんの論理だ」というのが分かる。最初から大企業に行ってしまうと、それが当たり前になって疑問を持つ余地が減ってしまいます。

 

 

――伊藤さんが描く、就職システムの在り方はどのようなものでしょうか

 学生の間に就職活動をしなくても良いようにしたいですね。大学生の間、勉強したい人は勉強だけしていて、卒業後に就活すれば良いじゃん、在学中から働きたい人がいれば働けば良いじゃん、という社会にしたい。卒業後も含めて、最低3-4社くらいは長期インターンしてみて、それから決めれば。これが当たり前になれば、新卒就活はワンチャンスということもなくなる。世間体がそもそも気にならなくなります。

 

 うちの会社に入社した人で、面白い人がいます。大学卒業後、フランスに1年留学して、1年みっちり勉強して来て、5月くらいに仕事を探し始めました。普通のプロセスでいうと、既卒の2年目ですよ。面接に行っても、「え、君、何年卒?」と変な人扱いされるでしょう。僕ら(スローガン社)はそういうの気にしないから、普通に面接して採用して、入社もいつでも良いよって言って、その年の10月から入社です。世の中では変人かもしれませんが……でも、フランスから帰ってきて、いいじゃんと、何がいけないんですかと僕らは思います。規格外で農協のルートで出荷できない野菜と同じで、つまらない基準やルールで素晴らしい価値が見逃されている気がします。本当につまらないことに、今のシステムだと、ちょっとクリエイティビティがある人が弾かれちゃって、仕事を探しづらい現状があります。こないだ僕のところに来た学生も、留学しようか迷っている、留学をしちゃうと、就活のスケジュールに乗れないからと。変な話ですよ。大げさにいうと国益に反すると僕は思います。

 

 受験と一緒で、「俺AOで行くから」と、そういう就職の仕方もOKな社会にしたい。AO入試って、いわゆる受験勉強ではないことに励むでしょう。「俺就活とかしないから。卒業後世界一周するから。卒業後長期インターンして、合うところ行くわ」というイメージです。今の就活の在り方では、「名前の知れたところ行かなければ恥ずかしい」といった意識や、一斉に就活して「お前どこ?」みたいに話す風潮が、横並び意識を助長してます。そういうのを崩したいですね。世界一周、行ってくれば良いじゃないですか(笑)。

 

――スローガン社の活動が、今後どんどん必要になってくると思います

 僕らは、先代の作った企業に若者が乗っかるだけの社会はまずい、と思っていて、「自分たちの世代で次の大企業を作る!」という人が増えれば良いよね、と願っています。だからベンチャー企業と若者をつなぎたいのですが、まだまだ全体の数%にも満たない人にしかタッチできていない、影響を与えられていないと思っています。どこかで大きくゲームチェンジをさせる必要がある、という危機感があります。

 

 過激な話として、「東大生は新卒で社員数1000人以上の会社には行けない」という法律ができたらいいんじゃないかなと(笑)。東大生は全員、小さい会社で修行してから来いと。大企業も中途採用ならいいけど、まずは小さいところで揉まれてから来いと。半分冗談ですが、あながち滑稽な話ではなく、経済を活性化させるために意外と有効な政策なのではないか。誰かが用意してくれた魅力的な雇用の席を奪い取ろうと考えるよりも、雇用をつくる側に行こうと思うような。少なくとも、そういう志を東大にいるなら、持ってほしいですね。

 

――志を持つために、学生ができることはありますか

 経営者や偉人の本などをたくさん読んで、高い志のこもった言葉のシャワーを浴び続けるしかないと思います。人は誰しも育った家庭環境の影響を受けるように、志の高いことばかり言っている人の本を読むと、自然とそうなってくるんです。僕は会社員時代、司馬遼太郎を読んで、志を学びました。起業してから、きれいごとではなく本当に社会のためになっているのか、私欲ではなく社会的な大義につながるのか?を真剣に問いました。「大義を中心としたリーダーシップ」の在り方を本から学んだのですね。

 

 他にも、学生に分かりやすいところとして、大前研一さんとか堀紘一さんの本もいいのではないでしょうか。刺激的で、一部しっかりと煽ってくるんですよね。「これくらいやらないと1億稼げないぞ」みたいな(笑)。学生にとって、分かりやすく刺激を受けられると思いますよ。

 

 あ、メッセージとして僕が強調したいのはですね、僕は本当に本を読まない人間だったんですよ。学生時代、本当に一冊も読んでいません。授業の課題図書も、読んだ友達にヒアリングして、適当なことを書いてクリアしていました(笑)。そんな僕でも、社会人になってから意図的に努力して、月に10冊は読むように変わったんです。エクセルを使って読書マネジメントをしました。面白そうな本を雑誌のプレジデントとかで知って、スプレッドシートに入れて、ジャンル別に管理して、読書計画を立てたんです。何を読むのか、その選定に時間を使ったらいいと思いますね。この本は本当に自分の栄養分になるのか、確信を持てる本を選んで読んでいくと継続しやすいと思います。

 

 根本的には、組織で何かをするというのは、人と人が何かをするということなので、人間を理解することが本当に大事なんです。読書嫌いだった僕が、本をたくさん読んで、こうして起業できて12年経営しているので。大学時代から、もっと勉強しておくことがあったな、と後悔しているので、勉強に励んでほしいですね。

 

――最後に、伊藤さんが考える、「優秀さ」の定義について教えてください

 よく分からないものに「面白そう」と飛び付ける「好奇心」がまず大事なのではないかと思います。あとは、世間に共有されている「古い常識」とコンフリクト(矛盾)する情報が出てきた時に、「本当にそうなのかな?」と思って調べてみる。この知的柔軟性があるかどうか。世間の9割の人はこう言っているけど、自分が調べた感じはこうだ、という力があることが、すごく卓越するために必要だと思います。9割方が間違えている情報って多くて、昔から、マジョリティーの意見は最先端に追い付きませんからね。

インタビュー中にも登場した、ベンチャー企業での長期インターンに関して、伊藤CEOは興味がある方の相談をお待ちしているとのこと。詳しくはこちらから。

 

2018年2月26日17:50【記事修正】1枚目の写真を差し替えました。

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