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2015年1月14日

東大分生研での論文不正問題、教員ら11人に不正行為

加藤茂明元教授(分子細胞生物学研究所、分生研)の研究室による論文不正問題で、東大は12月26日、論文33本でデータ捏造(ねつぞう)などの不正行為があったとする最終報告を公表した。

当時の教員ら11人の不正行為などを認定。加藤氏など教員6人は既に退職しているが、「懲戒処分に相当する可能性がある」とした。東大は約15億円に上る公的研究費について、文部科学省などへの返還を検討している。

 

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記者会見では濱田総長も謝罪

最終報告の実施に関して26日に本郷キャンパスで開かれた記者会見には、濱田純一総長らが出席した。濱田総長は「不正行為が行われたと認定された論文が多数に上り、学術の健全な発展を大きく揺るがしたことは誠に遺憾」と謝罪。同時に「自らを戒めて研究倫理の全学への十分な浸透のためにまい進する」とし、12~2月の3カ月間の報酬について、10分の1を返納すると述べた。

報告書をまとめた科学研究行動規範委員会は、加藤氏の研究室が1996~2012年に発表した論文165本を調査。13年12月には中間報告として、うち51本が科学的に不適切な図を含むと認定していた。

今回の最終報告では、その51本の著者計193人について不正行為の有無を調査した結果を基に、11人が不正行為に関与していると認定した。

 

不正の背景には「ストーリーに合った実験結果を求める姿勢」

科学的に不適切な図を含む51本のうち、論文の捏造・改ざんなどの不正行為が最終的に認められたのは33本。うち29本は既に論文が撤回されており、残り4本についても「撤回の処置が講じられるよう対処する」としている。

不正行為の背景については、加藤氏の研究室に「著名な学術雑誌への論文掲載を過度に重視し、そのためのストーリーに合った実験結果を求める姿勢」があったと指摘した。

不正行為が認定された11人のうち、教員は▽加藤氏▽栁澤純氏(元助教授)▽北川浩史氏(元特任講師)▽武山健一氏(元准教授)▽高田伊知郎氏(元助教)▽藤木亮次氏(元助教)―の計6人。残り5人は学生・研究員で、4人は分生研に所属し、1人は製薬会社に所属していた。

報告書では藤木氏と分生研所属だった4人について「研究室の特異な研究慣行に従わざるを得なかった」と判断。研究室を取り仕切る加藤氏や、直接の指導者だった栁澤氏や北川氏の責任が重いとしている。

 

研究費約15億円の返還を検討

報告書は、教員6人は「懲戒処分に相当する可能性がある」と明記。記者会見で相原博昭理事・副学長(科学研究行動規範担当)は「退職金の返還なども含め議論する」と話した。相原理事・副学長は学位取り消しの可能性にも言及。「重要な問題なので予断を許さず規則にのっとり判断し、迅速に結論を出す」と述べた。研究室が文部科学省などから受け取っていた公的研究費計82課題約15億円については、返還を検討するとした。

科学研究行動規範委員会は外部からの指摘などを受け13年9月、調査を開始。同年12月には中間報告を実施し、51本の論文に科学的に不適切な画像があると認定した。14年8月には第1次調査報告を実施し、加藤氏・栁澤氏・北川氏・武山氏が不正行為を行ったことと、51本中5本に不正行為があったことを認定していた。

 

学位取り消しも

加藤氏の研究室の論文不正問題に関連して、徳島大学は12月26日に記者会見を開き、東大の最終報告で不正行為が認定された北川氏について、博士論文の画像に捏造があったため博士(医学)の学位を取り消すと発表した。処分は22日付。

徳島大によると、北川氏は学位取得に際して徳島大に提出した論文が、東大で問題になった論文データの不正に関連したものだった。当該論文が14年3月に撤回されたことと、東大が14年8月に実施した第1次調査報告で当該論文に不正行為があると認められたことを受け、今回の決定に至ったという。

この記事は、2015年1月13日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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