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2017年8月24日

駒場図書館の冷房、止まったわけは

 厳しい暑さに見舞われた7月中旬、涼しい図書館で試験勉強でもしようと思ったら……あれ、涼しくない? それもそのはず、駒場図書館では7月10日(月)〜12日(水)の3日間、図書館の冷房が断続的に停止した。なぜ冷房は止められたのか。二酸化炭素排出量を削減し「サステイナブルキャンパス」を実現するために駒場図書館を含む駒場Ⅰキャンパスの電力使用を管理している、教養学部長補佐の佐藤守俊准教授に話を聞いた。

(取材・児玉祐基)

 

 佐藤准教授によると、冷房を断続的に止めた3日間のうち最も停止時間が長かったのは12日。最高気温が33.1度まで上昇する中、正午前から15時ごろまで断続的に、最大で連続50分間停止した。図書館内で最も暑くなった4階の室温は最高で29.8度に到達し、3階でも27.9度まで上昇したと佐藤准教授は明かす。13日以降は、例年試験期間の7月後半になってから開放する5号館の自習室を早めに開放するという対応が取られた。蔵書への悪影響はなかったという。

 

 駒場図書館公式ツイッターは7月12日、さらなる冷房停止措置の可能性に言及しその理由として「駒場Ⅰキャンパス全体の電力使用量が契約上限に迫る日が続いている」ことを挙げたが、これは具体的にはどういう意味なのか。

 

 駒場Ⅰキャンパスの電気料金は「基本料金」と「電力量料金」を足したもの。「電力量料金」は使用した電力量に応じて決まるものだが、今回問題になったのは「基本料金」の方だという。ある年度の基本料金は前年度の電力使用量が最大となった30分間の電力使用量を基に決まり、30分間あたりに使える電力の最大量の限度、つまり「契約上限」は、自動的に前年度の電力使用量が最大となった30分間の電力使用量と同量となる。もし30分あたりの電力使用量が契約上限を超えると、翌年度の基本料金が上がるほか、違約金を払う必要も生じるという。政府から交付される大学の運営費がここ10年で約1割減少するなど財政状況が厳しさを増す中、電力使用量を契約上限以下に抑えることは至上命題のようだ。

 

 しかし駒場図書館の冷房が停止されるのは毎年のことではない。なぜ今年、しかも学生が多く利用する図書館が節電の対象になったのか。その理由として佐藤准教授は、まず咋年度に比べ本年度の夏がかなり暑かったことを挙げる。1年のうち、駒場Ⅰキャンパスで電力を一番多く使うのは、暑く、しかも授業期間中である7月の前半だという。昨年度はその時期が比較的涼しく最大電力使用量が低く抑えられたため、本年度の契約上限が低くなった。しかし本年度は暑さが厳しかったため、契約上限を超える恐れが高まったのだ。確かに、昨年度と本年度の7月の東京の平均気温を比較してみると、昨年度25.4度に対し本年度27.3度と2度近く上昇している。

 

 加えて7月10日〜12日には会議や実験などが重なり電力使用量が増えることが見込まれていたという。そのため駒場Ⅰキャンパス全体の電力使用量の約7%を占める「大口の利用者」である駒場図書館の冷房を停止せざるを得なくなった、と佐藤准教授は話す。電力使用量が1日で最も多くなる12時〜15時に電力を多く使う研究を控えるよう、教員や研究室に要請するなど節電を呼び掛けていたが、図書館の冷房停止を回避することはできなかった。

 

 「既に電力使用量が最大になる時期は過ぎているので、今年はもう図書館の冷房を止めることはないでしょう」と佐藤准教授。来年度以降再び同様の措置を取らずに済むよう、今後も教員や研究室に節電を呼び掛けていくという。

 

 さらに冷房の温度を下げることで、仮に冷房を断続的に停止させても室温の上昇を抑えられるようにするという、新しい試みも行われている。駒場図書館の冷房はガスで稼働するため、温度を少し下げるために使われる電力量は家庭用の冷房に比べて小さい。また冷房はつけ続けるよりも断続的に停止させた方が電力使用量は少ないため、節電効果が期待されるという。7月24日、試験的に冷房の温度を2度下げ、15分間冷房を停止させたが室温の上昇はほとんど見られなかったという。

 

 「今後も学生が不利益を被ることのないよう努力したい」と佐藤准教授。しかし2011年度以降、駒場Ⅰキャンパスの電力使用量は年間約1%ずつ上昇している。節電に力を入れながらも学生の本分である勉学に支障が出ないよう、さらなる工夫が求められる。

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