イベント

2015年11月13日

「人間拡張の未来を感じる」東大生の、メディアアート。-第17回東京大学制作展-

わたし。どこからがわたしでどこからがわたしでないのでしょうか。
 
「わたしエクステンション」をテーマとするメディアアートの展覧会が、東京大学本郷キャンパスで開催されている。
せいさ
電子部品で着飾る女の子のポスターが印象的な「東京大学制作展」は、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の修士学生が中心となり企画運営をするメディアアートの展覧会だ。
筑波大学助教・メディアアーティストの落合陽一氏や、電子楽器の制作・演奏を手がけるサウンドデザイナーの中西宣人氏も過去に参加している。
第17回目となる今回のテーマは、「わたしエクステンション」。
この一風変わったテーマについて、公式HPではこのような説明がなされている。
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石器からiPhoneにいたるまで、古今東西の技術は、「わたし」を拡張してきました。
時代が進むにつれて、わたしにできることはどんどん広がっていきます。
今や、電話やネットのおかげで遠くの人にもわたしの声や思いは届き、
Googleマップによってわたしの土地勘は世界の隅々にまで及びます。
技術に媒介されることで、わたしや社会そのものがますます
便利に、自由に、広がっていくのです。
一方で、拡大とともにその境界は曖昧になっています。
「ネットの声」と紹介された「わたし」のつぶやき、
Amazonに薦められて買った「わたしの欲しいもの」、
「わたし」の代わりに会議に「出席」してくれるロボット…。
一体、どこまでを「わたし」と認めればよいのでしょうか。
「自分」という言葉があります。
自らを分けると書いて、自分。
第17回制作展では「わたしエクステンション」というテーマを通じて、
「自分」つまり、わたしと社会とそれらを拡張させていくさまざまな技術との境界について問うてみたいと思います。
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開催初日となる12日、会場の工学部2号館は普段のアカデミックな雰囲気とは一変して、個性豊かな作品と来場者らで賑わいを見せていた。

■「EyeSee(w)」

片山健

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
会場の一つである工学部2号館フォーラムに入ると、金属パイプが箱から生えたような、奇妙な作品が出迎えてくれる。「EyeSee(w)」というこの作品は、カメラという「眼」だけを持つロボットなのだという。パイプの先端には、こちらをじっと見つめてくる一つの「眼」があり、眼を覗きこんでいると、シャッター音とともに瞬きのような動きをする。
「カメラは人間の眼や視覚を圧倒的に拡張した技術です。スマートフォンや監視カメラなど、日常の中にその技術が溢れかえる現代において、私たちはそれが常に見開かれた機械の「眼」であり、他者の視覚の拡張であると認識できているのでしょうか?」

■「Sight」

和家尚希、鈴木良平、伏見遼平、宗像悠里

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

Sightは「目に見える光景を音に変換する」装置である。装着すると、目の前が何も見えなくなるのと同時に、カメラから入力した空間の広がりや目の前にあるモノが、音となって聞こえてくる。最初はわけがわからないが、あたりをゆっくりと見回すと、「ザーッ」「サーッ」という音が壁や柱などの空間構造に対応していることがわかる。

作者のひとり伏見遼平さんは「練習すれば、柱や障害物をよけて自由に歩けるようになったり、顔を見分けられるようにもなる」と語る。2階フォーラムでは試作品が展示されており、実際に装着してイルカやコウモリのような「音で見る」感覚世界をのぞき見ることができる。

◼︎「えくす手」

小川奈美

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
「人間の持つ物理的制約に合わせて、人間は機械をデザインし、創造してきましたが、機械の持つ物理的制約に合わせて人間がデザインされることもあり得ると思うんです。でもその極限に、人間の身体はどこまで必要で、そしてどこまで私は私でいられるのだろうか?」と作者の小川さんが問いかける「えくす手」。
怪しげな箱に両手を差し入れると、自分の手がうねうねと伸び縮みしたり、指が10本に増えたりと、まさに「わたしエクステンション」されてしまう。
「自分のようで自分でない」不気味で気持ち悪い手を操ることで、「自分の身体である」とはどのようなことなのか、改めて考えさせられる作品となっている。

■「終わりスナップ」

浅井一輝、金子和正、松原史奈

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2階展示室の奥、暗幕の垂れ下がった怪しいスペース。奥にはコンパクトミラーやネックレスなどのおしゃれ道具とディスプレイが置いてあり、まるで鏡台のよう。そんなガーリーな雰囲気の作品「終わりスナップ」では、様々な証明写真を撮影することができる。一体どんな証明写真が撮れるのかは、体験してのお楽しみだ。

■「生き-モノ」

中山桃歌

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一見するとただの黒い箱が5つ並んでいるだけだが、突如周りに反応して動き出す「生き-モノ」という作品。
動き方は前方の箱同士が一定の距離を保とうとする単純なものだが、いも虫が進んで行く様子にも見える。
 動きに意思を感じると物が突如生き物に見えてくるという不思議さ、物が生き物に拡張する瞬間に立ち会える作品である。

■「指紋のレコード」

池田昂平

IMG_1117 2
本作品は「自分の指紋がレコード盤に見えた」という作家自身の体験から始まり、来場者の指紋から「その人だけの音楽」を生成する。
レコードプレーヤーの針で指紋の溝をなぞっていくと、指紋の形状からリアルタイムで音が生成される。
一緒に来場した友人と互いの指紋レコードを聴き比べてみる事も一つの楽しみ方ではないだろうか。

■「ある声について」

伏見遼平、三輪桃子

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「ある声について」は「人と機械の境界」をテーマとした、人の声に反応する音声ガイドである。不思議な声による解説や質問に導かれ、4つの絵画作品を深く鑑賞することができる。
体験の最後に、機械であるはずの音声ガイドから発せられる問いには、誰しも言葉に詰まってしまうだろう。まずは体験してほしい。
※「ある声について」は2階展示室で毎日11:30-12:30, 14:00-15:00, 16:00-17:00のみ体験していただけます(日本語のみ、約5分、1人ずつ)。
また体験を解説したビデオは9階92B教室でご覧いただけます。体験をされる方は先にビデオを見ないことをお勧めします。
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この他にも、情報理工の学生による最先端の研究技術を用いた作品から芸大出身の学生によるアート作品まで、さまざまな「わたしエクステンション」が表現されている。
会場MAP(日本語)裏_提出用
芸術の秋、東京大学でメディア・アートを体験し、「自分」について改めて問い直してみてはいかがだろうか。
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第17回 東京大学制作展 「わたしエクステンション」
日時:11月12日(木)~ 16日(月)(11:00 – 19:00)
場所:東京大学本郷キャンパス工学部2号館 
主催:東京大学大学院 情報学環・学際情報学府
入場無料
 
会場:

〒113-8654 東京都文京区本郷 7-3-1

東京大学本郷キャンパス工学部2号館 (2階 展示室、フォーラム、9階92B)
 
アクセス:
東京メトロ南北線 東大前駅 徒歩7分
東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線 本郷三丁目駅 徒歩8分
東京メトロ千代田線 根津駅 徒歩8分
東京メトロ三田線 春日駅 徒歩8分
(文・構成 小川奈美)

2015.11.14 【タイトル訂正】”「人間拡張の未来を感じる」東大生の、メディアアート。”から、”「人間拡張の未来を感じる」東大生の、メディアアート。-第17回東京大学制作展-”へと変更しました。

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