COLUMN 2019年10月31日

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)東南アジア編④ 現地の歴史の光と影を巡る旅

【前回までのあらすじ】

 インターンシップを始めてすぐに、1年で最も忙しい時期の一つであるゴールデンウィークを迎えた。なんとか繁忙期を乗り切った私は、カンボジアに来て初めての旅行に出掛けた。

 世界遺産・アンコールワットで有名な街、シェムリアップに住み始めてから1カ月半。仕事や現地での生活に慣れるのに精いっぱいで、遺跡を見る暇は全くなかった。ゴールデンウィークの後に休みをもらい、アンコールワットを中心とする遺跡群の観光へ出掛けることにした。

 

密林に囲まれるアンコールワット。観光客でにぎわいを見せる

 

 市街地からアンコールワット周辺の遺跡までは三輪タクシー「トゥクトゥク」で約30分ほど。遺跡観光は、トゥクトゥクを半日貸し切って遺跡群を巡るのが一般的だ。アンコールワットで朝日を見るために、早朝5時にトゥクトゥクに乗って家を出発した。

 

 まだ薄暗い中駐車場に着き、運転手と別れて遺跡へ向かう。暗闇の中で目の前に壮大な遺跡が見えてきた時のワクワク感は、今回の滞在中で、忘れることのできない感動的な瞬間の一つだ。遺跡の前で、多くの観光客が日の出を待つ。徐々に空が明るくなり始める。夜が明けた瞬間、その幻想的な美しさに周囲から感嘆の声が漏れた。朝日を背にしたアンコールワットは壮大で美しかった。

 

 アンコールワットは、クメール王朝全盛期の12世紀に30年以上かけて築かれたヒンズー教寺院。壁面に彫られた美しいレリーフの数々からは、当時栄華を誇った王国の姿が浮かび上がる。観光客が入ることのできる最上層の回廊からは密林に覆われた周囲の景色が広がり、改めて「異国の地にいる」という事実を実感した。その後も半日をかけて遺跡を巡り、華やかなクメール王朝の歴史に思いをはせた。

 

 遺跡観光をした日から「せっかく海外にいるのだから、なるべくいろいろな場所へ出掛けよう」と思い立ち、月に1回は2日ほどの休みを取り、遠出するようになった。中でも思い出深いのは、初めて海外の夜行バスに乗って向かった首都・プノンペンだ。都市化が進むプノンペンでは、バイクや車で常に道が混雑、各地で新しいビルの建設が進んでいた。国内でもあまり治安が良くないと言われており、夜は一切出歩かないなど細心の注意を払って旅行をした。穏やかなシェムリアップと対照的な騒がしさに包まれた街の雰囲気に、同じ国内でここまで違うのかと衝撃を受けた。

 

プノンペンへ向かう際に利用した夜行バス。シェムリアップからは約6時間、往復で3000円程度だった

 

 プノンペン滞在中最も印象に残ったのは市内の「トゥール・スレン博物館」。ポル・ポト政権下に収容所となっており、多くの無罪の人々が虐殺された場所だ。当時の拷問の痕跡がそのまま残っており、殺された人々の写真の数々が展示されている。博物館内の雰囲気の重さから、そう遠くない過去に起きた悲惨な出来事のむごさを実感した。このアンコールワットとプノンペンの観光から、カンボジアの歴史の光と闇を感じることとなった。


この記事は2019年10月15日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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