INTERVIEW / FEATURE 2016年5月18日

人はどのように選ばれる?…行動心理学アイエンガー教授から就活生へのアドバイス

ニューヨークコロンビア大学ビジネススクールにて教鞭をとるシーナ・アイエンガー教授。人がどのような要因に影響されながら意思決定をくだすか、という選択にかかわる専門家であり『選択の科学』(The Art of Choosing)の著者として知られる同氏が3月に来日した。就職活動が本格化する時期柄、仕事を選ぶ・人を選ぶことについて質問をしたところ、アイエンガー教授からは面接を通じて採用をする企業側と面接を受ける学生側の双方に対するアドバイスを得ることができた。さらに最後にはアイエンガー氏がどのようにして“選ばれる”人となってきたか、自身の過去を振り返りながら語ってもらった。

(English: How to succeed in job-hunting: career advice from Professor Sheena Iyengar)

 

 

シーナ3

 

――アイエンガー教授の研究は、選択肢が豊富にありすぎると逆に決断をしにくくなり、また決断のクオリティと決断した後の満足度を下げることを示していますが、このことは学生が就職活動時に企業を選ぶときにも、同じといえますか。

 

おもしろい質問ですね。この問いに答えるには2つの研究が参考になります。

 

研究1:多くの面接を受けるほど、多くの内定をもらえる可能性は高まるが、多くの内定をもらえばもらうほど、承諾した内定先への満足度は下がる。

 

研究2:就活氷河期のような時代においては、給料が上がるのに時間がかかるにもかかわらずそのような時代に内定をもらえたと言うことで、学生の幸福度は上がる。

 

たくさんの会社にエントリーすればするほど、内定もたくさんもらえるでしょう。しかし、たくさんの内定を手にすればするほど、皮肉なことに内定承諾先に“より満足しなく”なってしまうのです。これが1つ目の研究結果からわかることです。もう1つの研究からは、就活氷河期のようなときに、経済がよくなって給料が上がるまでに時間がかかるにもかかわらず、そのような時代に内定をもらえたことで学生が幸福だと感じていることがわかります。

 

だから私から学生たちに対して「たくさんの内定を求めるのではなく、選択肢をしっかりと見極めるべき」と助言したいと思います。多くの学生は、選択をランダムにしてしまい、なぜ自分はその選択をしているのかについてしっかりと振り返っていません。だから、例えば200社などという沢山の数にアプライするにせよ、なぜその選択肢に意味があるのかを考え、類型化することを勧めます。こうして選択に意味づけをおこなうことで、内定を得た後も、その内定がどれほど大切で意味のあることなのかという価値を認識することができます。

 

――つまりアドバイスは、なんとなく選考を受ける前に

 

なぜそこに行きたいかの理由をもっとよく考えなければならないということです。

 

P1080116

 

――わかりました、では2つ目の質問です。アイエンガー教授が研究の対象にしているのは、TEDでご紹介されていた『ジャム』を選ぶ実験のように“モノ”であるように思いますが、研究から示されるルールは“人”を選ぶときにも当てはまりますか?

 

採用において人を選ぶことですよね、応用できると考えます。例えばあなたが面接を一日中しなければならないとしましょう。朝9時から夕方の6時まで。資生堂、ユニクロ、もしくは大塚製薬でもいいでしょう。企業の採用担当者として30分ごとに1人ずつ面接をすることを想像してみてください。何が起きるでしょうか。

 

面接官は最初の二人と、ランチの前、そして最後に面接した人は覚えていられますが、このほか“途中に”面接した人は、変わったことをした人だけしか覚えていられません。だから面接にのぞむ学生側からすると、どうやって目立つかが大事になります。面接官からすると、みんな一緒に見えるわけなので。

 

面接官も注意しておかなければならないことがあります。それは自分の気分によるバイアスがかからないように、面接のメモを取り、すべての学生へ毎回同じ質問をすべきだということです。

 

――学生のみならず、企業で採用する人へのアドバイスまでもくださりありがとうございます。ちなみに、アイエンガー教授はどのようにして目立とうとされてきましたか?

 

まずわたしが盲目だったことで、覚えてもらえたことは多いと思います。みなさん見慣れていないようで、目立つことになりましたね。とはいえ、みなさんのアドバイスになるようにお答えすると、わたしは“他の人がやっていない”研究を、そして“みんなが面白いとおもう”研究テーマを選ぶことで差別化を図ってきたと思います。

 

もともと人が、何に突き動かされて生きているのか、『モチベーション』の領域に関心がありました。主にモチベーションの種類は5種類あるなかで、研究対象を選択する。このときにいかにレア、希少で面白いかということを思考判断の軸にしていましたね。まず1つ目に『報酬と懲罰』。アメとムチに関しては、既に多くの研究がされていました。次に2つ目、『挑戦を与える』ことについても、もうじゅうぶんに手垢がついていました。3つ目にいかに『好奇心を掻き立てる』かという観点から行われる研究については、そもそも方法論が立っていませんでした。4つ目の『夢やファンタジー』による動機づけについても同様でした。

 

最後に辿り着いたのが5つ目のテーマ。『選択』です。『選択』へフォーカスした研究は、心理学・経済学・社会学の分野では研究がされていましたが、『選択』というテーマ自体はよりひろく跨る学際的なトピックであり、十分に説明しつくされているとはいえない状況でした。

 

――みんな気になりそうですね、専門家に限らず。だってわたしも毎日何かを選択して生きているのですから。

 

ええ、そうですね。わたしが介在することで何か新しい方法で、価値を生むことができると確信したんです。わたしはいつも思います。『選択について研究する』ことを選択したことが、私の人生で最高の選択だったと。

 

シーナアイエンガー1

 

(取材・文 北原梨津子 写真はAnnie Chang撮影、2016年3月に開催されたアジア女子大学ファンドレイジングイベントにて)

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