COLUMN 2017年3月3日

バラエティー番組の中の東大生 現役学生の視点から

 最近、東大生を特集するバラエティー番組を目にすることが多い。芸能人と東大生がスタジオでワイワイとトークをしたり、大学付近で東大生に取材した映像を流したりして笑いを取る番組だ。実際の番組の事前交渉や収録、編集はどのような様子なのか。テレビ番組はどのような東大生像を描こうとしているのか。バラエティー番組に出演したことのある東大生の視点から分析する。

(取材・加藤憲弥)

 

素人の扱いに腐心

 2016年に放送された東大生を扱うバラエティー番組には『さんまの東大方程式』(フジテレビ系)、『好きか嫌いか言う時間』(TBS系)などがある。いずれも、赤門前などで収録した学生へのインタビューを流し、スタジオで芸能人と東大生数十人がトークする形式を取っている。

 

 バラエティー番組に出演する理由やきっかけは人によって異なる。たまたま大学周辺でインタビューされたことがきっかけとなる場合もある一方で、「東大生の知り合いが増えたら良いな」と考えて『好きか嫌いか言う時間』などに出演した女子学生Aさん(文Ⅲ・2年)のような例もある。フリーランスプロデューサーの肩書きを持つ永田諒さん(理Ⅱ・2年)は「自己ブランディングの一環として」出演したという。

 

 番組ではどのような収録や編集がなされているのだろうか。『さんまの東大方程式』に出演した男子学生Bさん(理・3年)は「放映されない部分でも芸能人側から純粋な好奇の目が向けられていると感じました」と話す。「オンエアでは分かりやすいところをコンパクトにまとめた感じ」

 

 民放のバラエティー番組数本に出演したことのある男子学生Cさん(文Ⅰ・1年)は「かなり編集する番組とほとんど編集しない番組がありました」と言う。大胆な編集の例として、『さんまの東大方程式』などに出演した杉山大樹さん(経・4年)は「けんかしているような切り取り方で編集されることもありました」と話す。

 

 一方、同じく『さんまの東大方程式』に出演した十川斗希男さん(文・4年)は「思ったよりも東大生をかばう方向に編集している」と感じたという。「収録のときにこれはまずいと思うような発言はもっとたくさんあったが、素人ということでセーブしている部分はあるのでは」。また「SNSが登場したことで、取材の裏側の部分が明るみに出る危険が相当意識されていると思った。というのも、発言の強要や歪曲(わいきょく)がないように気を遣ったりしていると感じたから」。制作側も、素人である東大生を相手に苦労しながら取材を進めていることがうかがえる。

 

「普通と違う」を強調

 番組では東大生はどのように位置付けられているのか。東大生を特集する番組に出演したことのある学生に話を聞くと「『頭の良さ』を分かりやすく表現するように求められた」という声が挙がった。永田さんは『〇〇に10万円あげたらこんな使い方されちゃいました!』(TBS系)に出演したときに「プロジェクションマッピングを作ったのだが、設計する際に数式を用いることを求められた」という。数式と用いたと紹介することで高度な知識を駆使したと印象付ける狙いがあるようだ。

 

 Bさんは「個性の在り方について、『勉強ができる』ことや『頭がいい』ことと結びつける方向に誘導されたように感じます」と振り返る。例えば「趣味が〇〇だったおかげで勉強ができるようになった」という具合だ。東大関係者でない一般の人たちは「東大生は勉強ができる」というイメージを抱いており、番組制作者はその具体例を示したり理由付けをしたりすることで視聴者の関心を引いていると考えられる。

 

 バラエティー番組の制作側が描こうとする東大生像について、挙げられた別の意見は「変わり者」だ。Cさんは「事前交渉段階では東大生の変わったところなどが中心的に聞かれた」という。実際の放送でも「変わり者扱いが多いです」。

 

 杉山さんは、番組制作側は「変なところやダメなところを特に知りたいようです」といい「頭はいいけどいろいろおかしいんだ、ということで安心したり留飲を下げたりしたいのかな」と理由を考察する。勉強ができる反面、コミュニケーションがうまく取れないなど「社会に適合する能力が低い」(Aさん)ことを強調する番組が多いようだ。

 

 Aさんは番組の構成について「東大生はすごい、という印象から、けれども彼女がいないなど冴えない印象の部分にフォーカスしていくという上げ落とし的手法が多い」と説明。受験においては東大のような有名な大学に進学できる人は少ないため「勉強だけできてもダメだという結論が求められているから」だと理由を推測した。

 

 Bさんも東大生を特集する番組について「東大生は勉強ができるだけのイメージ、しかし勉強以外でも普通の人とは違った個性がある」という構成だと指摘する。「それが『個性的で面白い』『常識外れ』というように良くも悪くもコンテンツとして扱われている印象です」

 

 テレビでこのような東大生像が描かれることで、東大関係者以外の人々にどんな影響があると考えられるか。Cさんは「東大生全員が変人であるかのような印象を与えてしまう」としながらも「東大生を親しみやすく感じる機会になり得るのではないか」と続ける。「バラエティー番組では、東大生の一般常識からやや離れた点、あるいは知識があるからこその異なった世の中の見方が注目されていると思います」

 

 良くも悪くもコンテンツとして利用される東大生。今後のテレビでの描かれ方に注目だ。

 

 


この記事は、2017年2月14日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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