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2025年10月29日

東大生協書籍部売り上げランキング(24年8月〜25年7月) 学術的な実用書やノーベル文学賞作家が人気に

 

 東大生協駒場書籍部と本郷書籍部の提供による2024年8月~2025年7月の1年間の書籍売上を、ランキング形式でジャンル別に掲載する。駒場生、本郷生が読む本の傾向には違いが見られた。気になった本があればぜひ手に取って読んでみてほしい。(書名・著者名は両書籍部提供)(構成・吉田直記)

 

 

【総合】

 駒場、本郷ともに『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社)が1位に。24年初版の本書はパラグラフ・ライティングなど実用的な論文執筆の技法が書かれており、論文の書き方を体系的に学びたい学部生のニーズを満たしてくれる。昨年度も人気だった幻想小説『百年の孤独』(新潮社)は本年度も人気を維持した。著者のガブリエル・ガルシア=マルケスはノーベル文学賞を受賞。1967年にスペイン語で初版された本書は、世代を超えた名著として現代の東大生にも人気の作品となっている。本郷でランクインした『「東大卒」の研究』(筑摩書房)は東大卒業生のデータを分析した新書であり、本郷生の興味を引いた。駒場生の人気を集めた『すべての、白いものたちの』(河出書房新社)は朝鮮半島とホロコースト後のワルシャワを舞台にした小説で、幼くして亡くなった姉をめぐる詩的な文章で構成される。著者のハン・ガンは2024年にアジア人女性として初のノーベル文学賞を受賞している。全体として、学術的な実用書やノーベル文学賞受賞者の作品が東大生に好まれる結果になった。

 

【文庫】

 『思考の整理学』(筑摩書房)は昨年度も駒場、本郷ともにランクインした人気の本だ。アイデアを生み出して発想を広げていく思考法が分かりやすく書かれてあり、本年度も支持を集めた。同じく昨年度から人気を維持した『暇と退屈の倫理学』(新潮社)は國分功一郎教授(東大大学院総合文化研究科)によって書かれた本であり、暇や退屈とうまく付き合うための哲学書となっている。國分教授の著作では、意思と責任について考察した『中動態の世界』(新潮社)も人気を集め、同一著者の2冊の文庫本が駒場と本郷でランクインした結果となった。本郷では独ソ戦を舞台にした小説『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)もよく読まれており、世界情勢の影響がうかがえる。

 

【新書】

 他者理解をテーマに多元的な思考の実践を説く『論理的思考とは何か』(岩波書店)や、歴史学の史料分析手法を紹介した『歴史学はこう考える』(筑摩書房)が駒場、本郷で上位にランクイン。また、受験を終えたばかりの駒場生には『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』(光文社)が人気を集めた。東大の女子比率は学部生で約2割。本書は地方で勉強する女子高校生の社会的背景を詳しく解説する。米国での第2次トランプ政権の誕生やイスラエルのパレスチナ侵攻といった昨今の国際情勢を受けて、『アメリカ革命』(中央公論新社)や『ユダヤ人の歴史』(中央公論新社)も駒場でランクイン。一方で、社会人や研究者といった卒業後の進路を見据える本郷生には、日本経済を解説した『はじめての日本国債』(集英社)や研究テーマの立て方について書いた『リサーチ・クエスチョンとは何か?』(筑摩書房)が人気だった。

 

【文芸・一般】

 昨年も人気だった『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)は今年度も駒場、本郷ともにランクイン。自身の興味に忠実に生きる主人公の成瀬あかりが織りなす青春小説は東大生の心をつかみ続けている。また、『東大を選ぶ 2025』(東京大学出版会)も駒場、本郷ともにランクインした。本書は東京大学新聞社の現役編集部員が中心となり毎年出版しているシリーズ本。大学受験のみならず進学選択や就職・大学院進学についての情報も網羅する。駒場と本郷ともに広く支持されたのは編集部員として嬉しい結果だ。他にも東大関連の書籍として『東京大学本郷キャンパス』(東京大学出版会)が本郷1位に。貴重な写真や史料をもとに変革し続ける東大本郷キャンパスの歴史を今に伝える。

 

【人文】

 駒場では昨年に引き続き『検証ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波書店)がランクイン。世界的な右傾化の流れの中で本書は当時のナチス政策やその手法を読者に分かりやすく提示している。本郷では情報ネットワークの歴史を通して人類史を辿る『NEXUS情報の人類史』(河出書房新社)が人気に。本書はAIの進化と現代社会における民主主義の危機を鋭く洞察している。また、米国や欧州の現状を多角的な視点で考察した『西洋の敗北日本と世界に何が起きるのか』(文藝春秋)も本郷生によく読まれた。かつては理想視された西洋社会が現在直面している問題を学べる。総じて、インターネットやSNSの言説ではなく書籍から知識を得ようとする姿がうかがえた。

 

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