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2021年10月12日

これからの学内生活、制限はどうなる? 東大本部、サークルに聞く現状

 

 東大ではワクチンの学内接種が進み、10月4日には活動制限指針が制限の最も緩いレベルAに引き下げられた。コロナ禍での活動制限の在り方が変化しつつあるが、大学側は今後の活動制限についてどのように考えているのか。そして学生は制限の中どのように学生生活を送ってきて、今何を課題と感じているのか。新型コロナウイルス対策タスクフォース座長を務める大久保達也理事・副学長(総務、教育、施設、情報担当)と地方で農業・地方創生活動を対面で行ってきた東大むら塾に話を聞いた。(取材・中野快紀、池見嘉納)

 

大学本部 制限緩和にはもう少しエビデンス必要

 

 ワクチン接種を含めた新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況の変化と、それに伴う大学の活動制限緩和について、東大の新型コロナウイルス対策タスクフォース座長を務める大久保理事・副学長は「ワクチン接種が拡大した後の制限緩和を進めるに当たっては、もう少し判断のエビデンスが欲しい」と述べ、慎重な姿勢を示す。一方4日からは学内の活動制限指針をレベルBからレベルAへと変更したが、レベルAは制限が全くないレベルSの次、つまり最も制限の緩いレベルとなっている。さらなる制限緩和を行う場合には指針の再設定が必要となるが、この点については「見直す可能性もある」とした。

 

 今後見直しが考えられる例として大久保理事・副学長が挙げたのはキャンパスへの入構について。現状、本郷キャンパスでは東大病院の受診などの例外を除いて学外者の入構が制限されているが「東大の社会的役割を考えると、個人的には現状の制限を続けるべきではないと考えている」とした。また学生の海外への渡航については、これまでタスクフォースで可否の判断を行ってきたが、今年9月からは部局単位で判断を行えるようになった。

 

 3日までのレベルBや4日からのレベルAの下では、学内での課外活動や図書館の使用などの活動については制限の下で許可されるが、授業については依然オンラインが中心のままだ。大久保理事・副学長は「学生の交流を深める機会は授業だけではない。特に現在の2年生は入学時から授業を含むさまざまな活動がオンラインであったことから、後期課程の進学先で、学生同士や、学生と教員とのネットワークが構築できるよう、各部局にお願いしている」と話す。同時に対面とオンライン双方での出席を認めるハイブリッド型の授業の場合、学生がオンラインに流れる傾向や、授業を行うにはオンラインの方が有効と考えている教員がいる可能性もあることを指摘。「授業の在り方について学生の声を取り入れつつ、現場レベルの対話を進めるよう求めていく」とした。

 

 後期課程の進学先が内定した学生はAセメスターから進学先の授業を受けることとなるが、大久保理事・副学長が所属する工学部化学システム工学科では内定者向けの学科・研究室見学会を2日に対面で開催した。この他にも屋外スペースや大教室の活用など、感染防止を考慮した学生の居場所作りを進めているという。「大学の中にいる方が安心・安全で快適だというキャンパスを目指している」

 

 大久保理事・副学長が座長を務める新型コロナウイルス対策タスクフォースは学内における感染防止対策の方針決定や感染者発生時の対応などを担当しているが、現在の東大の新型コロナ対策に不満を持つ学生の一部から批判の対象となっている。このことについて大久保理事・副学長は「活動制限レベルなど、全学的な方針についての議論はタスクフォースが担うが、タスクフォースの役割について誤解されている部分があるのではないか」と話す。例えば五月祭の5月開催取りやめについても、タスクフォースの議論を踏まえて大学執行部が判断したもので、こうした実態と認識の食い違いについては「こちら側の努力不足の点もあり、我々が何をしているか、もっと丁寧に説明をする必要がある」とした。

 

 一方、タスクフォースの議論に学生を交えることについては「緊急対応の際には学生の意見を待たずに判断が必要なことがある」「タスクフォースでは個人情報を扱うこともあり、そういった責任の生じる場に学生を巻き込むわけにはいかない」と否定的な見解を示す。「学生からさまざまな意見があることは承知しており、教育や施設担当の理事・副学長としても対応している。またタスクフォースには学生支援担当の職員も参加することから、意見がある場合には所属する部局の学生支援担当窓口に伝えてほしい」と話した。

 

大久保達也(おおくぼ・たつや)理事・副学長(総務、教育、施設、情報担当) 88年東大大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。工学系研究科助教授(当時)などを経て、06年より同教授。17年より工学系研究科研究科長・工学部長を務め、20年より現職。

 

東大むら塾 曖昧な活動基準コスト面に不安

 

 農業と地方創生をテーマに千葉と福島で活動を行うサークル、東大むら塾は、独自のルールを設定し、地域への訪問を中心に制約をかけながら、対面での活動を実施している。東大むら塾は、サークルとしての特色である農業活動は新型コロナ流行前の状態に戻そうとしているが、それ以外の合宿などの対面活動は自粛。「農業は(現地に)行かないと何もできない。その点は他の活動と違う」と代表の井上太喜さん(農・3年)は語る。

 

 特に遠方への移動となる福島訪問は、9月からようやく新型コロナ流行前と遜色ない頻度で行えるようになったが、参加する際には事前のPCR検査と2回のワクチン接種が必須。現地の飲食店を利用しなかったりレンタカーを利用する際に人数制限を設けたりするなどの配慮も行った。

 

 感染症対策とサークル活動を両立する上で課題となるのは、PCR検査やレンタカーなどのコスト面。また、新型コロナ流行前よりも訪問の頻度や1回の訪問当たりの人数が減った中で、60人以上の新入生1人当たりに提供できる体験が少なくなっていることも悩みだ。東大の現在の新型コロナ対策方針については、頭ごなしに対面活動を禁止しなかったことは「ありがたい」という。一方活動基準が十分でないところがあり、遠方への移動や屋外での対面活動の注意点などサークルで判断せざるを得ない点があった。「学生の判断で対面活動を行っているので、感染者が出たらと思うと、責任が取れないと不安を感じることがあった」と井上さんは語る。

 

屋外活動の様子(写真は東大むら塾提供)

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