授業

2026年3月5日

第二外国語のいいところ① ~中国語・ロシア語・フランス語・スペイン語編~

記事サムネ
いろんな国の国旗が書いてある

 

 東大に進学すると、新たな外国語に触れる。前期課程では、中国語・韓国朝鮮語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・スペイン語・イタリア語の中から一つを選び、1年間必修で授業を受けることになる。どの言語を選んでも、その先に待っているのは新しい世界との出会いだ。もちろん、興味があれば初修外国語に加え第三外国語としてアラビア語・ラテン語・ベトナム語……世界中のたくさんの言語の授業を選択できる。後期課程や大学院へ進んでも、意欲があれば「上級」の授業が受けられるほか、大学の支援が受けられる留学プログラムも多数ある。東大に天井はない。今回は教養学部で初修外国語の授業を受け持つ教員に、各言語の魅力を寄稿してもらった。(構成・溝口慶)

 

中国語 同じ漢字から広がる世界

 

〜上有政策,下有对策〜

上に政策あれば下に対策あり

 

 中国語と日本語は微妙なおもしろい関係にあります。文法は全くと言っていいほど違うし、音声も全然違うのですが、同じ漢字という文字を使っています。日常的に大量に漢字を使っているのは世界中で中国語と日本語だけです。しかし、日本語は漢字以外の文字もたくさん使いますが、中国語は基本的に漢字のみです。また、日中間の漢字の字体には大小の違いがあり、同じ漢字でも意味が違うことがあります。その一方で、近代日本人が多くの新しい漢語を考案・流通させ文化交流が広く深まったため、現在の中国語の語彙には多くの和製漢語が含まれています。文脈依存性が高く、主語と目的語の語順が基本文型にあまり制約されない点も意外と似ています。

 

 東大では、まずピンインというローマ字を使った発音記号に基づいて発音を習得し、簡体字という中国大陸で標準的に使われている字体で学んでいきます。中級になったら、本場のようにピンインを外した漢字だけの文章を読みます。初級が終わった後も、是非積極的に中級以上の選択科目を履修して下さい。中級以降になったら、台湾や香港で使われている繁体字に触れる機会も出てくるでしょう。4学期の間まじめに学習すれば、中国語の書籍やWebページの内容も辞書を使って簡単に確認できるようになり、世界が一気に広がります。中国語は、声調というイントネーションのような音の高低が1字ずつ決まっていて、音楽的な言語とも言われるので、まず大事なのは、発音練習です。意味をイメージしながら暗記するくらい音読するとめきめきと上達します。発音練習を大声で行うことはストレス解消にもなります。4学期間学べば、簡単な日常会話はできるようになると思いますが、初級の時から特にリスニングの練習を意識しておくとよいと思います。最初はディクテーションがお勧めです。

 

 中国語は、母語話者数世界一で、日中交流も広くかつ深く進行中です。東大だけではなく様々な団体・組織から、中国の人達と交流する機会が提供されています。あなたが中国語ネイティブと中国語で意思を通わせることになる機会・場面はすぐ訪れるはずです。

(伊藤徳也・総合文化研究科教授)

 

履修者の声

 中国は日本の隣国で交流も盛んだったので、使える場面が多そうという理由で中国語を専願。字体は少し違いますが、我々が慣れ親しんだ漢字を使うということも決め手でした。クラスは落ち着いた感じの人が多く、ちょうど居心地が良かったです。負担は活用のある言語に比べて高くないと感じます。難しいのは発音ですが、ネイティブの先生にも指導を受けるので、何とかなりました。中国に行った際に、学んだ会話をすぐに現地で生かせるのが良いですね。

(文Ⅲ・2年)

 

ロシア語 あえて今、東大でロシア語を

 

Все счастливые семьи похожи друг на друга, каждая несчастливая семья несчастлива по-своему.

幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある。

 

 ここに引用したロシア語は、ロシアの文豪トルストイの代表作『アンナ・カレーニナ』冒頭の有名なフレーズです。なぜこれを引用したのかというと、何語であれ言語を学ぶことは「世界を広げる」ことへ収束するので、言語を習得するメリットの説明はどの言語も似通ったものになります。ゆえに、言語固有の特殊な事情は、むしろ「その言語を選ばない理由」の方にあるように思えるからです。

 

 少なくともロシア語には「現在進行形で他国に侵攻している国の言語」という明確に「選ばれない理由」があります。ウクライナ侵攻以降、ロシア国外のロシア語話者でロシア語を話さなくなった人は少なくありません。大学で第二外国語として選ぶかどうかというレベルでも、その影響は少なくありません。外国語学習の成果を最も手っ取り早く実感できるのは、その言語が話されている地域を旅行することですが、いうまでもなくロシアへの観光旅行は依然難しい状況にあります。大学で1年ほど学べば簡単な旅行会話は身に付くのに、その成果を実践する機会がないのは悲しいことです。

 

 ただ、これらのネガティブな要素は、裏返せば「ロシア語を学び、実践する場は大学しかない」ということでもあります。文系は必修科目、理系は選択科目としてロシア語ネイティブスピーカー教員による演習(週1コマ)があり、さらに週2コマのインテンシブ[高度]を履修し、ネイティブスピーカーによる授業を週3コマ受けることも可能です。また、アルメニアでの国際研修や、カザフスタン国立大学との交換留学など、ロシア国外の教育機関でロシア語を学ぶ機会も大学では提供されています。

 

 『アンナ・カレーニナ』には、「善は因果の連鎖の外にある」という言葉もあります。「理由」や「結果」を求めてなされる善は本当の善ではないということです。語学学習も、「なぜその言語を学ぶか」「その言語を学ぶことでどんなメリットがあるか」をじっくり考えたうえで言語を選択するのもよいですが、むしろ何があるかわからないで飛び込むことでしか見えてこない世界もあります。「大学でしかできないこと」に挑戦したい人は、ぜひロシア語を学んでみてください。

(浜田華練・総合文化研究科准教授)

 

履修者の声

 文字や響きが魅力的だったという安直な理由で選択。格やアスペクトなど、なじみの薄い文法概念に戸惑うこともありますが、その戸惑いこそがロシア語、ひいては外国語学習の醍醐味とも言えるでしょう。人数が少ないためか、選択者同士の絆は深く、強い同朋意識で結ばれています。一緒にロシア料理を食べに行ったり、ロシア語の映画やオペラを見に行ったりしたことも。メディアを通して触れる機会の多い西欧文化とは一味異なる世界が、ロシア語を学ぶ過程に広がっています。

(養・3年)

 

フランス語 憧れの「パリジャン」になるためのフランス語

 

Être parisien, ce n’est pas être né à Paris, c’est y renaître.

パリジャンであるとは、パリに生まれることではなく、パリで生まれ変わることだ。(サシャ・ギトリ)

 

 革命と人権宣言の国、フランスは、植民地拡大など多くの負の歴史ももっているので理想通りとはいきませんが、少なくとも啓蒙主義以来、多様な宗教や文化に対する寛容と歓待の精神を掲げてきました。19世紀~20世紀のパリはとりわけ、各国から芸術家や文学者が集う芸術の都でした。19世紀末、パリ北部の丘モンマルトルには「洗濯船」と呼ばれる集合アトリエ住宅が作られ、20世紀初頭にはイタリア出身のモディリアーニやスペイン出身のピカソらが移り住んで制作に励みました。

 

 1910年代には、今度はセーヌ左岸(南側)のモンパルナスが芸術の中心となり、モンマルトルから、また世界各国からアーティストが移り住みました。日本からは画家の藤田嗣治や佐伯祐三が訪れています。第1次世界大戦後の1920年代には永井荷風が、またフィッツジェラルドやヘミングウェイ、エズラ・パウンドなど、アメリカの作家・詩人たちがモンパルナスで交流しました。そこから新たな文化や芸術が生まれたのです。

 

 彼らがみな「パリジャン」「パリジェンヌ」になるのがパリであり、それを可能にするのがフランスに(幸いまだいまのところ)根づいている寛容と歓待の精神です。パリは東京23区の6分の1しかない小さな首都ですが、そこには様々な出自の人々が暮らしています。パリで一人のアジア人であることは少しも目立つことではありません。フランス語を学んで、世界から集まった人と共に「パリジェンヌ」「パリジャン」になってみませんか。

 

 もちろん、フランス語が話されているのはフランスだけではありません。海外県のカリブ海周辺、海外領土のオセアニア、旧植民地のアフリカ諸国、ヨーロッパではスイス、モナコ、ベルギー、北米ではカナダ、特にケベック州、等々、国連の公用語でもあります。

 

 フランス映画を見て、囁くような発音に惹かれた人もいるかもしれません。フランス語を学び始めれば、どうしてフランス語の音は美しいのかが分かります。そして、自分でも美しい発音で話すことができます。駒場キャンパスで、仕組みの理解と会話練習の両面から、フランス語を身につけていきましょう。

(郷原佳以・総合文化研究科教授)

 

履修者の声

 フランスの文化に興味があったので選択しました。クラスの雰囲気は明るいものの落ち着いていて、過ごしやすいです。シケタイ(試験対策委員の略)制度も充実していて、クラス運営に協力的な人が多い印象です。 活用が多く難しいと思われることもあるフランス語ですが、覚える活用の数がとても多いわけではありません。発音には英語にはないルールが存在し、慣れるまで時間がかかりました。街中でフランス語を読めるとうれしいです。

(理Ⅰ・2年) 

 

スペイン語 心地よいリズムで5億人とつながる

 

Ama tu ritmo y ritma tus acciones

きみのリズムに愛を きみの行ないにリズムを(ルベン・ダリーオ)

 

 ¡Buenos días! スペイン語の最初の授業でおそらく習うこのフレーズ、「おはよう」という意味で、「ブエノス・ディーアス」と読みます。ローマ字を読む要領の発音そのままで、スペインやラテンアメリカ諸国、米国など世界各地の5億人以上の母語話者に難なく理解してもらうことができるでしょう。スペイン語の母音は日本語と同じく五つで、発音の難しい子音もわずか。文字と音の対応も規則的で、日本語話者にとっては、習ったらすぐ口にして使いやすい。このことは、1年という限られた期間で学ぶ中では大きな魅力です。

 

 では文法はというと、そちらはなかなか厄介です。例えば動詞は、人称や時制に応じて78ものパターンに活用し、不規則活用するものもかなり多くあります。動詞を中心に文が構成されることは英語と共通していますが、それ以外には、名詞の性の概念、冠詞の使い方、語順などさまざまに異なる点があり、初学者は戸惑うことも多いでしょう(フランス語やイタリア語とは共通点がより多くあります)。コンスタントに一定の時間を割き、記憶と練習をくり返さなければ、新しい言語は身につかないものです。

 

 発音は易しいと最初に書きましたが、ネイティブスピーカーの言葉に耳を澄ませていると、やっぱり日本語の響きとはまったく違います。一番違うのは、リズムかもしれません。

 

 リズムは実はスペイン語の文法の核でもあると思います。スペイン語の動詞の活用や、名詞の性に応じた形容詞の形の変化は、文を成す語の響きが揃って心地よいものになるようにできているのです。そうして言葉を連れてきてくれる気持ちのいいリズムの流れを自分の体に沁みこませることができたら、もう上級者です。 初修スペイン語の授業では、文法や語彙をしっかりと身につけられるよう、頻繁に小テストを行なっています。大変だと思いますが、それをこなせば1年後にはニュースや文学作品を読んだり、日常的な会話をしたりが十分できるようになります。必修科目だけでは物足りない方には中級や上級の授業も用意していますし、全学交換留学(USTEP)の制度を使えばメキシコやチリ、スペインの大学への留学のチャンスもありますよ。

(棚瀬あずさ・総合文化研究科准教授)

 

履修者の声

 他の言語より簡単との噂や、母語人口4位と話者が多いため将来役立ちそうとの考えから履修。クラスは明るく社交的な人が多かったです。発音は簡単ですが文法は英語より難しいです。時制の数が多い上に、規則動詞が3種類あり、人称・単数か複数かにより異なる動詞活用形があります。動詞の活用の暗記には苦戦しました。毎回小テストを行う教員もいて大変ですが、その対策と課題さえやれば授業についていけます。スペイン料理が好きで本場で食べてみたいので、学べて良かったです。

(経・3年)

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit




TOPに戻る