東大の藤井輝夫総長は「本学のDEI推進について」と題したメッセージを5月13日、東大のウェブサイトに掲載した。一部の国々でDEI(多様性・公平性・包摂性)に逆行する動きがあるとし、東大が世界や日本社会のDEIを重視することや、東大のDEIを推進していく方針を改めて示した。さらに、東大が世界の大学のDEI推進の取り組みを支持するとした。総長がメッセージを東大のウェブサイト上に直接掲載するのは約1年ぶり。
藤井総長はDEI推進が現代世界の普遍的課題であることは変わらないとして、東大が「これまで以上に襟を正して、力強くDEIの推進を行う」と宣言。DEIが「基本的人権を尊重する固有の価値を宿した理念」であり、多様な関係者と協働して行う研究・学問やイノベーションの創造、東大の掲げる「学問の卓越性」にも重要だと述べた。メッセージ冒頭で総長は「現在、一部の国々ではDEI推進に対する逆風が強まっています」と述べたが、具体的な国名や政策への言及はなかった。藤井総長は、東大が「世界の大学におけるDEI推進の取り組みに支持を表明し、ともに歩んで」いくと述べてメッセージを締めくくった。
総長がメッセージを東大のウェブサイト上に直接掲載したのは、昨年6月に授業料値上げが決定されたかのような報道は「不正確」であるなどとコメントして以来(「年頭挨拶」を除く)。同形式でのメッセージの公開は大規模天災や訃報などの突発的な出来事の直後が多く、今回のように特定の出来事に言及しない形は異例。2022年の「東京大学 ダイバーシティ&インクルージョン宣言」制定、昨年の多様性包摂共創センター新設など、東大は近年DEI推進の取り組みを強化している。
東大からの留学者が最も多い米国(昨年5月1日時点)では、ドナルド・トランプ大統領の政権がDEIに関連する政策の取り止めを行っている。ハーバード大学などには、DEIプログラムの廃止を要求した。