STUDENT

2026年2月15日

東京大学IMOPROJECT 芋の魅力を伝える挑戦──学内外で広がる「さつまいも文化」

 

 東京大学駒場Ⅰキャンパスで活動する学生団体「IMOPROJECT」は、さつまいもを軸に農業体験やスイーツ開発に取り組んでいる。活動8年目を迎え、駒場祭や農家との協働、SNSでの発信を通じて学内外から注目を集める。同団体の発足の経緯や活動の魅力、今後の展望について、代表の木庭妙さんに話を聞いた。(取材・種子田空里)

 

発足の原点──なぜ芋に注目したのか

 

 IMOPROJECTは、当初「飢餓を救う可能性を秘めるイモ類の魅力を広めたい」という発想から生まれた。代表の木庭さん自身「変なサークルだな」と思いながら入会したものの、活動を通して徐々にイモ類独自の魅力にはまっていった。木庭さんは言う。

 

「日本では野菜としてのイメージが強いイモ類ですが、主食としての可能性も秘めています。これまで何度も飢餓を救ってきた存在なんです」

 

 サークルには現在174人が在籍。ライトな層からイモのコアな魅力に引かれた学生まで幅広く、単なる趣味や食文化の追求に留まらない独自のコミュニティーが形成されている。一言にイモ類といっても、サツマイモやジャガイモ、キャッサバなど多様な種類を扱っている。学期ごとに新しいメンバーが加わることで、イモ文化は世代を超えて受け継がれていく。

 

駒場Ⅰキャンパスの畑──日常に息づく農業体験

 

 駒場Ⅰキャンパスの裏門近くの空き地に作られた「駒畑」は、学生にとって身近で手軽な農業体験の場だ。授業やサークル活動の合間に、学生たちはスコップやくわを手に土に触れる。10メートル×3メートルほどの小さな畑だが、収穫の瞬間にはいつも大きな歓声が上がる。

 

「キャンパス内で農業をすると驚かれることもあります。でも、実際に収穫して食べてみると、育てる喜びを実感できます」

 

 畑では、イモの栽培は一筋縄ではいかない。駒畑では、キャッサバ(熱帯の地域で多く栽培されているイモの一種)の生育に挑戦したが肥大化がうまく進まなかった。収穫するまでその大きさも、そもそもできているかもわからない。肥料や土作りが原因で成長が止まっていたこともあり、東京農業大学の熱帯作物学研究室の院生に助言をもらいながら改善を重ねていく予定だ。

 

「実際に掘るまでわからないんです。土作りや肥料の調整が重要で、専門家に教わりながら改善していきたいです。こうした失敗も含めて学びになっています」

 

 駒畑では、イモの成長を見守ること自体が学生の日常の一部となっている。春の芽出し、夏の水やり、秋の収穫と季節の移ろいを体感しながら、農業と生活の距離が縮まっていく。

 

駒場Ⅰキャンパス内に広がる小さな畑『駒畑』。日常の中で手軽に農業体験ができる。(木庭さん提供)
駒場Ⅰキャンパス内に広がる小さな畑『駒畑』。日常の中で手軽に農業体験ができる。(木庭さん提供)

 

駒場祭のやきいも企画──工夫と挑戦

 

 駒場祭では、IMOPROJECTが開発した焼きいもスイーツが毎年注目を集める。元々は単なる焼きいもの販売だったが、今年度は焼きいもを揚げた「焼きいもフライ」やスイーツメニューを試作を重ね、来場者に提供した。

 

「外はカリカリ、中はホクホクにするために試行錯誤しました。2回も買いに来てくれるお客さんもいて、うれしかったですね」

 

 企画の魅力は、単なる販売ではなく「イモを楽しむ体験」にある。 IMOPROJECTでは、単なる栽培やスイーツ開発に留まらず、学生同士でイモ類の料理を楽しむく「喰らう会」という食事イベントも定期的に開かれている。テーマを毎回設定し、キャッサバ料理会や韓国料理会、ドイツ料理会など、さまざまな国のメニューに挑戦することもある。辛い料理編や和風料理編など、参加者が工夫しながら調理するスタイルは、初心者でも手軽に挑戦できるように工夫されている。

 

 おすすめの食べ方も多彩だ。基本のさつまいもご飯は、切って炊くだけの簡単レシピながらさつまいもを味わうことができる。また、サツマイモを使った野菜炒めは、カレーやコンソメで味付けすることで意外な相性を楽しめる。他にも、「カリーガー」と呼ばれるベトナム風カレーの中に取り入れるなど、おかずとして柔軟に活用できる。参加した学生たちは、味や食感の工夫を考えながら、イモの魅力を体験的に学んでいる。喰らう会では、収穫したイモをみんなで調理し、食べ比べを行ったり品種ごとの味の違いを議論したりすることもある。こうした活動を通じて、参加する学生自身が調理法や味の工夫を楽しみながら学んでいる。試作段階では、味見や見た目の調整を繰り返し、他のメンバーから意見をもらいながら改良を重ねる。こうしたプロセスが、学生同士のコミュニケーションや創意工夫の力を育む。

 

喰らう会での料理の数々。笑い声と香ばしい匂いが食卓を包む。(提供は木庭さん)
喰らう会での料理の数々。笑い声と香ばしい匂いが食卓を包む。(提供は木庭さん)

 

SNS戦略──「芋文化」の発信

 

 IMOPROJECTはInstagramをはじめとするSNSを積極的に活用し、活動の魅力を広く発信している。投稿内容は駒場Ⅰキャンパスでの栽培風景から、東京のさつまいもスイーツ巡り、さらには農家との交流の様子まで多岐にわたる。

 

「投稿ごとに、いもの美味しさや楽しさをどう伝えるかを意識しています。学芸大学駅近くの紫イモかき氷や、焼きいもブームに乗ったスイーツの情報は特に反応が良いです」

 

 投稿の反応からは、フォロワーの関心が見えてくる。スイーツやカフェ巡りの投稿は特に人気で、実際に食べた感想や写真を組み合わせることで、より多くの人にイモ文化の魅力を届ける工夫がされている。SNSは単なる宣伝手段ではなく、活動全体をつなぐコミュニケーションツールとして機能している。

 

農業活動の難しさと学び

 

 農業ならではの課題も少なくない。害虫や天候、収量の変動は常に頭を悩ませる問題だ。

 

「駒畑では近くのやぶから虫がやってきて、対処が大変です。無農薬で育てる農家さんは本当にすごいです。自分たちはカメムシ対策に薬を散布するなど、一つ一つの問題に試行錯誤しながら取り組んでいます」

 

 都市部に位置する東大では、継続的な農業体験の難しさもある。害獣による被害や、カメムシやハダニの対策も欠かせない。学生たちは本やインターネットで情報を調べ、チームで議論を重ねる。

 

「一人だったら心が折れていたかもしれないけど、仲間と話しながら作業する過程が楽しいです」

 

 困難を乗り越える過程で得られる学びも多い。作業を通じてチームで議論し、改善策を模索する経験は、単なる農業知識だけでなく、問題解決能力や協働力の向上にもつながる。土に触れることで得られる実感、作業の中で芽生える達成感、そして互いに意見を出し合う道のり。こうした経験が、学生にとってかけがえのない学びとなる。

 

メンバーの成長──個としての変化

 

 IMOPROJECTの活動は学内に留まらない。夏合宿では、サツマイモの産地として有名な鹿児島県鹿屋市を訪れた。合宿の2日目にはサツマイモの収穫体験を行い、ならいも焼酎の酒蔵見学など地域文化にも触れた。福島県楢葉町では、震災後の復興が進む地域で、加工や商品化によって価値を高めたサツマイモを用いたスイーツ開発プロジェクトに参加。地域農業の現状や課題を学び、農業・地域活性化に貢献できる経験を積むことができた。

 

「イモを使った商品がお客さんの手に渡っているのを見ると、開発に関わる色んな方たちの努力が形になる瞬間を実感できます」

 

 こうした学外での活動は、単なる農業体験ではなく、学生が地域とのつながりを意識する機会にもなっている。「イモは面白い。料理を作って食べるだけでなく、イモを取り巻く産業に積極的に関わる活動を行っていきたい」と木庭さん。活動を通じて、学生たちは視野を広げ、主体的に学ぶ力を養っている。

 

今後の展望──地域と大学をつなぐ芋文化

 

 木庭さんは、IMOPROJECTを通じて「イモ業界を盛り上げ、地域や大学の連携を強化したい」と話す。

 

「将来的には畑を増やし、千葉や茨城でも栽培活動を広げ、より多くの人にイモ類の魅力を伝えたいですね」

 

 単なる食・農業系サークルではなく、学内外でイモ文化を発信する存在として、IMOPROJECTは今後も成長を続ける。学生が楽しみながら農業や食文化に触れ、新しいコミュニティーを創り出す取り組みは、大学ならではの価値を体現している。畑からSNSまで、多角的にイモ文化を発信する活動は、今後も多くの学生や地域の関心を集め続けるだろう。

 

手に取れば、努力が形になった瞬間が伝わる――畑から食卓までの架け橋。(提供は木庭さん)
手に取れば、努力が形になった瞬間が伝わる──畑から食卓までの架け橋。(提供は木庭さん)

 

 

koushi-thumb-300xauto-242

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit
koushi-thumb-300xauto-242




TOPに戻る