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2022年6月22日

自治会ってどんな組織? 教養学部学生自治会・144 期正副自治会長に聞く

 

 6月1~9日は、教養学部学生自治会の第145期正副自治会長選挙の投票期間だった。選挙公報には「学生の参画を促せるような魅力的な自治会づくり」とあり、一般の学生を巻き込んで自治会を活性化させようという立候補者の考えがうかがえる。そもそも学生自治会とはどのような組織なのだろうか。第144期自治会長の金子健さん(養・3年、後期課程進学に伴い失職)、同副自治会長の長谷川恭平さん(理Ⅰ・2年、現・自治会長代理)に、学生自治に対する考え方や今期の自治会の活動の振り返りを聞いた。(取材・金井貴広)

 

【組織・沿革】交渉でつかんだ全学生の自治

 

 全ての前期教養課程生は、自治会員として学生自治会に所属する。会員は正副自治会長(任期半年)の選挙権を持っていて、正副自治会長、理事会、事務組織が自治会の運営に当たっている。各クラスからは2人ずつ自治委員も選出されていて、自治委員会は役員の選出や規則・予算案の審議などを行う。

 

自治会の組織図(『自治会便覧』を基に東京大学新聞社が作成)

 

 教養学部学生自治会が結成されたのは1950年。学費値上げや戦犯教授追放などを受け、東大でも「学問の自由を守ろうしていた」と長谷川さんは考える。68~69年のいわゆる「東大闘争」では、他学部の自治会(当時)と共に無期限ストライキを実施。69年に「東大確認書」を当局と結び、学生を含めた全構成員の自治が認められた。しかし2001年に大学の決定で駒場寮が廃寮されたのを機に、駒場での学生自治の担い手が減少。10年台に学生へのサービスを拡充したが、自治会内での議論の積極性は薄れ、学生の参加は形骸化していったという。

 

 

 一度は途絶えた学部交渉は復活したものの、コロナ禍で再び学生が自治に参画しづらい状況ができてしまったと2人は話す。国立大学の法人化や産学連携の推進の中で「大学が外部に忖度(そんたく)し、学生の権利がおびやかされることのないよう『大学自治』も守っていく必要がある」とも金子さんは問題提起する。

 

 

【取り組み】 助け合い、 まとまって学生生活を向上

 

 自治会には「相互扶助組織」と「学生の利益団体」の二つの性格があるという。役割はそれぞれ、学生が利用できるサービスの運営と、学部交渉などで学生の要望を学部に伝え実現させることだ。

 

サービス提供

 過去問閲覧や白衣・保護メガネの貸し出し、学生用ロッカーの運営、ビラや学生用掲示板の管理などを行っている。特に利用者が多い過去問閲覧は、定期試験の問題を自治会室が先着1部で買い取り、学生が閲覧できるようにするサービスのことだ。過去問はおよそ8割そろい、試験前は同じ時間帯に20人程度が自治会室に閲覧に来るという。

 

 過去問閲覧は、提供する人がいてこそ成り立つ制度だと長谷川さんは指摘する。自治会がサービスを提供する意義について「高校などと比べて個が意識される大学で、助け合って自らコミュニティーを守っていく」ことが挙げられると話した。

 

学部交渉

 学生へのアンケートや自治委員会での審議を基に要求項目を策定し、自治会として学部に要求を行う。現在は年1回行われており、学生と学部の代表が顔を合わせて行う本交渉が12月ごろに開かれる。

 

21年度学部交渉

 

 昨年12月の学部交渉で学生側が要求した項目は、学部が文書回答したものも含め八つ。「キャンパスプラザのエアコン不備について」と「90分の授業継続について」は、それぞれ「21年度中に全面的な設置を行う」「22年度はコロナが収束していないという理由で継続する。前期教養課程生の希望を踏まえ、今後も対応していきたい」という学部の発言があり、学生側も「ほぼ満額の回答を得られた」と評価した。

 

 「COVID-19にまつわる不利益について」では学生側が「20年度入学者は、入学時期の人間関係の構築への悪影響や不当な制限を受け続けてきた点で相対的に不利益を被ってきた」として、金銭的補償や、残りの在学期間の課外活動のサポートを要求。学部は「学費については大学本部に要求することしかできない。重要な問題だと認識しているが、20年度入学という理由だけで大学として特別にサポートをするというのは納得できない」と返答。学生側の代表を務めた金子さんは、交渉終了後「十分な議論はできたと思うが良い回答は得られなかった。学部の態度を記録として残せるという点で交渉の意味はあった」と話していた。

 

 自治会として学生の要望を学部に伝える意義について「まとまることで要望する力は強くなる」と長谷川さん。「『学生のn%が要望している』と言えば要望もしやすいし、学部も通さざるを得なくなる」と話す。昨年度の交渉でも、アンケートで要求する学生の数が多かった項目は実現されやすく「『世論』が追い風になった」と金子さんも 話す。

 

【144期の活動】「積極的に学生の声を拾おうとした」

 

5月開催の第144期自治委員会第2回会議(写真は教養学部学生自治会提供)

 

 第144期自治会執行部は、コロナ禍でキャンパスに行かなくなったことで学生が自治に参画しづらくなり、自治会の認知度が下がったという問題意識を持っている。1月の任期中から広報に力を入れるとともに、自治委員会を通して積極的に学生の声を拾うことを意識したという。「規則の文言の細かい改定を承認するなどの官僚的な議論を減らした」と金子さん。学生からいろいろな意見を出してもらえそうな『検討議案』を持ち出すことで議論を活発に行えるようにした。

 

 自治委員は今までロッカーの管理に関する仕事が中心だったが、本年度から新たに「ロッカー委員」も設けて分業することで、自治会執行部がクラスの大学に対する意見を吸い上げやすい環境を整えた。クラスから不満や要望をまとめたレポートの提出も求めたことで、学生の意見が自治委員会に反映されやすくなったと長谷川さんは話す。

 

 金子さんはコロナ禍が自治会の活動を見直すきっかけになったとも述べる。門の閉鎖といった学部による規制は、コロナ禍で確実に強まったとして「『理事会宣言』(昨年5月)を出すなど、立場の弱い学生を守るための利益団体として一段階強い姿勢で学部に臨むようにしている」という。長谷川さんも、オリ合宿(宿泊を伴うクラス単位のオリエンテーション)を知っている世代が学部から消えつつあることを問題視し、このような学生文化を「早く復活させないといけない」と話す。自治会は今年1月にオリエンテーション行事の最大化を求める声明を出している。学生文化の復活のため「私たちが働きかけ、支えていく必要があると考えている」と語った。

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