専門分野に応じて数多くの専攻や研究室に分かれる大学院。そこでの学び方・生活の仕方も人によってさまざまだ。東大からだけでなく他大学から進学する学生、学び直しを志す社会人など、大学院には多様な目的・ライフプランを持った人々が集まる。今回は理学系研究科と医学系研究科の大学院生に、進路を決めた経緯や日々の過ごし方、研究の進め方について話を聞いた。(記事中で取り上げた試験内容などは今後実施されるものと異なる場合があります)。(構成・岡拓杜、取材・石井誠子、岡拓杜)
理学系研究科 生物科学専攻
「好き」を追いかけて
学部時代は現在の専攻とは異なり、情報学や経営学を学んでいました。VR で生き物の体を表現する研究をしており、その過程で自分の興味が生き物それ自体に向かっていることに気付き、大学院で生物系に進むことを決めました。現在所属している研究室で外部研修生として卒論指導を受け、院試に関する情報は同じ研究室に所属していた同級生などから収集していました。
もともと別の分野を専攻していたため、現在は知識を入れる時期として、授業を多めに履修しています。生物学の他に、地球惑星科学など、興味をもった授業は取る姿勢で臨んでいます。現在、研究はそれほど忙しくはないため、授業の復習や課題に多くの時間を費やしています。研究室では自分の机が割り当てられるのが良いですね。場所の確保を考える必要がなく、自分の都合の良い時間帯にいつでも勉強できます。
研究テーマは未定ですが、始祖鳥の足の動きについて研究できないか模索しており、現在は文献を調べている最中です。ヒトや霊長類を中心に扱う研究室ですが、それ以外の脊椎動物や恐竜も好きだったので、自分が好きな生物について研究できる好機だと感じています。
現在就職活動中ですが、博士課程への進学も魅力的に感じています。研究が非常に面白く、博士課程で受給可能な奨学金も思いの外豊富です。進学も視野には入れつつ、今後の進路を見極めていきたいです。

医学系研究科 健康科学・看護学専攻
現場経験から臨床と研究をつなぐ
慶応義塾大学を卒業した後、看護師として5年ほど働いていました。老年看護を担当する中で、社会や家族の支援不足、情報格差など、高齢者を取り巻く問題に直面することがありました。学部で学んだようには十分にサポートしきれない状況を実感して、研究の成果を臨床現場にどのように還元し、社会実装するべきかに興味を抱き、大学院で学び直すことにしました。
学費を抑えられる国公立大学の中で、研究機関として一流である東大大学院を選びました。大学院受験を決めたのは出願の1年半前で、看護師として働きつつ、夜勤明けの休みを活用しながら計画的に勉強を進めました。東大関係の知り合いがいなかったので、希望する研究室の教員に直接相談することで情報収集を行いました。専門の筆記試験については、受験する前年まで中断されていたため、研究室のウェブサイトや論文を調べて対策しました。
現在は高齢者の排せつケア、特に尿道カテーテルの研究をしています。週1回の指導教員とのミーティングで、研究計画を細かく管理しているので、学部時代と違って必然的に研究スピードが速まっています。先生方や先輩方のサポートが手厚いので学びやすい環境です。看護師として働いていたからこそ、課題を解決することの難しさも分かりますし、研究テーマも現場での経験から出てくるものも多くあります。将来は開発途上国の医療環境の向上にもつながるような取り組みをしていきたいです。
